103 1594年3月24日 在日米軍帰還計画
天才物理学者、A.ホーキング博士が登場。日本の時空転移の秘密が明らかになるか?
Theai テイア
1594年の3月、転移から12年と4ヶ月が過ぎでいる。西暦は2038年になっている。
不思議な話であるが16世紀は大航海時代である。そこに現代日本が転移して来たら、当然スペイン、ポルトガル、イギリス、オランダなどの帆船など太刀打ち出来ない。
日本の造船業の世界シェアは中国や韓国に追い越されたが、技術力においては世界のトップである。
さらには日本のゼネコンならスエズ運河など造作も無い。パナマ運河は現代日本の技術でも些か大変であるし16世紀には必要性が乏しく運用も困難である。
転移により輸出入の途絶えた現代日本は戦国日本など相手にせず、世界に進出すれば簡単に地球を支配出来る。
だが日本は、それをしなかった。
1番目の原因は歴史改変の危険性である。444年の未来の技術の一部でも過去世界に流れると歴史が大きく変わる。
2番目は疫病の蔓延である。スペインのピサロが僅かな兵士でインカ帝国を滅ぼしたとされるが梅毒が先兵となっていた。転移が疫病や性病をもたらしたなど世間体が悪い。
3番目は、実はこれが1番の原因であるが、「面倒くさい」であった。世界征服など20世紀の独裁者共が企んで失敗した事をやる必要はない。これが日本人の総意だったようだ。
ただし、南方資源はなんとしても欲しい。石油は必要だが、それ以上に珈琲とカカオ豆は現代人の必需品である。それは在日米軍にとっても絶対に譲れない話であった。それとポップコーンとナッツ類と香辛料、現代でも政府開発援助と称して強引に換金作物を作らせているのは先進諸国のエゴであり、飢餓が無くならない最大の理由である。
想像して欲しい。クリープのない珈琲では無く、珈琲豆の無い珈琲。カレー粉の無いカレー、カカオの無いチョコレート、胡椒の無いラーメン、ポップコーンの無い映画鑑賞、バナナの無いパフェ、ピーナッツの無い柿の種、やはり南方進出は必要だった。
1594年の3月(西暦2038年)
摂政:佳志子内親王44歳 徳川家仁 73歳 徳川家康51歳 枠田麻由子50歳 松平定信39歳
現代日本 、全席個室 料亭 「瓢喜」赤坂店
(蟹ずくし & 舟盛り大漁) の料理がテーブル狭しと並んでいる。毛ガニ、花咲ガニ、タラバガニ、ズワイガニ、さらには鮑、馬糞雲丹、海老などの刺身、陶板焼きは和牛ステーキと豪華である。
佳志子:「家康殿、領国に帰らなくて良いのですか。」
徳川家康:「あちらは退屈である。」
枠田麻由子:「名護屋城の将兵は散り散りになった様です。」
松平定信:「5インチ砲に誘導ミサイルまで使われました。」
徳川家仁:「誘導ミサイルは協約違反にて国会で取り上げられそうです。」
佳志子:「どの政党じゃ。」
徳川家仁:「山本山太郎の、例話新鮮組です。」
佳志子:「面倒臭い政党ですね。なんでも嚙みついてきます。」
松平定信:「山本山はオスマン・トルコ征服論を掲げて世論支持率を伸ばしています。」
佳志子:「スエズ運河開通とスペイン、ポルトガル、イギリス、オランダの直接通商、さらには世界最大のガワール油田の確保ですね。」
枠田麻由子:「誠に名案に思われますが、摂政様はどうお考えですか。在日米軍は(児戯にも等しい)と言ってますよ。」
佳志子:「在日米軍の在日米軍最高司令官:リッキー・ラップ中将に副司令官:ジョージ・ラウル4世、血の気の多い人達ですね。」
佳志子は明言を避けた。何故なら皇室だからである。重要な事は「好きに致せ。」としか言わない。
松平定信:「いずれにしても海外への技術流出は予想外の結果となります。今回の朝鮮出兵でも影響が出始めています。」
枠田麻由子:「松平さんの言っていた遺伝子総量理論ですか。朝鮮半島由来者の老衰死・琥珀瞳現象は徐々に増えているようですね。」
松平定信:「現在進行中の朝鮮半島での人口は去年々末の370万人から現時点では250万人になっております。これが100万人程度になったら一気に加速します。」
天才:松平定信の目がキラリと光った。(やはり私の計算に間違いはない。今度の桜花賞は戴きだな。)
計算というより野生の勘と言った方が良いかもしれない。
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最高司令官:リッキー・ラップ中将に副司令官:「暇だな~~、戦争にならないかな??」
副司令官:ジョージ・ラウル4世:「それより私は故国へ帰りたくてなりません。」
リッキー・ラップ中将:「帰ってもインディアンとバッファローしかいないぞ。」
ジョージ・ラウル4世:「そうでは無くて、21世紀の地球に帰りたいのです。」
リッキー・ラップ中将:「それは私も同じだが、諦めた方が良いのではないか。」
ジョージ・ラウル4世:「いや、方法は有るはずです。そういえばA・ホーキングなる者が方法が有ると申していたな。何が何だかチンプンカンプンだったが。」
リッキー・ラップ中将:「それは何者か?」
ジョージ・ラウル4世:「珈琲の給仕係です。何でも珈琲の泡を見ていて思いついたそうです。」
リッキー・ラップ中将:「その者を呼べ。ついでに珈琲を入れる準備もいたせ。」
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A・ホーキングは喋りだしたら止まらない。先ずは宇宙創世から始まるから先が思いやられる。
A・ホーキング:「この様に静かな水面に小石が投げられたのがビッグバンです。小石の波紋が物質です。うねりはダークマター、白波が顕在物質となります。波の上下運動が時間振幅です。これが波紋宇宙論です。」
リッキー・ラップ中将:「そうなのか。珈琲は美味いな。」
A・ホーキング:「ありがとう御座います。時間振幅で白波の泡が吹き飛びましたのがタイムスリップです。」
A・ホーキングはホイップクリームをフッと息で吹き飛ばして説明した。なんとなく、そのパンケーキは食べたくない。
A・ホーキング:「何故、泡が飛んだかと申しますと。波紋干渉が有ったからです。」
リッキー・ラップ中将:「そうなのか。なんか証拠でもあるのか?」
A・ホーキング:「証拠はこれです。転移前のハップル宇宙望遠鏡とJW宇宙望遠鏡の観測データです。」
リッキー・ラップ中将:「何じゃ?このボャとした星雲みたいな物は?」
A・ホーキング:「それはラグランジュ点L5に形成されつつ有るテイアです。火星くらいの大きさになると軌道を離れて地球に衝突します。」
リッキー・ラップ中将:「それを先に言え!なんでこんなモンが突然現れたんだ。」
A・ホーキング:「多分、外宇宙からのビッグバンの波紋が地球軌道で波紋干渉を起こしたからでしょう。」
リッキー・ラップ中将:「それで我々の地球はどうなったんだ?」
A・ホーキング:「あっ、それなら確実に火の玉になっています。我々は運良く脱出したようです。」
リッキー・ラップ中将:「なんと、火ダルマか。(ガクッ)。」
A・ホーキング:「運が良ければ日本みたいに泡になって、別な場所に転移してるかも知れません。」
リッキー・ラップ中将:「それでは、我が祖国は未だに存在しているのか?」
A・ホーキング:「多分、未来の地球の南太平洋あたりに転位してます。時代は25世紀あたりでしょう。」
リッキー・ラップ中将:「そこに行く方法は有るのか?」
A・ホーキング:「歴史の特異点に核ミサイルを打ち込めばあるいは?」
リッキー・ラップ中将:「核ミサイルか?、なんか夢みたいな話だが可能性があるなら研究しろ。」
ジョージ・ラウル4世が珈琲を飲みながら涙を流している。多分、塩辛い珈琲になっている。