前編
欲しがり妹は、媚びる!すがりつく!かえりみず!
媚びる!
「スザンナお義姉様~スザンナお義姉様~おきれいなの~~」
「ヒィ、そうなの・・有難う・・」
ガサッとドレスのスカートに
すがりつく!
「スザンナお義姉様~スザンナお義姉様みたいになりたいの~、だから、ドレスちょーだい。宝石ちょーだい!」
「ヒィ、先週あげたばっかりじゃない!」
かえりみず!
「忘れたの~~今、欲しいの」
「ヒィ」
おねだりで物をもらうは結果にしか過ぎない。
おねだりを拒めない環境を作るが肝要。
「分ったわ。これで、最後だわ。いい?お茶会をするのよ。来て頂けるわね」
「うん!いくの~~~」
「ケリー、ドレスと宝石を運ぶのを手伝って下さいなの~~」
「はい、お嬢様!」
・・・私はスザンナ、メアリーにおねだりされている。高価なものを次々に取られていく・・拒めない理由がある。
私がこの家に残るには、メアリーの優しい姉の立ち位置をえるしかない。
私の父は、伯爵家を出た売れない画家、実父が亡くなった後、
この伯爵家、伯父の家に、厄介になっている。
今は、メアリーのご機嫌を取らなくてはいけない境遇
この悪魔は、半年前にやって来た。
☆半年前
嵐の日に、伯父様が、12歳の女の子を拾って来た。
私の15歳の誕生日に。
馬車で拾って来た。
「旦那様、如何されましたか?」
「大変だ。この子が、道端でうずくまっていた。医者を呼んでくれ」
・・・チィ、誕生日に、何てことを。
しかし、表には出してはいけない。まだ、この家を乗っ取っていない。
総領娘アリシアを、追い出して、ここまで来た。
今日、私の養子縁組と、カーターとの婚約が発表される予定のハズなのに。
「何て、可愛いんだ」
「貴族の顔立ちだ。記憶を喪失しているから、分らないが、貴族の血を引いているかもしれない」
「父上、客人として迎えるべきです」
「貴族院に問い合わせをしよう・・」
・・・しかし、婚外子かもしれない。良くあることだ。
金髪のツインテールに碧眼、それに、「なの~」と幼児言葉を使う。
気は確かか?と思いましたの。
次々と、伯爵家の一族と、使用人達を籠絡して行った。
「使用人の皆さん、有難うなの~~お礼にクッキーを焼いたの~~」
「「「まあ、お嬢様、有難うございます」」」
伯父様も、メアリーを養子にしたがっている。
「伯父様!私を養子にして下さいませ。そして、カーター様と婚約を結べば、アリシア様の代わりができますの」
「君の成績では、貴族学園入学は難しいと家庭教師の方々が言っていた。メアリーは、勉強が出来ている。貴族の婚外子である可能性が高い。メアリーに行かせた方がいいと思っている。君は奉公人が向いているよ」
「そ、そんな」
私の実父は、伯爵の兄、絵を描きたいからと伯爵家を出奔した。
死ぬ間際に、貴族の血を引いていると告白しやがった。
もっと、早く言ってくれれば、潜り込んだのに・・・
ならば、メアリーと仲の良い義姉を演じて家に残してもらうしかない。
メアリーと仲良しお茶会でアピールよ。
「メアリー、お茶会しましょう」
「メアリーは、宝石ほしーの。ドレスほしーの」
「まあ、あげるわ。だから、ね?ね?」
それから、怒濤のおねだりを始めやがった。
でも、この家に残れれば、お釣りが来る。
☆お茶会
私は、自ら、お茶を入れ、優しいお姉ちゃんを演じた。
あら、伯爵と義弟、カーター様も遠巻きに見ているわね。
悔しいけど、この家はメアリーを中心に回っている。
「ささ、メアリー、お姉ちゃんの入れたお茶、美味しい?」
「ゲホ、ゲホホホーーーーーー」
ドタン!
「ヒィ、メアリー様!!」
「お医者を呼べ!」
「スザンナ!何か入れたか?」
「ヒィ、今回は何も入れてないわよ!」
「今回は!?」
・・・・
あれから、女騎士に拘束され
部屋の中を調べられたわ。
あの毒は、軽度に気分が悪くなるもの。
私は一年前に、アリシアの入れるお茶に入れて飲んだ。
ボットに細工をしていたのよ。
「ありました・・・これは、一年前に、アリシア様の部屋から出て来たものと同じものです」
「何と、アリシアは無罪だったか・・・」
「姉上・・・」
「アリシア・・・」
父、弟、元婚約者カーターは、一年前のアリシアの叫びを思い出した。
『信じて下さいませ!私は毒など入れておりませんわ!!』
『見損なったぞ。伯爵殿、婚約を破棄させてもらおう』
『アリシア、そこまで、スザンナが憎いか・・・残念だ』
『もう、姉上と呼びたくない』
・・・・
「そうだ。アリシアを呼び戻そう」
「そうだ。謝罪をすれば、許してくれる」
「伯爵殿、また、婚約を結ばせてもらう」
・・・結局、私は、この件に関しては、無罪を訴えたが、聞いてくれない。
おねだりに部屋に頻繁に来たメアリーが毒を盗んで、自分で入れたに違いない。
「伯父上!デービット様、カーター様、メアリーは悪魔です!信じて下さい!」
「何てことを・・・姪だから穏便に済まそうと思っていたが、残念だよ。君は家を出なさい。
厳しいと評判の奉公先は用意してあげよう。そこで性格を矯正するのだ。
これが、最後の慈悲だ」
「そ、そんな」
私はメアリーと話そうとした。
奴は、私と同類、いや、もっと、上の存在かもしれない。ナニカに違いない。
何回もお願いしても、メアリーと面会をすることが許されなかった。
しかし、
2階の廊下で偶然にあった。
私には、女騎士がいつも付いて監視している。
女騎士が離れるように、促すが、私は構わずメアリーに詰め寄った。
「メアリー、何なの。あんたは!そんなに、私が嫌い!」
「メアリーお嬢様!お離れ下さい!」
「大丈夫なの。義姉様は悪くないの~私がうっかり毒を入れてのんだの~」
「何と、健気な」
「スザンナ・・・様を庇っている。それに比べて、本人は反省の色なしね」
こやつ、ワザと、ここで、この場面で本当のことを言ってやがる!
メアリーは、耳元で小さな声でささやいた。
「お姉様、大好きなの。スザンナの魂からネズミの死体が浮かんでいるドブ川と同じ匂いがするの~、だから、遠慮なくおねだりできたの~~」
「な、何を~~」
私は軽く、本当に、軽く、メアリーを突き飛ばした。
少し、押す程度だ。
しかし、メアリーは、大げさに飛び。後ろから、階段に落ちた。
ガラガラガラガラ~~
ドタ~~~ン
「メアリーお嬢様!」
「ええい。犯罪者スザンナを拘束しろ!」
「どうした。メアリー!ええい。スザンナ、北の修道院に行け!」
「ヒィ、私は、少ししか押してないのよ~~~」
私は、実質、令嬢用の監獄と言われる。北の修道院に、送られた・・・
貴族の後ろ盾がないと、出てこられない。
実質、終身刑だ。
☆☆☆数週間後
伯爵家に貴族院の使者が来た。
メアリーの養子縁組を申請した。アリシアも気に入るであろう。
何と、あれは宰相殿の側近だ。
「メアリーの養子縁組が却下ですと?」
「メアリー【様】です。やんごとなきお方の血筋です。これ以上、知ることは、家門の存続に関わりますぞ」
「そんな。父上」
「伯爵殿・・」
「さあ、メアリー様、こちらに」
「分ったの~~皆、有難うなの~~楽しかったの」
メアリーは、皆に見送られながら、貴族院の馬車に乗って、去って行った。
最後までお読み頂き有難うございました。