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前編

既に街が寝静まった深夜。

オフィス街の一角のビル。一室にほの暗くディスプレイが輝く。

「・・・で、保存して終了。」

キーボードを叩きながら呟く。デスク周りには大量の書類とともに、コーヒーやエナジードリンクの空き缶。

ぎりぎりの意識のもと、保存されているのを確認して深くため息をつく。

「終わった。」

デスク上の物の隙間にへたり込む。全身凝り固まって鈍い痛みが広がり、頭痛が頭を重くする。

スマホを取り出し、時刻を確認すると午前3時。とっくの昔に終電は過ぎ去り、今日も自宅に帰れない事が確定している。

「こんな生活続けてたら、いつか倒れるな。」

慢性的な寝不足で目の下のクマは、日に日に濃くなっている。

「外の空気でも吸うか。」

何とか体を起こして、椅子から立ち上がる。

オフィスから出て通路を進み、階段をのぼる。

のぼった先には金属の重たい扉。それを何とか押し開ける。

そこはビルの屋上。周りにはさらに高いビルの壁と、常夜灯の明かりで星が全く見えない、ただどす黒いだけの夜空。

何かに吸い寄せられるように、屋上の端に設置されたフェンスに近づく。

「ここを乗り越えて、飛び出したら・・・。」

思っていることを口に出してみると、とても甘美な誘惑に思えてきた。

幸か不幸かフェンスは身長以上の高さがある為、一筋縄では行きそうにはない。

さてどう乗り越えようかと考える自分と、それを俯瞰的に捉えて客観視する自分。

ここ数日、毎日のように同じ事を考えている気がする。結局最後の一手を阻むのは、こういった物理的な障害が有効なのかも知れない。

そんなとりとめのない、ぐるぐると回り続ける思考を続けていると、

「やはり今日も現れたな。」

完全に一人きりだと思っていたので虚を突かれ驚き、跳ね上がりそうになる。若い、自分と同じ程度の年齢の女性の声。

声のほうを向くとそこには予想通り一人の女性が立っていた。全身を黒のドレスで包み、さながら葬儀の帰りのよう。

しかし、よく見ると細かな刺繍などがあしらわれていて、色さえ違えば貴族の着ていそうなデザインだ。

あまり裾が広がっていないそのドレスに包まれたその人の顔に馴染みがある。

「遠藤さん!?」

職場の同僚だが部署が違うため、すれ違うことは有っても喋ったことは殆どない。

「ほう、遠藤という娘だったか。おぬしの思い人は。」

「な、何を言っているんですか!?」

「ああ、先に行っといてやるが、私はおぬしの思い人の遠藤とは違う人だぞ。おぬしの記憶の中からおぬしの思い人の形を借りているだけだ。」

自分の姿をまじまじと見ている遠藤さん・・・ではない人。

「・・・ではあなたは?」

「私の名前か、教えてやってもよいがおぬしらには発音できぬだろうから、近い響きでアルファと呼べば良い。」

「アルファ・・・さんですか。」

尊大に胸を張るアルファさん。顔こそ遠藤さんとそっくりだが、遠藤さんがあんな姿を見せるとは思えない。といってもよくは知らないわけだが。

「では、アルファさんはどうしてこんな所にいるんですか?」

「単刀直入に言おう。今日この場所でおぬしがそこから飛び降りるかどうかを見届けに来たんじゃ。」

「はあ・・・。」

突拍子の無さに答えに詰まる。

「満月が輝く今宵。月の魔力が最大になる。その時に選ばれたおぬしがそこから飛び立つと、その体は当然肉片になって飛散するが、その精神だけが我々の世界に召喚される。」

「・・・。」

なんだか話の雲行きが怪しい。

「我々の世界に召喚させられた者は、色々な特殊技能を身に着ける。例えば山を砕くほどの怪力だったり、天変地異を引き起こす魔術使いだったり。

そしておぬしはその力でもって、人々を救い導く勇者になるだろう。」

「じゃ、じゃあアルファさんは、その世界に俺を連れていくために?」

「いっただろう。見届けに来ただけだ。それに私は、そんな人間どもを滅ぼさんとしている魔族のものだぞ。これから戦うやもしれん相手を見物しに来ただけだ。」

「・・・もしかして、そちらの世界に行く前に亡き者にしようと。」

「それも出来ん事ではないんだがな、それをしてしまうと約束を違える事になってしまうからの。約束は守るべきものだろう。」

わざとらしく笑う。どのような約束なのかはわからないが、目の前のアルファの言っていることが正しければ、人類の敵なのだろう。

「おぬしが我々の世界に召喚された時に困惑せぬように教えおいてやるが、おぬしが守るべき人間どもは既に虫の息だぞ。

城壁に守られた城下に籠城して、夜ごと続く我ら魔族の攻勢を何とか耐えしのいでいるにすぎん。

おぬしにどのような力が与えられようと、数には勝てんし、おぬしら人間と違い我々魔族は腕の1本や2本簡単に生えてくるんでな。

おぬしたち人間がどんなに頑張っても、次の夜には元通りだ。」

「しかし、それすらもあなたの欺瞞である可能性もあるわけじゃないですか。証拠が無い。」

「ふむ。一理あるな。ではこれでどうだ。」

いつの間にかに手にしていた筒を渡してくる。よく見ると丸めた紙を紐で止めたものだ。それは触ってみると固くごわごわした紙を使ってる、もしかしたら羊皮紙というやつなのかもしれない。

本物を見たことも触ったこともないため、それが羊皮紙なのかただの固めの紙なのかは判断できない。

閉じていた紐をほどくと、丸まっていた紙が広がり内側を見ることができた。

それは多分書類の類の何かであろう。表題らしき一文と本文らしき数行に及ぶ文章、そして最後に署名らしいものとそこに押された印。

多分、らしい、を多用したのは、それが書かれている文字が全く解読できないからだ。アルファベットの筆記体に近い印象だが近いだけで、アルファベットとは全く違うのがすぐわかる。

少なくとも自分の知っている中でその書類と同じような文字を使う言語は知らない。

「書いてある内容は人間たちの長たる王様直々に、おぬしに助けを求める内容だ。ありがたいだろう。」

「・・・。」

書いてあることが自分で読めない以上、読めると言い張るアルファの言うことを否定するには材料が足りない。

ふと、気が付く。

「この書簡がその王様から自分に宛てられたものだとして、その王様を含む人間を滅ぼさんとしている魔族のあなたがなぜ持っているのですか?」

「当然の疑問だな。そもそも我々魔族におぬしら人間どもが行っているこの召喚の秘術の、対象も場所も日時も推測する余地もなかった。

しかし、それの差出人たる王は愚かにも1ヶ月の停戦の交換条件として、おぬしの事を我々に伝えた。

つまり、おぬしは召喚される前から彼らの取引の材料にされて、そして売られた訳だ。」

「・・・。」

「ちなみにその書簡はおぬしを殺さないでくれと懇願された時に託された物だ。向こうがどこまで本気でおぬしの助命を懇願してきたかは知らんが、それも承知してきたからな。無碍には出来んな。」

いやらしく笑う。それはそうだろう、状況の全てが自分の掌の上なのだから。

「そんな王様のもとに召喚されるのだから、その後も苦労が絶えぬだろうな。我々との戦いでおぬしがいくら傷つこうとも、あいつらはおぬしに回復魔法をかけてまた戦場にほっぽりだすぞ。

下手したら死してなお甦えさせられ、永久に我々との戦争の道具に仕立て上げるだろうな。

それでもなおそこから飛び降りてみるかい?」

「・・・いや、今は辞めておこう。」

「ふっ。それは賢明な判断だと思うぞ。」

判断材料が少なすぎる。言っている事がすべて本当だとすれば、確かにその王様とやらを助けてあげたいとは思う。しかし、言っていることがすべて嘘であればただの阿呆だ。

「ところで、そのチャンスは今日だけか?」

「いや。次の満月も召喚は可能だぞ。その次となると確証はなくなるな。我々の世界に行けるかもしれないし行けないかもしれない。」

「だったらなおのこと今日は行けないな。準備が必要だ。」

「そうか。それは残念でもあり嬉しくもあるな。おぬしの決断を王様に伝えるのが今から楽しみでしょうがないな。」

楽しそうに笑うアルファ。すると、くるりと後ろを向き座り込む。そこにはそのいでたちからは似つかわしくない、籐を編んだピクニックバスケット。

そこから一本のワインボトルと2個のグラスをとりだすと。

「では楽しみついでに、一杯付き合わないかい。」

「毒でも」「毒なんていれないさ。さっきも言っただろう君の身の安全は約束してきたんだ。」

食い気味に答えられた。それにしても先ほどからずいぶん上機嫌だ。そんなに諦めたことが嬉しかったのだろうか。

グラスに注ぎながら続ける。

「ちょっとした雑談なんだがな。我々の世界とこちらの世界で食べるものが全然違うのだよ。それで知っているものは無かろうかと思って探したら、ワインを発見した。

どんな世界でも、酒の魅力には抗えないもんだな。・・・ほれ。」

なみなみ注がれた赤ワインが渡される。

「月夜の出会いに。」

勝手に乾杯の音頭を取って飲み始めているアルファ。一口飲んだのを確認してから自分も口に含む。

「疑り深いのう。毒など入れておらんよ。」

ちゃちゃを入れられるも無視する。それよりもその赤ワインは温めてあり、味と香りが一気に広がる。過労と寝不足と空腹だったところに温めたアルコールが入ってくればおのずと酔いがすぐ回る。

数口飲んだところで視界が回り始めた。

「やっぱり何か・・・混ぜた・・・だろ。」

歪む視界の向こうで意地悪そうな笑顔が答える。

「だから毒は入れておらんと言っただろう。グラスにちょこっと薬を入れといただけだ。」

それはただの屁理屈だろう、と言い返したかったが既に意識が飛んでいた。


気が付くと見慣れた自分のデスクに突っ伏していた。時間は既に朝でチームの二人は既にパソコン相手に格闘していた。

「あ、おはようございます。先輩。」

チームのうちの一人、森宮君が気が付いて声をかけてくれる。

「あ、ああ。・・・今何時だ。」

言いながらスマホを探していると、教えてくれる。

「課長が来るまで後、15分って所です。後5分寝てたら起こそうかと思いました。」

「ありがとう。・・・ちょっと顔洗ってくる。」

体を起こそうとすると、ぱさりと自分にかかっていたいた布が落ちる。

「ん?」

「珍しいっすね。先輩が掛布団して寝てるなんて。・・・先輩のっぽくないですけどね。」

落ちたのは赤地にチェックがはいったブランケット。確かにこんなものは自分では用意しないだろう。

「これは、男鹿君が?」

もう一人のチームメイトに尋ねる。チームの紅一点は首を振って、

「私ではないですね。私がやるんだったら寝袋を持ってきてその中にリーダーを詰め込んでその辺に転がしておきます。」

「う、うん。ありがとう。」

彼女なりの優しさだろうと思っておく。

誰のかはわからないが、そのブランケットを拾い上げて畳もうとすると、かすかに赤ワインの香りが漂う。

「・・・。」

夢ではなかったのだろうか。そう思いながらも今は気持ちを切り替えるために、席を立ちトイレの洗面台で顔を洗ってすっきりさせる。

ハンカチを探してポケットをまさぐると、見知らぬ何かが手にあたる。

顔拭いてハンカチをしまいながらその見知らぬものを取り出す。折りたたまれたメモ用紙。


素晴らしい時間をありがとう。

28日後にまた会おう。

追伸・それまでに飛び降りたくなったら勝手にするがいい。わたしの知るところではない。


夢ではなかったことが確定した。それにしてもどこまでも上から目線だ。

ため息をつきながらメモ用紙をしまい、頭を切り替える。

デスクに戻り、チームと共にその日片付けるべき仕事を黙々とこなす。

納期と進捗状況のバランスは相変わらず際どいが、とりあえず一段落したところで帰宅することにする。

帰宅前、といっても終電前なので真夜中だが、帰る前に一度屋上に行ってみた。

昨日の言動や、メモ用紙の内容からアルファは居ないだろうがとりあえず探してみる。予想通り居なかったのが少し残念に感じた。

来たついでにフェンスに近づいてみる。そこからの景色はいつも通りだが、昨日ほどの吸い込まれるような魅力は感じない。

なぜ昨日まではあそこまで、ここから飛び越えることに魅力を感じていたのだろうか。


数日が過ぎてやっと休日となる。しかし、休日出勤をすることになる。平日はチームの方の仕事に力を入れているため、それ以外の自分個人の雑務がなおざりになってしまう。

それを一気に片付けてしまう為の休日出勤。当然の様に手弁当だが。

雑務が主なので半日ほどであらかた終了する。

帰りがけにふと本屋に寄ってみる。仮に仮を重ねる仮説の話。あのアルファが言っていた事が事実だったとした時に自分が向こうの世界に行ったとした時、

何かしらの能力を手に入れるらしいが、それだけで事足りるのだろうか。戦うべき相手はあのアルファやその他の魔族の輩だ。準備は多いに越したことはない。

精神だけが向こうの世界に行けるとしたら、持っていけるのは知識だけとなる。では、どのような知識がそのような状況で役に立つか。

本屋のビジネス書籍のコーナーに向かう。そこにある古代の兵法書から学ぶ的な本を適当に選んで購入した。

ビジネス目的ではなく、その元となっている兵法書の中身を求めてだ。使えるかどうかは二の次として、知っておけば何かに役に立つかもしれない。

それから貴重なプライベートな時間を使ってその本を読み進めた。ビジネス書である以上、今の仕事に生かせそうな所も十分にあった。

そしてもう一つ。こちらは完全に手探りだが、その仮説を崩すための探し物。

あの日にアルファに見せられた謎の書簡の文字。思い出せる範囲でメモに書き出してみて、それを既存の文字と比較検討してみる。

ちなみにその書簡自体は自分が睡魔に襲われたどさくさにアルファが持って行ったらしく、あの後にどれだけ探しても見つからなかった。

世界各地の文字と比較してみてもやはり違う。第一印象通りアルファベットの筆記体が一番近そうだが、やっぱり違う。

こちらは唯一の物証もないため、まったく進まない。


全くの偶然の副産物というべきか、今までビジネス書が仕事の役に立つとは思えず敬遠していたが、読んでみれば仕事の役に立てる部分が多少は有った。

そのおかげで、プライベートの時間が若干増えたことはとてもありがたい。その時間で息抜きがてら、謎の文字の正体を探していた。

「先輩、何してるんですか?」

昼食がてら、デスクで世界の文字とにらめっこをしていた所を森宮君に見咎められた。

「あ、いや、ちょっとした謎解きみたいなもんだ。」

本当のことを全て話すわけにもいかず、適当に虚実織り交ぜて答える。

「親友から暗号解読クイズのみたいなものを出されてな。そもそも言語が判らなくって、初手で行き詰っているわけだ。」

自分で書き留めたメモを見せる。記憶が掠れないうちに書き留めた、謎の文字。

「その様子だと、調べられる限りの言語は調べたって感じですね。」

「そんな感じだな。とっかかりすら掴めない。」

「だったら、違うんじゃないんですか?・・・例えば、」

そういって、パソコンで検索をかける。表示されたのはボードゲームと呼ばれる種類のゲームだった。

「このゲームなんかは、製作者が細かい所まで作りこんでいるので、ゲームの中で使われる文字が全て創作なんですよ。」

「なるほど。・・・創作物か。完全に見落としていたな。」

勝手に既に有る言語の文字だと思い込んでいた。だから、いくら調べても答えにたどり着かなかった。しかし創作物の言語だとしたら、その可能性は大きく広がる。

「近くにこういったゲームが置いてあるカフェが有るんですよ。そこだったらヒントが見つかるんじゃないですか。」

有力な情報を得て、次の休みの日に教えられたカフェに行ってみた。

「いらっしゃいませ。」

人の好さそうなマスターに出迎えられる。そこそこ混んでいて、おのおの数人でテーブルを囲みゲームに興じている。

適当にカウンターに座り、飲み物を注文する。

「こういったお店は初めてですか?」

挙動不審だっただろうか。にこやかなマスターに聞かれる。

「実はその通りで。あーいったボードゲームもよくわからなくて。」

「未経験な事に挑戦するときは、いつだってわくわくしますからね。ご説明いたしますよ。当店に置いてあるゲームはボードゲームがほとんどですね。多種多様なゲームがあるので一人で遊べる物から大勢でやるものまで色々ありますよ。」

マスターは簡単なルールの対戦型のボードゲームを選んできて、対戦をしてくれた。確かに楽しく、皆が熱中するのもよくわかる。

「こちらのゲームは比較的簡単なルールのものですが、中には事細かにルールを定めている物もあって、初級者から上級者までいろいろ遊べます。」

「作りこまれているのは凄そうですね。ゲームの中の世界観も作りこまれているんですね。」

「そうですね。例えば、これなんて、」

そういいながら他のボードゲームを持ってくる。そのゲームに使われるカードには謎の文字が並んでいる。

「このゲームなんかは、ゲームの中の世界観がしっかり作られていて、専用の文字まで作ってますね。」

「へー。すごい作りこみですね。実は自分がボードゲームを知ったきっかけもそこでして。友人が見たことの無い文字を使った文章でクイズを出してきて。」

適当な作り話で話を繋げる。

「読めないからクイズの答えも全く見当がつかず。こんな感じの文字なんですけどね。」

自分で書いたメモを見せる。

しばらくマスターはそれを眺めて答えた。

「こういった感じの文字はボードゲームでは見てないですね。」

「そうですか。」

「しかし、こちらなら十分可能性はあるかと。」

そういって指さした場所は、他よりも巨大なテーブルが置かれ簡単なパーティションで仕切られた半個室のような場所。

「こちらはテーブルトークRPG用の部屋です。

テーブルトークRPGは、まあかなり強引に平たく言えば先ほどのボードゲームに、物語性とさらに細かい所までカスタマイズ性を足して、キャラクターをより動かしたいように動かせるようにした物、ですかね。

流石に下準備やら実際のプレイ時間やらの問題からボードゲームに比べると敷居が高く感じる人が多いため、うちのこの部屋も一つのグループの貸し切り状態なんですけどね。」

中央の巨大なテーブルの上にはそのグループの物と思われるいろいろなゲームの為の小物が置かれている。

「ボードゲームと同じように既存のシナリオを使ってそれに合わせたルールでゲームをプレイする事ももちろん出来るんですが、このグループの主催がだいぶこだわってオリジナルのシナリオでやっているんですよね。そのオリジナルのシナリオに出てくる架空の文字がそのメモの文字に似てたような。」

「本当ですか。」

もしこれが当たりなら、アルファのかなり近い所までたどり着いた事になる。

「うろ覚えですけど。なにぶん、面白そうだから見学していたいんですけど、カフェのマスターとしての仕事もやらなきゃいけませんから。」

苦笑いしながら答える。面白そうという感想に本当にこういったゲームが好きなのだろうという印象を持った。

「楽しそうなゲームですね。」

「ただ、残念なことにそろそろ終わりが見えてきて、佳境と言えばそうですけど。前回まででほとんど問題が決着してしまっていて時間切れで次回持越しにはなったは良いけど、後はエンディングぐらいかなといったところですね。シナリオを毎回考えてくる主催も、なんとかもう一ひねりを考えているそうですがなかなか思いつかないみたいで。」

「物語がエンディングを迎える。嬉しいようなもの寂しいな感じですね。」

「そうですね。因みに大体月一程度の頻度で開催しているので次回は再来週辺りじゃないですかね。もしご興味がおありなら主催の方にアポを取りますけど?」

「いやいや。それには及びません。流石にこんなずぶの素人が邪魔をしては興がそがれてしまうでしょうから。」

丁寧に辞退する。

その後も少しマスターと談笑をしてカフェを後にした。

収穫が有ったような無かったような、すごくあいまいなふんわりした感想を持って帰宅した。

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