極楽
人生の旅の先に、その場所はある。
昔から、よく言い伝えられてきた。
多分、みんなも知っているところ。
まだ見たことは、一度もない場所。
どのあたりにあるのだろう。未知。
幼い頃、聞かされてきたことがある。
そこに行くための、大切な条件だと。
と言うより、許しを得てから行ける。
許しというのは、入学式みたいだと。
本当なのかは知らないが、重要だと。
いい子のまま、いい人となり、いいこと正しいこと、美しいことに生きる。
そうしないと、入ることができない。
何でも、クラス分けと似ているらしい。
ひとつ、こちらと違うのは、 どうやらこの世にはない、とんでもなく厳しい選択があるという。
補習や追試といった、最後の救いの手が差し伸べられない、というのだ。
既に総合得点を持っているから、これ以上審査することはないという。旅の終わりが最後の評価になるからだ。
果たして自分はどうなることやら。
人は個別に様々な事情を抱えながら、それぞれの時間を全うする。喜怒哀楽を展開させながら過ごす。
そのまま何事もなく淡々としている者あれば、激動の運命を辿る者もある。
順風満帆、波瀾万丈、平穏無事、実に多様。
久しぶりに半身浴をした。入浴剤投入。
ここのところシャワーですませていた。
さっさと寝る分には良いが疲れたまま。
ゆっくりと足を揉みながら、深く呼吸。
梅粥。鮭と木綿豆腐の白味噌煮が夕食。
温まった気持ちよい体で作るのがよい。
そういえば、ある意味、既に見ていた。
芯から癒される、湯船の、あの時間に。
満足すると、自然と心から歌うように。
今日もよく生きた、その労をねぎらう。
明日もよく生きて、健やかな時の旅を。