第24話 （2006年9月1日）交渉
学校帰りに美咲と渚を呼び、俺の部屋でパソコンを使い文化祭のための衣装を探す。
「これとかどう？可愛くない？」
「あ、いいねー、これ着てる美咲見たいなー！」
「えー、これはダメ！ほとんど何も隠せてないじゃん！もうちょっとちゃんとしたやつがいーい！」
「じゃー、これは？」
「えー、んー、これもちょっと」
「じゃ、これ！これならさっきのよりいいでしょ？」
「んーこれならさっきのよりはまだ着れるかも・・・」
これでもかなり露出は多い。
先に無理な要求をすることで、本命を承諾させる。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックと言われる交渉術だ。
まあこれは文化祭当日は着せないけどな、みるのは自分だけでいい。
「あとは、これと、これも買っとこう！」
「あ、これ可愛い！これ欲しいー！」
「そんなに買ってどうするの？」
「実際来てみないと合うかわからないでしょ？」
「それはそうだけど、お金どうするの？」
「それは心配しなくていいよ！ちゃんとあるから！」
2人が帰ってからカートに入れていた商品を購入する。
最初に見せたやつも買っておこう、いつか着せられるかもしれない。
美咲と渚に10着づつ、一つ一つは安いが合計で8万くらいかかった。
届くのが楽しみだ。
「ただいま」
そうしているうちに父親が仕事から帰ってきた。
「お父さんちょっと、頼み事があるんだけど、部屋に来てくれないかな？」
「どうした？そんな改まって、珍しいな」
「怒らないで聞いて欲しいんだけどさ、ちょっとお願いがあって・・・」
「まあ、聞くだけ聞いてやるから、言ってみなさい」
「お金・・・貸して欲しいんだ」
「なんだ？美咲ちゃんにプレゼントでもするのか？でも株でかなり稼いでただろ？」
「いや、そうじゃなくて投資のためのお金を・・・」
「はあ？まだ足りないのか？今いくら持ってるんだ？」
「ちょっとこれみて」
そう言ってパソコンで口座情報を見せる。
「今ジッセント株とりんご株あわせて960万円あって、銀行口座に40万円入ってる」
「これを担保にしてお金を貸して欲しいんだよ」
「すごい額稼いだな！？前に聞いた時よりも倍に増えてるじゃないか」
「まあそれはそれとして、ふーん担保か、よく考えたもんだ。いくら貸して欲しいんだ？」
「1000万・・・いや200万でもいいよ！」
父親が黙ってジロリと俺を睨んでくる。
会社を経営してる父なら多分そのくらいは余裕で持っているはずだ。
それに、担保があれば貸倒リスクも減るし、これだけ稼いだという実績もある。
「どう・・・かな？」
「200万”でもいい”とか言う奴には貸せん、それ以上に稼いでいるからといって小さい額を甘くみてるやつは絶対にいつか失敗する」
失敗したか・・・？でもなんとか説得しないと。
「分かってる、ちょっと焦って言っちゃっただけ。でも将来のために絶対に必要なんだよ」
「・・・」
「兄ちゃんは将来お父さんの会社継げるでしょ？でも俺は継げないし」
「・・・」
「美咲のこと幸せにしたい。そのためにできることはなんでもしたい」
「・・・」
「ちゃんと勉強もするし、ちゃんと言うことも聞く」
「投資に失敗したらどうする？担保の株も値下がりしたら？」
「相続放棄する・・・とか」
「・・・分かった、お前の銀行口座に1000万送金する。失敗したら2度と投資はさせない。借用書を作るからサインしなさい」
「それから、どこに投資したか逐一報告すること。高校卒業までに完済すること。利息は年利1%で1年後から毎月一定額返済すること。この3つを絶対に守りなさい」
「1000万って、ほんとに！？いいの？」
「必要なんだろ？まあ、それだけの覚悟があるならいいだろう。美咲ちゃんのためでもある、傷つけるようなことするなよ？男と男の約束だ」
「分かった！約束する！ありがとう！」
っしゃああああああああ！
1000万ゲットー！
理解のある父親で助かった、これで投資できる！
「ついでに信用取引も頼みたいんだけど・・・」
「だめだ」
あ、はい。
2006年9月1日
口座に振り込まれていたお金は既に証券口座に送金してある。
しかしどこに投資しようか、運天堂もいいし、最初に狙っていたディーエヌベーでもいいなー。
・・・やはり運天堂にしよう、こっちの方が値上がりの理由もはっきり分かっているし、リスクが少ないだろう。
今の運天堂株価は大体24450円前後。
400株を978万円で購入し、口座には22万円残った。
現在の資産2000万円（半分は借金）
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