武術大会が終わっても
アクアシティ。武術大会の告知と共に解放された新エリアである。その名の通り、町の景観や周辺環境のメインコンセプトが「水」である。街中には綺麗な水路が数多く走っており、町の外はあちこちに湖があるフィールドなのだ。
この町周辺にいるモンスターは基本水中に暮らしており、地上に生きるモンスターはほとんどいないそうだ。(厳密には、地上を這い湖から別の湖へ移動するタイプのモンスターもいるので、地上にモンスターが全くいない訳ではない。)だから、この町周辺でモンスターを倒したければ水中呼吸薬が必須アイテムと言える。
さらに言うと、水中モンスターの多くは異常状態を付与してくるタイプのモンスターである。俺が知る中でも「溶解ダコ」の『毒』や「誘惑シア」の『魅了』などの異常状態がある。実際にはあと二種類くらいの異常状態があるそうだ。『麻痺』だっけか?正直覚えていない。ともかく、そう言ったモンスターとの交戦に備えてそれぞれの異常状態を無効化する薬を携帯しておく必要があるのだ。
要するに、「アクアシティの探索=色々な薬が必要」なのである。
さてさて。武術大会が終わると同時に皆の関心は「対人戦に向けた戦闘練習&レベル上げ」から「アクアシティの探索」に移るわけでして。そうなると当然種々の薬の需要が高まる。
「だから、アルバイトして欲しいと?」
「Yes! セイ、マジで助けて」
「でもなあ~俺も自分のしたい事があるんだよな~」
「そ、そうなの? じゃあ、無理強いはしないわ。……ちなみに、何をするつもりなの?」
「……ごめん、よく考えたらする事、特に思いつかなかった。アルバイトするよ」
「サンキューなの!」
こうして、錬金ギルドのギルドマスターである、ローズの頼みにより、アルバイトに精を出すことになった。
◆
「しかし、町中の錬金術師がこのアルバイトしてるんだろ? 確かに消費者が多いとは言え、こんなに大量に作って値崩れしないのか?」
出来上がった薬(今日は水中呼吸薬と毒無効薬を作った)を納品しながらローズに疑問を投げかける。
「大丈夫。今はマジで需要が高まってるから。まさに『どんどん働け・どんどん儲けろ』の精神よ」
「うわ~。バブル経済みたいだなあ。『24時間働けますか?』ってやつだ」
「あはは。我々住人は基本睡眠の必要が無いからね。文字通り24時間働けるわよ」
「ひえええ」
「そういえば、ローランって女性ご存じ?この前の武術大会ではクッキーを作ってた人だけど」
「名前は聞いたことあるな。実際に会ったことは無いけど」
「あの人が、ワインとショウガをミックスしたクッキーを開発したの、ショウガが大丈夫なら、一枚食べてみて」
「え?あ、ああ。ありがとう。ショウガは好きだから問題ない。パク」
おお!これは美味しい。アルコールの効果か体温が上昇し、風呂上がりのようなすっきりした気分になれる。また、鼻の奥を抜けるショウガのツーンとした香が頭をシャキッとしてくれる。
「これは旨いな。食べると元気が出たような気がする。一度家でも作ってみようかな」
「あら、気に入ってくれて何より。みんなこれを片手に作業をするの。疲れたらこれを食べてやる気を起こすってわけ」
「……AWT版『レッド○ル』?」
「スカーレットスタリオンって呼ばれてるわ」
「Red(赤)ではなくScarlet(緋色)。Bull(牡牛)ではなくStallion(牡馬)ってか」
「そゆこと~」
「……住人も大変なんだな」
「でも、みんな楽しんでやってるわよ。マイ錬金台を買えば内職としてできるアルバイトだし、何より確実な収入源だし。だから、錬金術師って住人には結構人気のジョブなのよ?」
「へ、へーー。それは面白い。確かに、衣食住に困らないのは大事だものな」
「まあねーー。もっとも、セイみたく、権利収入がある人にとっては、アルバイトは戦闘職の応援という意味で働いてるけどね」
「なるほどねえ。確かに俺もなんやかんや結構な額を頂いてるな。それでも、戦闘職の皆さんの為って思って薬作ってるなあ」
「そういうこと。おっと、話過ぎたわね。私も錬金してくるわ。セイはもうお帰り?」
「ああ、家族が夕飯を待ってるから」
「おーけー! 今日はありがとね」
武術大会が終わったとはいえ、この世界の活気が失われることは無かった。むしろ前よりも生き生きしてる気がする。
さあ、これからもこの世界を楽しもう! 明日はどんな出会いが待ってるかな?
いつも読んでいただきありがとうございます!!




