デスペナ?俺には関係ないな!!
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今後ともよろしくお願いします!!
地面とにらめっこすること10分。俺はヒールウィードを10本手に入れた。しかもその時、『植物図鑑』の熟練度が5を超えた。熟練度が上がることによって、スキルの使い勝手が良くなると聞いていたのだが、この熟練度5到達はなにか節目のような物だったのだろうか。突如として、鑑定結果に変化が現れた。
ヒールウィード:HP回復薬の材料として使える。
ヤマノイモ:食用。繁殖力が強いつる植物だ。
エノコログサ:猫をじゃらすのに使える。
ブタクサ:花粉症の原因と言われている。
タンポポ:綿毛を飛ばして遊ぶのに使う。
ススキ:手で直接握るとダメージを受ける。
シソ:食用。いいにおいがする。
シロツメクサ:花かんむりを作って遊ぶことが出来る。
スズメノカタビラ:根がしっかりと地面に食い込んでいて、厄介な雑草。
このように、植物名だけではなく、その植物の説明も読むことが出来るようになった。まあ、大した情報は手に入らなかったな。例えばエノコログサの説明文。「猫をじゃらすのに使える」って言われてもどうすりゃいいんだよ!!
有益か否かはともかく、熟練度が上がったことに喜びをかみしめていると……突然目の前に赤色のプルンとした生き物が現れた。これって……
レッドスライム:Lv1
モンスターだ! やばいやばいやばいやばい。
今まで俺が襲われることは無かったけど、これはあくまで周囲のプレイヤーが我先にとモンスターを狩っていたからに過ぎない。だから、俺の前にモンスターが現れる可能性だって十分ある。
スライムが飛び掛かってくる。錬金術師は物理防御力も魔法防御力もプラス補正がかからない。防御面だけを考えると最弱の職業だ。さらに、俺は防具も持っていない。それが意味する事は……
スライムの攻撃、セイに50のダメージ! セイは死んでしまった……
◆
視界が暗転し、ゲートシティの広場に死に戻った。死に戻るとデスペナルティー(デスペナ)という物が発生する。死に戻り後、1時間の間は攻撃力と防御力が半減し、得られる経験値も半減する。すなわち、死に戻り直後は苦戦するようになり、その苦労の割には経験値が得られなくなるという訳だ。
無論、俺もデスペナを受けることになる。俺のステータスは次のようになった。
※デスペナ時のステータス補正
HP:50
MP:10
PA:10→5(デスペナにより半減)
MA:10→5(デスペナにより半減)
PD:10→5(デスペナにより半減)
MD:10→5(デスペナにより半減)
S:10
M:10
D:50
これによって困ることは何か。防御力が下がったという事は一回のスライムの攻撃で100のダメージを受けるようになってしまったわけだ。
これって本当に困ることだろうか?
俺はデスペナ以前もスライムのワンパンで倒されていた。言わば「これ以上弱くなることが無いステータス」だ。
ふはははは! デスペナ? 俺には関係ないな! だって元から弱いもん!
◆
while(True): #以下の事を永遠に繰り返す。
再度、西の草原にやってきました。
薬草採取に励みました。
モンスターに見つかり、ワンパンされました。
死に戻るも、めげずに西の森へと向かいます。
◆
死に戻りに死に戻りを重ね、俺のステータスは
HP:50
MP:10
PA:10→0.1(デスペナにより半減×10)
MA:10→0.1(デスペナにより半減×10)
PD:10→0.1(デスペナにより半減×10)
MD:10→0.1(デスペナにより半減×10)
S:10
M:10
D:50
こんな風になっている。デスペナって重ね掛けされるんだね……。それと、ステータスは0.1以下にはならないようだ。おそらく、計算上都合が悪くなるからだろう。
このステータスになると、スライムの通常攻撃で50×100=5000のダメージを受けることになってしまう。この状態の俺からしてみれば、スライムはボス級の強さを誇る凶悪な怪獣だ。
さて、ちょうど外ではお昼時だ。一度ログアウトして昼食を食べないといけないな。メニューからログアウトを選択する。視界が暗転し、俺の意識は現実世界に戻ってきた。
◆
さあ、ゲームを一刻も早く再開せねば。ちゃちゃっと料理を作り、料理を紙皿の上に並べる。普段なら盛りつけにこだわって美味しそうに見えるようにこだわるところだが、今はそんなことしている場合じゃあない。
ちょうど香もログアウトしたので、二人で食事をがつがつと食べる。
「調子はどうだ?」
「あたしはいい調子だよ。ホーンラビットって名前の可愛いウサギさんが召喚可能になったから、今は兎さんと行動を共にしているの」
「へえ。とういことはホーンラビットを倒したってことだよな?」
「ええ、そうよ。一定数その魔物を倒して初めて召喚出来るようになるからね」
「へえ。それにしてもどうやったんだ? お前のジョブだとステータスの補正は戦闘系ではないだろう?」
「ええ、だから苦戦したわ。まあ良さげな防具と良さげな武器をそろえたおかげかな。お兄ちゃんは?」
「俺は錬金台なんかの錬金に必要な物を残しておきたかったから防具も武器も買ってないから……。モンスターに出くわしたら終わりだ」
「え、まじ? じゃあ、すぐに死に戻るんじゃあない?」
「もちろん。ただな。死に戻っても所持金が減ったりするわけじゃあないだろう? 結局、ステータスにマイナス補正が掛かるだけなんだから何度でも死に戻ってやろうと思ってな」
「でも、それだと、レベルアップに苦労しない?」
「俺はレベルアップなんて目指してないぞ。なにせ、デスペナなくてもスライムにワンパンされる強さしかないからな!!」
「ええ? じゃあ、何しているの?」
「素材集め。ヒールウィードっていうHP回復薬の材料なんかを集めているぞ」
「ああ……そういえば、風のうわさで延々と雑草を刈っている変人がいるって聞いたけど、あれってお兄ちゃんだったんだ……」
「変人とは失礼な。俺は真面目に薬草採取を行っているんだぞ」
そんな風に情報交換をしている内に、食事を食べ終えた。紙皿をそのままゴミ箱へ放り込む。さあ、ゲーム開始としましょうか。
「お兄ちゃん、トイレ行っとかなくていいの?」
「忘れてた。トイレ行ってからゲームだな」