最終試合・開始
武術大会で決勝戦まで残ったマルベーシを応援するべく、マルベーシの所にリオカ、フラウと俺が集まっていた。そしてそこに、ひまわりさんもやってきた。ひまわりさんはマルベーシ専用の武器を作ったことで知り合いになったらしく、マルベーシを応援する一人である。
「ひまわりさん、どうも」
「あ、ひまわりさん。耐久値の回復は出来ましたか?」
俺のそっけない挨拶を遮るように、マルベーシが声をあげる。耐久値の回復を頼んでいたのか。確か鍛冶職人は武器の耐久値を回復させることが出来るんだっけか? 今までの戦闘ですり減らした耐久値の回復をひまわりさんが請け負ったという事か。
「あれ、それじゃあ、さっき見せてもらった『向日葵の剣 ver5(2)』は何?」
「あれはゾンビ戦用の剣。対人戦用にはあれを使ってるわ」
「あれ? おお」
マルベーシが指差す方を見ると、ひまわりさんが剣を差し出していた。鑑定すると『向日葵の剣 ver5(1)』となっていた。なるほど。そういう事か。
「ちなみに、予備としてあともう一本インベントリに保存してあるわ。だから、仮に試合が長引いても平気よ」
「なるほど。用意周到だな。ちなみに、そいつの名前は……?」
「もちろん、『向日葵の剣 ver5(3)』ね」
「なるほど」
「へえ。マルベーシさんとセイさんは仲が良かったのですね。リアルでのお知り合い?」
「ああ。高校、大学の同級生なんだ」「ええ。高校、大学の同級生なの」
「わあ、息ぴったり! ともかく、マルベーシさん。今日の試合頑張ってくださいね。応援してます!」
「ありがとうございます!」
…
……
………
そういう訳で、ひまわりさんとフラウ&リオカの顔合わせも簡単に行った後、皆で一緒にマルベーシの応援をすることに。といっても、優勝決定戦まで残ったとしても合計4試合しか行われない訳で。空いた時間は互いのもつ情報を交換したりする。正直、話題が尽きて気まずくならないか心配だったが、女性が3人(マルベーシも含めると4人)もいると、何故か話題が尽きない。ゲーム内の情報交換にとどまらず、最近流行りのファッションについてとか色々と。ファッションの話題になったら俺はついていけなかったが、まあそれなりに楽しめた。
ちなみに、俺が最も皆の関心を集めた話題はAWTの中で一軒家を買ったという話題だった。家具とかそろったら招待すると約束してしまった。頑張って風情ある部屋に仕上げようと決めた俺だった。
◆
しばらく経って。俺たちはマルベーシv.s.アルカディアの優勝決定戦の始まりを心待ちにしていた。
いやいや、途中の試合は?! と思うかもしれないが、残念ながら見どころが全くなかったのだ。一回戦同様、スキルコンボで大ダメージを出して、勝ち進んだという感じだ。さすがに、一回戦とは違ってちょっとした攻防がなされる試合もあったが、いずれにせよマルベーシの圧勝であった事には変わりない。だから、正直、途中の試合を全く覚えてないと言っても過言ではない訳だ。
「さあさあ。優勝の栄冠に輝くのは東軍『マルベーシ』か。それとも西軍『サファイヤ=フォトン』『クリムゾン=サンライズ』『竜飛』『舞影』のパーティーか。さあさあ!試合開始が刻一刻と迫ってきています!!さて、試合開始前に、両チームにインタビューとしましょうか。まずは西軍の皆さん。今の心境とそれを踏まえて、応援している皆様へのメッセージをお願いします」
「では4人を代表し、アルカディアの創始者たるサファイヤ=フォトンが答えようではないか。今、我々の中にある思いはただ一つ。『絶対に勝つ。勝利以外は考えられない』だ。敵は確かに強い。だが、その強さに自惚れ知恵を回す事を怠った。これは生死をかけたデスゲームなのだ。それに全力で挑まなかった彼女に後悔というものを味わわせてやろうではないか!! 最後に。我々アルカディアの信念をこの場を借りて説明させて頂こうではないか。我々、アルカディアの目指す先は『この世界のリーダー』である。この世界にとって我々が『なくてはならない存在』となるよう、我々は日々活動している。我々と共に、この世界のリーダーになろうと望む同士よ! 叫べ! 『アルカディアよ、永遠に輝け!』」
「「「アルカディアよ、永遠に輝け!」」」と観客席からも声が上がる。
「えっと……。デスゲームではないと思うのですが……。ま、まあ。自信たっぷりなご様子ですね」
うん、サファイヤさんよ。それで負けたら結構恥ずかしいよ?そんなことを思った俺であった。次はマルベーシがインタビューに答える番だ。徴発に応える形をとるのか。あくまで自分の思いを述べるのか。
「では、マルベーシさん。お願いします」
「はい。朝にも軽く自己紹介をさせて頂きました、『マルベーシ』という者です。さて、今の心境を一言で言うなら『怖くない』です。それは、勝てる自信があるという意味と共に、自分に出来る事はやり切ったという意味でもあります。それから、最後に一言。私は一見ソロで戦う一匹オオカミに見えるかもしれません。実際、このステージに立っているのは私だけ。ですが、本試合で私がここまで勝ち残ってこれたのはこの場にはいない私の大切な仲間のおかげです。私に合わせた武器を作ってくれた鍛冶職人。私に戦闘技術を磨くお勧めスポットを教えてくれた友人とその家族。多くの人が私の仲間であり、パーティーメンバーなのです。結果がどうあれ、多くの人と共に戦った今までの時間はとても楽しい時間でした。今も観客席から私を見てくれている私の仲間に改めて感謝の言葉を贈りたいと思います。ありがとうございました! これからもよろしくお願いします!」
「おお! 何と言いますか……優等生のようなセリフでしたね!」
司会者の表現の仕方に観客が笑う。うん、いい得て妙だな。というか、実際マルベーシは高校では優等生だったんだ。ああいうセリフがすらすら出てくるのは彼女は「優等生」であったからだろう。
「それでは試合開始時刻となりました! 両者、準備はいいですか? 3,2,1,スタート!」
いつも読んでいただきありがとうございます。今後とも本作をよろしくお願いします!
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