表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/147

地下水路の先に

「ふう、ここが8番のマンホールの下かあ。呼吸薬はあと一瓶。一気に泳ぎ切らなくては!」


 水中呼吸薬の残り個数から逆算し、死に戻らないように気を付けながら消費量を出来る限り抑えてここまで泳いできた。……と言いつつも、実はかなりの無茶を行っていた。43番→29番まで泳いだときは呼吸薬の効果が切れ、溺死までのカウントダウンが始まっていたくらいだ。一桁台までやってきたことを、我ながら誇らしく思う。


「おや? メッセージが。リオカから? なんだろう?」


<なに、あのゾンビ? どうやって倒すの?>


<なんで知ってるの……?>


<お兄ちゃんが逃げた後、フラウちゃんと二人でお兄ちゃんの後を付けて、それで……>


<マジ? 全然気が付かなかった! それで、この情報を広めるのか?>


<お兄ちゃんが第一発見者だし、それを横取りするのは気が引けるからなあ……。でも、独占しようとしたお兄ちゃんも良くないと思うわ。どうして独占しようとしたの?!>


<呼吸薬の在庫が心配で……。これ以上呼吸薬の需要が伸びたら、供給が追い付かなくなる。それと、あの場所は結構狭いから、人が集まると、俺が探索できなくなるだろう? 卑怯な行為なのかな?>


<まあ、卑怯とは思わないけど、私達には教えてくれてもいいじゃない……。ところで、お兄ちゃんの探索が終わったらどうするの? アルカディアに情報を売ったらかなりの額をもらえるわよ。あ、もちろんゲーム内通貨よ>


<へえーーー。いや、クリムゾン達のクランと関わるのはちょっとやだなあ。あ、現実世界においては紅はいい奴なんだ。信用のおける友人だ。だけど、この世界のあいつとその仲間たちはなあ……。貴族?豪族?英雄気取り?みたいな雰囲気でちょっと……>


<それは分かる。ちなみに、私が得た情報はモフモフ同盟公式ブログで発信しているの>


<へえ、それはいいね。それじゃあ、俺はこの情報にまつわる権利を全て放棄して、君たちに譲ろう。その代わり、俺の探索が終わるまでは暫く黙っていて欲しい。といっても、俺も直にゴールにたどり着くと思う。だから、それほど待たせることは無いと思うよ>


<ゴール? ゾンビの倒し方を知ってるの?>


<NO。ゾンビエリアに行かずに地下水路の終着点を目指しているんだ。そして、ゾンビエリアはおそらくペナルティーエリア、つまり水路の迷路で間違った道を選んだ罰としてあそこで殺されるんだと思う>


<ああ、なるほど……。だからいかなる方法でも倒せなかったのかなあ。切っても叩いても効果なし。HP回復薬をかけても効果なし。塩をまいても効果なし。これは、『絶対に倒せない』ように設計してあるからなのかな?>


<かもな。とにかく、俺は探索を続けるよそれじゃあ>


<はーーい>


 やれやれ、リオカらが付けていたとは気が付かなかった。くそう。今度、仕返し代わりに、あの二人の後を付けてやる!

 ……そんなことをしたとしたら、傍から見たら可愛い女性をストーカーする怪しい人に見えるな。やめておこう。



「ぷはあ! はあ、はあ、はあ。いや、リアルで息苦しい訳じゃないのだけど」

 1番のマンホールの真下に到達した俺は自分でボケて自分でツッコミを入れる。誰にも見られていないからこそできるおバカな行動だな。それはともかく。


「おお! これは、祭壇? 綺麗…………」

 1番のマンホールの下、つまり地下水路の迷路を抜けた先には「祭壇」とも言うべき荘厳な雰囲気を放つ社があった。決して広く大きいとは言えない社。むしろ、小さいと表現したほうが良いであろう。それでも、威圧感を覚えてしまうのは社から放たれる七色の威光によるものであろうか。なんにせよ、見事な物である。これをデザインしたクリエイターはさぞかし優秀なデザイナーなのであろう。香には、是非これくらいのCGを作ってもらいたいものだ。


 しばらく、社の前で立ち尽くしていると、社から出る光が一瞬眩く光った。まぶし!思わず目を瞑ってしまった俺。次に目を開けると、そこにはエメラルドグリーンの龍が宙に浮かんでいた。


 ……え、もしかして、ボス戦?あ、もしかしなくても、俺の命はここまで?


 と思ったものの、龍から放たれたのはブレスではなく、祝福の言葉であった。


<よくぞ、ここまで参った。褒めて遣わそう>


「しゃ、喋った?!」


(なんじ)が社に捧げた物に応じた報酬を授けようではないか>


「あ、はい、ありがとうございます? 今から社に捧げればいいのですか?」

 俺は疑問を口にしたが、悲しいかな、龍はそれに返事をしない。きっと彼には(AI)が宿っていないのだろう。

 だが、俺の疑問は表示されたシステムメッセージによって解消したのであった。


<!重要メッセージ!>

社に捧げたものに特殊効果が付与された状態で返却されます。以降、このイベントを「儀式」と表記します。

一度の儀式で三つ以下の物を捧げることが許されます。

なお、この儀式を受けたプレイヤーが次の儀式を受けるには2日以上の間を空ける必要があります。

あなたが社に供えた物は『チューリップ』『魚肉加工食品』『魚肉加工食品』です。

この三つでよろしいですか?

(Yes/No)


 『チューリップ』『魚肉加工食品』『魚肉加工食品』とな? ああ、これって地上の祠に捧げたものじゃあないか! そうか、そうか。なーるほど。プレイ初日、初めて社に来た時に出会った住人の男の子が「この祠にお供え物をすると、神様が姿を現して、願い事を叶えてくれる」というのはこのイベントの伏線だったのか。じゃあ、あの子はこのイベントを知っていたのかな? いや、おそらく詳しくは教えられていなかったのではなかろうか。運営の考えてることを100%当てる事が出来るわけではないが、なんとなく俺はそう思ったのであった。


 ともかくどうしようか? 今、この三つを供物に選んで儀式を行うと明後日まで新たな物を受け取れない。けれども、もう一度地下水路を泳ぎたいかと問われたらNoだ。


「よし、ぐずぐずしても仕方がない! Yesだ!!」


<『チューリップ』『魚肉加工食品』『魚肉加工食品』を捧げた(なんじ)にはこれをやるとしよう! それでは、さらばである!!>


 龍は消え、代わりに三つのアイテムが社の前で浮遊しているのが目に入った。


いつも読んでいただきありがとうございます。

今後とも本作をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ