地下水路へのリベンジ
リオカとフラウが美味しそうに綿菓子をほおばる様子を視界の隅に置きながら、俺は綿菓子を作る作る。ひたすら作る。砂糖の在庫が尽きるまで作る。といっても、割りばしをセットしてハンドルを回すだけのお仕事だから、それほど大変ではない。30分後、砂糖を使い尽くした頃には1000本くらいの綿菓子が完成していた。
もっと作るべきだろうか。当日の売れ行きは不明だが、余ったら余ったで自分たちで消費すればいい。余分に作っておいて損はないだろう。
キャットフードはもう十分予備がある訳だし、明日からも引き続き綿菓子製作に取り組もうではないか。
「あ、でも……。地下水路も探検したいしなあ。どうしよう?」
ふと思いついたことを口に出す。いや、口に出してしまった。
「? お兄ちゃん、地下水路って?」
「セイさん、そんなものがあるのですか?」
フラウとリオカが俺の方をじっと見てくる。しまった。いらないことを言うんじゃなっかった。ただでさえ水中呼吸薬が不足している。二人を連れて行くとなると、俺の手持ちの呼吸薬だけでは足りない。申し訳ないけど、誤魔化そう。
「ななな、なにも言ってないのである……!」
「お兄ちゃん、めっちゃどもってる」
「セイさん、語尾がおかしくなってますよ」
うぐぅ!俺は嘘を付けない体質なんだよなあ。どうしようか……?
<フラウとリオカがこちらを睨んでいる>
>にげる
ごまかす
じはくする
うん、逃げよう!
「あ、悪い。俺、行く場所があるんだ。それじゃあ!」
「は?」「え?」
「さようならーー!!」
「逃げた?」「逃げたわね」「追う?」「追いましょう」
◆
スタタタ!俺は走る走る。いつもの濁流目指して猛ダッシュする。水中呼吸薬を飲み干しながら濁流に飛び込む。
前回地下に落とされた113番→89番の水路は避けようと思う。113番→112番の方を通る。
…
……
………
「あ、落とされなかった。次のマンホールは……111番か67番か34番の方向に進むことが出来る。最短距離で1番のマンホールに行くには34番のマンホール方面に進むべきだよな。でも……、やっぱり111番に進むべきなのかな?」
おそらく、この地下水路は地上にあるマンホールの番号順に進んでいかねばならないというギミックなんだと思う。そうだとすると、マンホールに番号を振っていたことの説明が付くと思うんだ。この予想が正しいとすると、前回落とされたゾンビが襲ってくるあの場所は「地下ダンジョン」ではなく「罰」ではないかと推測できる。順番を間違えたことに対する制裁。「ペナルティーエリア」とでも称するとするか。敢えて67番か34番の方向に進んで、落とされるかどうか確認したい気持ちもあるのだが、あいにく俺には度胸という物がない。今日の所は素直に111番に進むとしよう。
それにしても、長い。疲れる。ずっと寒い水中で泳いでいるから疲労感が半端じゃない。足をつってしまいそう。まあ、ゲーム内なのだから、そんなはずないのだけど。ステータス画面を開いても異常は見当たらない。
水中呼吸薬の在庫を気にしつつ。俺は水中を泳ぎ続けるのであった。
◆
~リオカ・フラウ視点~
「お兄ちゃんが川に飛び込んだ?!」
リオカとフラウはセイの後を追った。現実世界では二人よりも確実に足の速いセイであるが、ここはゲーム内。足の速さはステータスに依存する。ここで、スピードのステータスの初期値は錬金術師も召喚術師も同じなのだが、レベルアップボーナスなどを加味するとリオカやフラウの方が高いステータスを持っている。
だから、セイの尾行など二人にとっては造作もない事なのだ。
「確かに飛び込んだわね。いったいどうしたのかしら?地下水路とか言ってたし、この下に地下水路があるのかも」
「潜ってみる?」
「そうね……でも、なんとか手に入れた水中呼吸薬をこんなところで使ってもいいの?」
「あ……フラウちゃんに任せるわ」
「私は……正直気になってる」
「じゃあ、探検する?」
「そうね! それじゃあ……!」
二人は水中呼吸薬を飲みながら濁流へと身を投じた。
…
……
………
水中では、地上と同じように会話できない。はじめ、身振り手振りで会話していた二人だが、リオカがふと思いついたようにステータス画面を開く。そして、メッセージを起動して、フラウとのコミュニケーションを始めた。
「真っ暗ね」
「そうね」
「光の魔石、持ってる?」
「全部売っちゃったと思うけど……あ」
「もしかして?」
「あった。ついさっき倒した光属性のスライムから頂いたやつ。これで明かりを灯せるのよね? どうやるのか私は知らないのだけど」
「私、知ってるわ。『ライト』って唱えればいいはず」
「りょか」
光源を得た二人は地下水路を進んでいく。スイスイと泳ぐこと十数分。初めての分かれ道に差し掛かった。
「どっちに進む?」
「どっちでも。取り敢えず……こっちでどう?」
「おーけー」
…
……
………
「はあ、はあ。ここどこ?」
「さ、さあ? 死に戻った……訳では無さそうね」
残念ながら不正解の道を選んでしまった二人はペナルティーエリアに落とされていた。すなわち、彼女たちの前にもゾンビが現れる訳で……。
「ぎゃーー! ゾンビ! 噛まれたら私もゾンビになっちゃうーーー!」
「落ち着いて、リオカ。普通にモンスターよ。倒しましょう」
「あ、そっか。アンデット系のモンスターはRPGの定番よね。倒しましょうか。『召喚』!」
「『召喚』!」
すぐに二人の目からは動揺が消え、攻撃体勢を整える。流石は戦闘職。セイのように逃げ回るのではなく、戦おうとする。だが……。
「切っても切っても再生してくるんですけど!!」
「というか、HPバーが全く減少してなくない?」
「どうする?」
「どうしようもないわね。回復薬はもったいないから飲まないで。今残っているHPが尽きるまでに突破口を見つけれなかったら大人しく死に戻りましょう」
「了解」
流石はゾンビの名を冠するモンスター。普通の攻撃では倒すことが出来ないようで。二人は死に戻ってしまった。
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