表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/147

スキル解放

読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

 町の外れにいかにも運営が「探索してみろや!」と思って作ったであろう道が入り組んでいる地区を発見した。探索は全然苦痛ではなかった。例えば道の横を流れる用水路をのぞき込んだら魚が泳いでいたり、鶏っぽい生き物を飼っている家があったりと色々な楽しみが用意されていた。そして、探索を続ける事1時間。


「なんだこれは?」


「さあ?」「(ほこら)みたいね」


 俺たち三人はちょっとした広場に出た。その中央には(ほこら)のようなものが(まつ)られている。興味深いのは、祠の上には十字架ではなくYの字の形をしたシンボルが飾られていたことだ。


「あれ、もしかして旅人さん?」


 突然、後ろから声をかけられちょっとびっくりしてしまった。振り返ると、10歳くらいの少年がこちらに手を振っている。

 俺たちの事を「旅人さん」と呼んだことから、この子はNPCなのだろう。NPCとPCという表現を使わずに、「住人」と「旅人」と呼んでいるあたり、運営の『ゲームではなくあくまで異世界』という思いが読み取れる。



「ああ、そうだよ。もしかして、ここの出身なのかな?」


「そうだぜ!!ゲートシティ生まれ、ゲートシティ育ちの10歳だ!それより、その祠に興味があるんだろう?」


「ああ、何か知っているか?」


「一説では、この祠にお供え物をすると、神様が姿を現して、願い事を叶えてくれるとか言われてるんだ。まあ、都市伝説みたいなものだけどね。俺も色々お供えしているけど、神様が出てきた事なんてないよ」


「へー。お供え物ねえ……せっかくだし何か供えてみようかな。ねえ、お兄ちゃん」


「そうだな……お金がもったいないけど、ちょっと気になるよな。」


「お供え物するのか、兄ちゃん達?それなら、家に来てよ!!俺の母ちゃんが花屋さんをやってるんだ」


「どうする?」


「二人に任せるわ」「お兄ちゃんに任せるわ」


「それじゃあ、案内してもらおうかな?」


「やった! じゃあ、ついてきて」


 男の子に案内され、花屋さんに着いた。


「母ちゃん!! お客さん連れてきたよ!」


「あらあら、いらっしゃい。どうぞ、ゆっくり見ていってね」


 様々な花が並んでいる。チューリップ・ひまわり・カーネーションなどなど。あれ、でも……。


「色々な花があるのに、鑑定結果は全部『花』になってしまうんだな」


 鑑定とは、プレイヤー全員が持っているスキルで、様々な物について知るできる。例えば剣を鑑定したらそのバフ効果や耐久値が分かるし、モンスターを鑑定したら弱点属性が分かったりする。


「ああ、それは『植物図鑑』ってスキルを持っていないからだと思うわ」


「『植物図鑑』?」


「ええ、スキル『鑑定』を使った際に、植物の情報が追加されるようになるサブスキルよ。あなた達も取得してみることをお勧めするわ」


<スキル『植物図鑑』の情報の入手に成功しました。スキル『植物図鑑』が解放されます>


「あ、スキル『植物図鑑』が解放された」


「私もよ。ボーナスポイント1消費で獲得できるスキルみたいね。まあ、剣士の私は使わないかな……」


「テイマーのあたしも必要ないスキルね……。お兄ちゃんは取っておいてもいいんじゃない?」


「そうだな。また検討してみるよ。スキルの情報ありがとう。感謝の意も込めて何か買っていくよ。そうだなあ……このチューリップ・ひまわり・カーネーションを一本ずつ下さい」


「はいよ。それじゃあ全部で150ゴールドね」


 初期金額は30万ゴールドなので、微々たる出費だ。問題なかろう。そして、無事に買い物が終わった。


「お買い上げありがとうございました~また来てくださいね~」「また来てくれよな!」


 元気に手を振る男の子の住人に手を振り返しつつ、俺達はその場を去った。



「お供えしてみるか……」


「そうね」


「一人一本供えようぜ。どの花がいいとかある?」


「あたし、ひまわりがいい!!」


「じゃあ、私はカーネーションで」


「それじゃあ俺がチューリップかな」


 三人がそれぞれ祠にお供え物をした。供えた花は光の粒子となって祠に吸収された。それ以外、特に変わったことは無かった。


「何も起こらなかったわね」


「そうだね」


「だな。もしかすると、祠とか供え物とかがメインではなくて、『植物図鑑』を解放することがメインなのかもしれないな」


「かもしれないわね」


「うーん、そうなると二人には申し訳ないことをしたなあ。戦闘職の二人には何の利益にもならない探索になってしまったね」


「気にしないで、私もこうして時間をつぶすことが出来て楽しかったわ」


「あたしも全然気にしてないよ~。それに、お姉ちゃんと色々話せて楽しかった!」


「ああ、リオカちゃんはええ子やなあ!!」


 七瀬が感極まった表情をしている。七瀬のこんな表情を見ることが出来たことがこの探索の一番の収穫だったかもしれない。



 二人は、再度ギルドに行くようだ。ゲーム開始から2時間ほど経っているので少しは人が減っただろうからな。そういう訳で、俺はまた錬金ギルド前のベンチで座っている。


 自分のステータス画面を開いて、先ほど解放されたスキルを眺めている。


『植物図鑑』:サブスキル:(1):植物・植物モンスターを『鑑定』した際、より詳細なことが分かるようになる。


 さて、AWT用語を確認していこう。

 サブスキルとはもともとあるスキルの効果を上昇させたりするタイプのスキルの事を指す。今回の場合、『植物図鑑』というスキルは『鑑定』スキルをパワーアップさせるサブスキルであるという訳だ。

 (1)と書いてあるのはスキルを獲得するのに消費するボーナスポイントを指す。プレイヤーは無限にスキルを獲得できるのではなく、所持しているボーナスポイントを消費することによってスキルを獲得するのだ。例えばログインしたての俺の持っているボーナスポイントは10だ。すなわち、スキルを最大10個新たに取得できるという訳だ。もちろん、スキルによっては獲得にボーナスポイントを2以上消費するスキルもあるので絶対に10個取得できる訳ではないな。レアなスキルはボーナスポイントを10以上必要とするらしいしな。


 そういう訳で、スキルが解放されたからと言って、むやみやたらとそのスキルを入手するべきではないのだ。

 さて、では錬金術師にとって、『植物図鑑』は取得するべきスキルなのか否か……。一人で悩んでも分からないな。錬金術の先人に聞いてみるか!






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 錬金は薬を作るから、図鑑系は~必要だよ~ 壁]_・)セイは橋を叩いても渡らない系?かも~ 錬金は橋を叩く前に渡りながら叩く職~(笑)←なんだそれ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ