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町の見物

「ところで、セイとリオカちゃんはこれからどうするの? 二人でパーティー組んでモンスターの討伐に行くとか?」


「いいや、今日は討伐はしないつもりだ。特に香は初心者講座を受けれてないからな。今から戦いに行くのは良くないんだ。マルベーシは初心者講座受けれたのか? 剣士ってことは相当人気のジョブだろ? 混雑してたんじゃあないか?」


「ええ、プレイヤーがごった返してて近づけそうになかったわ。だから、この町をのんびり散歩でもしようかな~って思ってね。それで人が少なそうなところを歩いていたらセイを見つけたって訳よ」


「なるほどな。実は香と俺もそう考えていたんだ。初心者講座を受けられたとしても、初心者のレベルアップ場はごった返しているだろうしな。今日は面白い物でも探そうかな~って思ってたところだよ。もしよかったら一緒に来るか? 香も良いよな?」


「ええ、もちろん。よろしくお願いしますね、マルベーシさん」


「もっと砕けた口調でいいわよ。それに、マルベーシさんなんて堅苦しく呼ばなくていいわよ。そうね……お姉ちゃんって呼んでちょうだい!」


「は、はい。よろしくね、お姉ちゃん!」


「いいわーー! 私も可愛い妹が欲しかったの~。セイ、あなたの妹私に譲ってくれない?」


「だめーだ」


 七瀬が妹タイプに弱いとは知らなかった。今度から、七瀬に何かを頼むときは香を介して頼むことにしよう。それはともかく、俺たち3人は仲良く散策に出かけることにしたのだった。


「おい、我は?」


「クリムゾンは駄目よ」「出来れば三人で行動したいです」「お前は駄目だ」


「そ、そんな全力で否定しなくても……。そんな風にのけ者にしなくてもいいじゃあないか!」


「でもなあ、可愛い妹が嫌がっているんだ。兄としては当然の判断だろう? それにお前、なんかゲーム友達とパーティー組んでどうたらって言ってなかったか?」


「あ、そうだった。サファイヤ兄貴を待たせるわけにはいかない! それじゃあ、我は撤収するぜ! アディオ~ス!!」


 サファイヤ兄貴って誰だよ、ほんと。あいつは一人っ子だから実の兄貴ではないんだろうが……。まあ、邪魔者が去ったという事で、今度こそ散策開始とするか!



「それじゃあ、どこに向かおうか? というか、どこなら人が居ないだろう?」


「うーん、剣士ギルド本部・狩人ギルド本部・魔術師ギルド本部は全て西側に偏ってて、初心者が戦闘練習に勤しむ『西の草原』も名前の通り西側に位置しているから、町の東側を散策しましょう」


「そうだな」


 中世ヨーロッパ風の街並みであるこの『ゲートシティ』は歩いているだけでも楽しい。道の端の露店では、様々な食べ物が売っており、においを嗅いでいるだけでも楽しい(※元からある程度の所持金が与えられているのだが、それは装備を整えたりするのに使うべきだ。嗜好品はお金に余裕が出てきてからのお楽しみだ)。また、ただの民家であってもテラスに飾ってある植木鉢には色とりどりの花が咲いており、観光する価値があるのだ。


 東へ東へと進んでいくと、徐々に道が入り組んできた。


「なんか、寂しい感じの所に来ちゃったわね」


「そうだね。他はきっちり区画整備されているのに、なんでだろう?」


「俺が思うに、これは運営が用意した迷路じゃあないかな?」


「うーん、単純に町の中心街から外れた所はこんな風になってるってだけじゃあない?」


「私もお姉ちゃんに賛成。まあ、お兄ちゃんの言わんとしてることも分かるけどね。こういう複雑な道を抜けた先に秘密の場所が……!! 的なノリってゲーム製作者からしてみたらあこがれるよね~。でも、そういうのを作るとしたら流石に第二第三の町じゃあないかな? いくら何でも始まりの町に仕掛けを作ったりはしないと思うよ」


「あはは、流石ゲーム製作で儲けている大学生兄妹なだけあるわね。やっぱり、二人もゲームを作る時はイースターエッグを仕込んだりするの?」


「しないかな。今の所、俺たちが作っているゲームはそんなに壮大な物じゃあないから。でも、いつかすごいゲームを作った時にはイースターエッグを仕込みたいと思っているよ」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん、イースターエッグって何?」


「イースターエッグっていうのはソフトウェアについている本来必要ない機能の事だよ。例えば、インターネットに繋がっていない状況下で某有名検索エンジンを起動したら、ミニゲームが出来るようになっているだろう? ああいう『ユーザーを楽しませるためだけの機能』の事をイースターエッグって言うんだ」


「へえー。初めて知った……」


「それにしても、どうする? こんなに複雑な道なら適当に歩いたら堂々巡りになってしまいそうよ。地図を入手してから来ることにしましょうか? それとも、ぶらぶら歩く?」


「私は一度帰った方がいいと思うよ、お姉ちゃん。お兄ちゃんはどう思う?」


「うーん。どうせ時間はあるし散策したいなあ。それに、地図は売ってないんじゃあないかな? 運営側としては地図を使わずにここを歩いてほしいみたいだしね」


「うん? どうしてそんなことが分かるの?」


「地面を見てみてよ。ほら。分かれ道がある場所には必ずマンホールがあって、そのマンホールの一つ一つに番号が振られている。これって『探索してみろや!!』ってことじゃあないかな?」


「ほんとだ。マンホールがあるわね。よくこんなのに気が付いたね」


「いやあ、偶然だけどな」


「じゃあ、番号をメモって歩いていく事にする?」


「そうだな。メニューからメモ帳機能があるからそれを使おう。それと、歩き方は深さ優先探索法を使えばいいだろう」


「深さ優先探索法?」


「迷路探索を行うプログラムの事だよ。DFSとかって言われることもあるね。ほら、右手を壁につけて歩けばいつかゴールに行き着くって言われることがあるだろう? あれと似た感じだ」


「へえー。それじゃあ、せっかくだし迷路探索やってみましょうか」


「おう!」「ええ!」





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今後とも本作品をよろしくお願いします。

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