キャットフード店の準備2
いつも読んでいただきありがとうございます。
ちょっと短めです(汗)
ローズが……というか運営が正式に旅人による露店出店を認めてくれたようだ。クリムゾンはアルカディアの活動を道の端っこ等の邪魔にならない所で行っていたが、そんな彼らにとっても朗報となるのではなかろうか?「中古の武器を格安で売る」みたいな適当な理由を付けて露店を開き、その前で集会をするみたいなことが出来そうだ。クリムゾンに後で教えてやろう。
さてさて、俺はと言うと、キャットフード店の開店に向けて魚の大量入手を行わねばいけない。今日の午前中は川辺で過ごしましょうか!
自分が店を開いて大繁盛している姿を妄想しながら、スキップで南区に向かった。
◆
「ふえ~。飽きた。ボーっとしよう……」
大事な作業であると頭の中で理解していても、人間には集中力の限界という物がある。時折休憩を挟むこともまた効率的な作業の為なのだ。
と言い訳をしながら、のどかな田園風景に目を馳せる。靴を脱いで裸足になり、足を水につける。ああ~、冷たくて気持ちいい……。ここが仮想現実であると忘れてしまいそうだ。
そうやってボーッとしていると人の足音が聞こえてきた。住人の誰かかな?
「あら、また会いましたね。えっと、セイさんでしたっけ?」
名前を呼ばれてちょっとびっくりした俺は肩をビクンっと震わせてから声のする方を見る。
「ああ!どうもです。はい、セイで合ってます。えっと、ひまわりさん……ですよね?」
「はい。カタカナ名が多い中で『ひまわり』って名前にしたのは間違いだったかなあと最近悩んでいる鍛冶職人のひまわりです」
鍛冶職人のひまわりさんがそこに立っていた。うん、確かに。AWTはその名の通り異世界物のゲームだからか、プレイヤー名をカタカナ表記にしている人が多い。プレイヤー名をあえて平仮名で「ひまわり」と表記しているのは何故だろうと疑問に感じていたが、やっぱり本人も違和感を感じているのね。
もっとも、本人は「悩んでいる」と口にしているが、その顔は朗らかな笑顔で飾られており、本気で悩んでいる様子では無さそうだが。
「ところで、ひまわりさんは何故ここに? 散歩ですか?」
「ええ。疲れた時はここを散歩するんです。こういう……何と言えばいいか……牧歌的?な雰囲気が好きなんで。セイさんはまた魚を捕まえに?」
「ああ。ここでとれる魚って猫の大好物みたいで。聞いた話だと、魚型モンスターの肉なんかよりも好きだそうで」
「へえーー!」
「で、一時間ほどずっと作業していたんですが、疲れちゃって。今は休憩中です。俺もこうしてボーっと田圃とか眺めるのが好きなので」
「いいですよねえ、こういう雰囲気」
「ですね……」
しばらく、俺たちは無言で景色を眺めていた。
…
……
………
数分後
「あ、そういえば、チャクラム使ってみましたか? いかがでした?」
唐突にそう聞かれた。うぐっ!お母さんに成績表見せなさいと言われた子供のような気分だ。
「え、えっとですね……。使わせて頂きました」
「ふむふむ」
「妹もこのゲームをやっていまして、彼女は狩人ではないですが、『この武器使いやすい』との評価でした。実際、百発百中でしたね」
「へえー、そう言ってもらえると嬉しいです!! 実は、今後いっぱい作って、自分のお店でも開こうと思うんです!!」
「ただ……ですね……その……」
「はい。なんでしょう? もしかして、問題でも?」
「いえ、チャクラムは先ほど言ったようにすごくいい出来でしたが……。えっと。俺には使いこなせませんでした」
「あ、そ、そうなんですね」
「すぐ近くで道草食ってるスライムに当てる事さえできませんでした……」
正確には数百回に一回は当たるんだけど。
「それは……えっと……」
「俺には武器を持つのなんてまだまだ早かったみたいです」
「あ、そういえば、錬金術師でしたものね。戦闘にとことん向かないっていう」
「ええ。それで……このチャクラムなのですか……。その……俺が持っているのはもったいないなあって思って……」
「ああ、あれですね。『宝の持ち腐れ』ってやつですね!」
「はい。それで、使わない俺が持っているのは失礼だよなあと思って。ひまわりさんにお返ししたいなあと思って。いや、それはそれで失礼なのは分かっているのですが」
「あ、あはは。そうなんですね。気にしませんよ」
ひまわりさんは苦笑しながら、返したチャクラムを受け取ってくれた。うーん、やっぱり申し訳ないなあ……。
「ちなみに、何か欲しい武器ありますか? なにか欲しい物があれば、作りますよ! チャクラムの代わりというか」
「ええ?! いやいや、そんなの悪いですよ! 申し訳なさすぎます!!」
「いえいえ、いえいえ。遠慮せずに」
「えーと、あ、じゃあ。ちょっと欲しい物があるので、それをちょっと高めで購入させて頂くという事で! どうです?」
オーダーメイドしてもらう分、高額になるのは当然だものね。




