キャットフード店の準備1
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ローズが商業ギルドの人と相談してくれている間、俺は手持ち無沙汰な訳で。することがないので取り敢えず回復薬の増産を行うことにした。獣人っぽい見た目の受付嬢に話を聞くとHP微回復薬(大)の需要が高まっていると聞いたので、素直にそれに従う事にする。
その日はそんな感じで何もなく終わった……。いや、一つだけどうでもいい発見があった。インベントリに仕舞ってあるヒールウィード・魚の切り身・各種回復薬などは全て「アイテム」という項目に分類される。そしてその項目を見ていると、意図せず入っていたアイテムがあった。それが「ゴミ」である。一瞬「あれ、俺はいつの間に町のゴミ拾いをしたのだろう」と思ったが、すぐにその出所が分かった。これは間違った配置で錬金した場合に出来るアイテムだ。
この「ゴミ」だが、見た目は煤のような感じだ。こんなアイテム持っていても仕方がないので早く捨てようと思ったのだが、ポイ捨てするわけにもいかない。そこで思いついたのが以下のレシピ(?)だ。
ゴゴゴ
ゴゴゴ→(レシピの不在により)ゴミが出来る。
ゴゴゴ
ゴ:ゴミ
ゴミといってもアイテムの一種なのだから、錬金術の材料になり得る。そこで上のような配置で『錬金』してみたのだ。当然、ゴミ×9で出来るアイテムなど存在しないので、ゴミが完成する。これで手持ちのゴミを減らすことが出来る!
……いまさらだが、質量保存の法則はどこに行ったのかね?まあ、ゲームの世界に正確性を求めてはいけないか。
◆
次の日、錬金ギルド本部に顔を出すと、ローズが待ち構えていた。
「やあ、来たねセイ君」
「ああ、来たぞ」
「結果だけ言うと、許可が下りたよ。詳しく話すと、メタ発言がいっぱい出てくるけど、聞きたい?」
「えーと、聞いておきます」
「分かった。このゲームの最終目的はこの世界を探検し尽くすことよね。もちろん、ソロで活動する人もいるでしょうけど、やっぱり基本はパーティーを組むものだわ」
「そうですよね。遠距離攻撃・近距離攻撃・魔法攻撃・ディフェンダーなどなど」
「ええ。でも運営が当初想定していたのはそうではないの」
「?」
「このゲームのPVは見た?」
「はい」
「その中で、鍛冶職人から剣を、錬金術師から薬品を受け取った剣士が戦うシーンがあったと思うのだけど、あれが一つのパーティーってつもりだったのよね」
「ふむ……はい?」
「生産職・戦闘職が一緒パーティーを組むって事」
「つまり、各パーティーに専属の鍛冶職人・錬金術師がいるって事?」
「そうそう。そのつもりだったのよね。実際ほら、アルカディアとかいう変な組織が出来つつあるじゃん。あのクランは専属の鍛冶職人を持っていた気がするわ」
「まじか」
「ええ。その鍛冶職人は熟練度を上げるために多大なプレイ時間と資金を割いていたから、彼の作る武器は住人の鍛冶職人が作るバフ付き武器と大差ない物を作ることが出来るわ。あのクランは彼の技術を独占する代わりに、彼に多大な資金を投資したってわけよ」
彼って事は、ひまわりさんでは無いのかな。良かった。いや、何が良かったのかは分からないけど。
「なるほど。そして、それこそが運営の想定するこの世界の攻略法だったと」
「まあね。だから、旅人が露店を開くって状況を想定していなかったのよ」
「なんか、運営も色々苦労しているんですね……」
「ええ、プログラム自体にはバグはほぼ無いことが確認されているけど、プレイヤーがどんな行動に出るかは不透明だったからね……。ほら、法律でも、時代の流れによって更新が必要でしょ。あんな感じね」
「なるほど……。というか、ローズって運営にすごい詳しいけど、全ての住人がこんな感じなのか?」
「え。いや。違うわ。私はギルドマスターだからね。色々あるの!!」
「あ、スマン。これ以上は良くないか」
「ゴメンゴメン。色々あってね」
ものすごく気になるが、深堀するのは辞めておこう。にしても、運営側も錬金術師(というか生産職)の不足に頭を悩ませているのだろうな。お疲れ様です。
「あ、そうそう。旅人による露店出店の許可が下りるのは今晩のアップデート後になるからそのつもりで。それから、これは忠告になるけど……」
「なに?」
「レシピの独占とそれによる商売は辞めたほうがいいわ。露店の出店が可能という事は、前にも言ったような『暴利を貪ろうとするような商売』が出来ちゃうわけで。それをやると他の錬金術師がこぞってあなたの身辺調査をし出すわ」
「は、はあ」
「何を買っているかとかの情報から、レシピを推察して、それでもってあなたが秘蔵しているレシピを暴くことだってできる。そうしたら、せっかくあなたが最初に見つけたレシピでも他の誰かに利権が行ってしまうかもしれないわ」
「ああ、そういうことね。てっきり、『おいてめえ、ちょーっとついて来てもらおうか』とか言われて路地裏に引きずり込まれてそこで拷問されるのかと」
「そんなことするわけないでしょう……」
「ともかく、レシピの独占は基本的にはしないつもりだよ。仮にレシピを独占する際は個人利用の範疇で行うよ。忠告ありがとう」
「いえいえ。セイが他の錬金術師から妬まれることになったら私としても悲しいから。そう言ってくれて助かるわ」
◆
「ところで……。」
ローズと別れ、錬金ギルド本部を出た時、俺はふと独り言ちる。
「キャットフードも十分、ヤバい情報だよなあ……。俺が独占販売するのってマズいんじゃあないかな……?ま、いっか」
トラブルに巻き込まれそうになったら、包み隠さず情報を打ち明ければいいか。フラウとリオカのブログに情報を公開するって方法もあるしね。




