自分の役割
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チャクラムを試してみたその日、俺は如何に自分が戦闘に向かないかを知った。だってさあ。リオカが余裕で当てることが出来る的に俺は1%未満の確率でしか当てられないと知ってしまったんだ……。いくら以前より諦めていたと言っても、やっぱり悔しい。
リオカに「このチャクラム、譲ろうか?」と聞いてみたが、今は必要ないと伝えられた。だから、現在チャクラムは俺が持っているのだが……。宝の持ち腐れとはこの事だ。
うーん、俺のインベントリに放り込まれているよりは、ひまわりさんに返して彼女に使ってもらった方がこのチャクラムの為になるのではなかろうか?
でも「すみません、俺には使いこなせません!返します!」って言うのはやっぱり失礼だと思うし、そもそもチャクラムを返すためだけにひまわりさんに連絡するのは申し訳なさすぎる。うーん、どうしようか?まあ、後で考えよう……。
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突然だが、自分で作った商品であるキャットフード(仮称)を本格的に販売したいと考えている。これはもちろんお金の為という側面もあるが、むしろ「フラウへの恩返しのため」という意味合いが強い。リオカは毎日の食事の準備という形で貸しを作っているから多少迷惑をかけても何とも思わないのだが、フラウにはそうもいかない。フラウには迷惑をかけてばっかりだ。
何らかの形でフラウを喜ばせる方法を考えた結果、キャットフードの販売を実現させたいと思ったのだ。実は、フラウとリオカは召喚術師が交流するブログの設立を計画していると二人から聞いたのだ。そこに記す話題の一つとして「キャットフード」を乗せてもらいたいと考えている。
ともかく、俺が露店を開くことが出来るのか確認する必要がある。ひとまず、錬金ギルド本部に行ってローズに相談してみよう。ローズは錬金ギルドのギルドマスターなだけあって、顔が広い。彼女の紹介で商業ギルドにお願いしたら、許可が下りそうな気がする。
「……って思ったんだけど、どう?」
「へえー、キャットフードの販売ねえ……。また変わった商売を思いつくわねえ……。旅人が沢山いるからこそ成り立つ商売ね」
「あ、たしか召喚術師の住人はあまり居ないんでしたっけ?」
「ええ、そうなの。だから今まで召喚獣用の食べ物を売るなんて商売が行われていなかったんだけど……。まあ、面白そうだし、協力してあげるわ」
「本当ですか!」
「ええ、でも許可が下りなくても怒らないでね。確か現時点では旅人が露店を開くことは禁止だったと思うから……」
「え、あ。やっぱりそうだったんですか」
ドルフさんも「旅人でも(商業ギルドに)登録できるんだっけ」と疑問を浮かべていた。その時点で嫌な予感はしていたけど……。ローズから教えられ改めて問題の大きさを実感した。
「私の方から、商業ギルドの子にお願いしたらある程度融通利かしてくれると思うわ。そもそも、露店を開けないとなると生産職に就いた旅人が不遇すぎるわ。私もそれを問題視していたのよね……」
という訳で、ローズは快く(?)お願いを聞いてくれた。もう俺に出来ることは無い。ローズの説得が通ることを期待しよう。
……あれ、これをHP回復薬(大)の時にお願いしていれば、俺は露店で大儲けできたのでは?あの時、ローズが「買取人の伝手を持っていないのなら、レシピは公開するほうがいい」って言うから俺はレシピを公開したんだけど……。もしかして、はめられた?
◆
~~ローズ視点~~
「ふう、久々の仕事ね……。仕事という程のことでもないけど」
「あの……良かったんですか、本当に?」
私の補佐役の子(名目は錬金ギルドの受付嬢・実態は雑用係)が疑問を呈する。
「うーん。錬金術で作られた回復薬とか耐異常状態薬なんかを独占販売されると厄介だけど、料理なら問題ないでしょう……。そんなことないかな?」
「そうですね……。言わんとしている事は分かります。確かに、料理はこの世界においてあくまで嗜好品。攻略に必要なものではないです。だから、露店での販売も大きな問題とはならないでしょう。でも、今回、料理を露店で売ることを許可してしまったら、調子に乗って攻略に重要なアイテムも独占しかねませんよ」
「うーん、まあそうなんだけどねえ……。でも、仮にルールが変わっても、影響があるのは一人だけよ。彼一人に自由を与えた所で、さして変わらないわよ」
「そうとは言い切れませんよ。錬金術師の露店を許可したら、鍛冶職人になった旅人にも当然露店の設置を許可せねばなりません」
「言われてみればそうよね……。どうしましょう?」
「とりあえず、ギルドマスターで会議を開いた方が良さそうね……」
「そうね」
この時点で、私達は料理に秘められた効果、すなわち召喚獣の回復効果、の存在を知らなかったのだ。だから、彼の頼みをさほど大事には捉えていなかった。痛恨のミスだったと、後から私は後悔するのだった。




