奮闘(スライム相手だけど)
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「ところで、そのチャクラムはどこで手に入れたものなんですか?」
とフラウが疑問を口にする。どこの武器屋にも売っていないであろう品だからね、疑問に思って当然だろう。
「偶然知り合った鍛冶職人の子から頂いたんだ」
「へえーー、私も作ってもらえますかね?」
「どうだろう? 今の所は非売品って言ってたけど、客が増えるのを嫌がることもないとは思う。うーん、でも多くの人が買い求めるようになるとそれはそれで面倒だろうし……。というか、フラウも遠距離攻撃の手段が欲しい物なのか?」
「そうですね……。うーん? よく考えたらあまり必要ないかもしれません。というのも、召喚術師にとって攻撃手段は召喚獣であり、私達はディフェンダーみたいなものですからね」
「なるほど。ところで、今日の戦闘についてなんだけど……」
今日はこのチャクラムの使い勝手を調べてみたくてセーフティーエリアの外に向かうのだ。今までとは違って今日は俺も戦うつもりなんだ。
そうはいっても、攻撃力も防御力もスピードも優れていない俺にとって、近距離での戦闘は命とりである(まあ、リオカから譲り受けた防具のおかげで、ワンパンはされないと思うが)。
そこで、モンスターのヘイトがこちらに向く前に俺がチャクラムで先制攻撃をし、外してしまった場合は護衛の二人が守るという流れにして頂きたいと考えている。なんとも身勝手なお願いなのだが、どうか頼む!
そんな風に二人にお願いすると、快く了承してくれた。魚の件で頑張った甲斐があったかな?なんにせよ、二人には感謝だ。
「あ、あそこにスライムがいますね!」
「ほんとだ! お兄ちゃん、早速やっちゃえ!」
「ああ。それ!!」
フライイングディスクの要領で投げる!うーん?
「あ、はずれた」「はずれたね」「はずれましたね」
スライムがいる地点よりも手前にボスッと落ちてしまった。わざわざ取りに行かなくてもちょっと経てば自動的にインベントリに送還されるらしいが、連続攻撃できるほど瞬時に手元に戻ってくるという訳ではない。
つまり、俺は万策尽きた状態だ。後は任せた!!
「ポヨンポヨン!!」(怒ったスライムが突進してきた)
「久々にスライムと戦うわね。やっちゃって、タマ」
「フシャー! ガリ!!」(タマがひっかいた。流石猫だ)
スライムはポリゴンとなって消えた。
「うーん、難しいなあ。意外と遠くに飛ばない。悪いけど、もう暫く付き合ってくれ、お願いします」
そんなわけで、20分ほど頑張った。俺は頑張った。本当に頑張ったんだ。でも一向に当たらない。というか飛距離が出ない。こんなに難しい物なのか……!! ますますあの鍛冶職人の子(ヒマワリちゃんだっけ?)がすごいんだと実感する。
「すごく難しそうね……私も試してみていい?」
「おお、いいぞ。マジで難しいぞ」
「それは見てたら分かるけど……。よし、あのスライム目がけてそりゃあ!!」
リオカがスライムに攻撃を仕掛ける。勢いよく投げ放たれたチャクラムは一直線に飛び、スライムに命中した。
「は?」「やった!」「おお!」
左から順に俺、リオカ、フラウのセリフだ。
「いやいや、なんで!! お前、実は俺に隠れてチャクラムの練習してたな!!」
「そんなわけないよ?!」
「ま、まあ。まぐれかもしれませんし。リオカちゃん、もう一回やってみたら?」
「そうね、そりゃあ!!」
勢いよくチャクラムが飛び、また一匹、スライムがドロップアイテムと化した。
「「「……」」」
妹が優秀過ぎて、俺は悲しいよ……。ははは。はあ。
「お兄ちゃん。練習あるのみだよ。頑張って」
妹に励まされながら、もう少し練習を続けることにしたのだった。
◆
<ベース経験値が1増加しました。これにより、ベースレベルが0→1になりました。なお、今後このメッセージはログに表示されるのみとなります。>
「やったぞ!! ついに、ついにスライムを倒したぞ!! ひゃっはーー!!」
時間にして約1時間、チャクラムを投げる事数百回。ついに俺の攻撃がスライムを直撃した。
俺のステータスではスライムをワンパンすることが出来るはずもなく、残りはリオカの召喚獣のラビリンスがやってくれたが、ありがたいことにベース経験値1を取得できたようだ。おかげで俺のベースレベルが1に上がった。HP、MPが20も増えた。非戦闘職の俺にとってはどうでもいい事なんだけどね。
「ともかく、今日はありがとう。本当に助かった」
「いえいえ、全然平気です」
「そうよ!! お兄ちゃんの醜態……じゃなくて頑張ってるところを見れて良かったよ!」
「妹よ。俺とてプライドが無い訳ではないのだ。これ以上俺の心を砕かないでくれ……」
「ゴメンゴメン」
結論。俺はやっぱり戦闘には向かないのだ。




