チャクラムの達人
いつも読んでいただきありがとうございます。もうすぐ10万字に届きそうです。感慨深いです……
ログインしました!今日はまず、串焼き屋のおっちゃんことドルフ=ドーバさんに色々とお話を聞こうと思っている。という訳でレッツゴー!
「串焼き2本ちょーだいー」
「あいよ!! 200ゴールドな!」
「ほい、送金っと」
「まいど。で、何が聞きたいんだ?」
「ほえ?」
「え、いや。お前さんが来たって事は、何か相談したいことがあるんじゃあないのか?」
「いやまあそうなんだが……。見透かされててちょっとびっくりした。というか、もしかして迷惑だったか?」
「いやいや、大丈夫だ。後ろに客がつかえている時ならいざ知らず、普通の時ならいくらでも世間話に興じる時間はあるからな。で、何が聞きたい?」
「まずは、これを見て頂きたい」
「ふむ。ランク2の料理か。ギリギリ売り物にならんな」
「ランク?」
俺が取り出したのはもちろんキャットフードこと魚肉団子だ。それを鑑定しても『魚肉加工食品』と表示されるだけで、ランクなんてどこにも載っていない。
「ああ、ランクってのは『料理人』のスキルを持っている人にしか見えないパラメーターだ。一言で言うと、『どれくらい美味しいか』を判定する基準となる」
「はあ。でも美味しさの基準なんて人によりけりだと思うが? どうなっているんだろう? 万人受けするかどうかみたいな?」
「まあ、そう思って大丈夫だと思う。実際、ランクが低くても美味しい食べ物は存在する」
「ふーん。なるほどねえ。ちなみに、この中だとランクに差はある?」
「ええっと、この四つはランクが2だけど、こっちの二つはランクが3だな。ランク3ならギリギリ売り物になるレベルだな」
「なるほどねえ。確かに、俺の感触とも一致している」
ランク3をもらったのは『塩普通(ヒールウィード入り)』と『塩多目(ヒールウィード入り)』である。少なくとも俺の主観では、ヒールウィード入りは臭みが少なく感じたし塩は多い方が好みに合っていた。そして、実際に査定してもらった結果もそれらがランク3。ランクと美味しさは確かに比例しているように思われる。
「でもまあ、売り物にするならもう少し品質を上げるべきだな!」
「それに関しては全面的に同意だな。少なくとも、人間が食べる分としてこれを提供するのはいけないと思う」
「ほう?では、召喚獣の餌として売るというのかい?」
「おう、察しが良いな。まあそのつもりだ」
「ははは、そんなわけねえよな……は?」
「いや、だから、ペット用に売り出そうと思っている」
「本気で?」
「本気で」
「なるほど、なるほど。旅人さんが来るまでは召喚術師なんてごく一部の人しかついていないジョブだったからなあ。その子らの為にわざわざ露店を開くなんてしてなかったけど、確かに今ならそれもありなのか? ふーむ」
「まあ、実際にやるかどうかは決まっていない。材料が安定して入手可能かどうか不明だからな」
「何を使ってるんだ? ああ、言いたくないなら言わなくていいが」
「あっちの清流で泳いでいる魚」
「ほえ~。なるほど、なるほど。モンスターだったらギルドで買えるけど、そうでないならなあ。うーん」
「ところで、露店を開くのってどうやればいいんだ?いざ、売りに出したいと思った時に露店が開けないんじゃあ困るからなあ」
「それなら、商業ギルドに問い合わせる必要があるんだが、旅人さんたちも登録できるんだっけかなあ? ちょっと覚えてないや。すまん」
「へえ、商業ギルドねえ。ともかく、情報ありがとう」
「役に立てて何より。そういや、酒はどうなった?」
「駄目だなあ、見当がつかない。なにか、大きなきっかけでも起こらないと駄目なのかも」
「ふーむ。まあ、頑張ってくれ」
「おう」
◆
さて、南区の清流に来た。ちょっと魚の追加をしておこうと思ったのが理由の一つ目、二つ目はリアルは真夏で暑いしゲーム内くらいは川辺で涼みたいなあと思ったからである。
いつも通り、水瓶を沈めて取り出し、魚がいるかチェックして……というのを繰り返しているとそれは不意に起こった。
陸に打ち上げられた魚がピチピチとはねている。捌こうとナイフを取り出したのだが、ちょうどその時、右耳の横を何かが高速で横切った。なんだなんだ?何が起こったか理解するよりも前に今度は左耳のすぐ横を何かが横切る。え、マジで何?
横切った「何か」は地面に食い込むように突き刺さり、ギラリと日光を反射している。
これって……。
「こんにちは。お久しぶり……ってほどでもないですね」
振り返ると、20メートルほど離れたところに作業服を着た女性プレイヤーが立っている。あの子は……昨日チャクラムについて教えた鍛冶師の子か!本当にチャクラムを作ってくれたのか!
「お久しぶりです。チャクラム、作られたのですね」
「はい。弓矢よりも使いやすくて、すぐに慣れることが出来ました! どうです、この腕前!」
「いや、本当にびっくりしたよ。風を感じる程度の至近距離に投げるとは……。サーカスのナイフ投げみたいと思いました。ちょっと怖いので、正面から投げられるのは嫌ですが」
「セーフティーエリアですから、直接当たることは無いですよ」
「そういえばそうか! というか、あれ? 魚はどこに行ったのだろう? 打ち上げられていた二匹の魚が忽然といなくなっている」
「え、ああ。私のインベントリに魚の刺身が二切れ入ってますね」
「え? もしかして、あの距離から俺の前にいた魚をスパッとやったって事ですか?」
「まあ、そうですね」
この子やべえ。チャクラムの達人だあ。
誤字脱字あれば報告して頂けると幸いです。
今後とも本作をよろしくお願いします!




