夕飯とフラウの報告書
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午前中、少しログアウトが遅れてしまった分、夕方は早い目にログアウトした。いつも通り夕飯の支度をする。前もって準備しておいた具材を使った飯だと、気を付けないと毎日似通った料理になってしまい、香に文句を言われるようになる。だから、俺は前々日・前日の食事を確認し、それと被らないように調整しているのだ。こうした秘かな気遣いによって、楽しい食生活を楽しめるのだ。
そんなことを考えているうちに香もログアウトし、食卓に着く。今日も残さず食べてくれるかな?
◆
「あ、魚団子のことだけど」
「ああ、そういえばそうだった。検証終わったの?」
魚団子。俺はその日、塩加減や材料などが異なる6種類の魚肉団子を作成し、フラウに渡したのだった。元々はキャットフードをイメージして作ったものだが、俺自身が食べて美味しかったし、見た目を良くしたらどこかで売り出せるかもしれないね。串焼き屋のおっちゃん、確か名前はドルフ、に相談してみようかな。
「うん、検証は終わって、今はデータの集計中だよ」
「早いねえ。安定した供給が出来るかどうか分かってないし、ゆっくりしてもらって良かったのに」
「お兄ちゃんからお団子受け取った後、『せっかく頂いたものだし、早く検証終わらせなきゃ』ってフラウちゃん意気込んでいたのよ。多分もうすぐ集計済みデータが送られてくるはず」
「了解~。ところで、人参は……?」
「ラビちゃん、すぐ満腹になっちゃうからなあ……役に立たないことは無いけど……」
「そっか、満腹ねえ。クールタイム的な事であってる?」
「まあYesと言えばYesかな。無限に回復が出来たらいけないからだろうね」
「ふーん。うん? ということは検証って……」
「ええ、まあ。そうね。HPが尽きかけた時、満腹になるまで食べさせて、どこまで回復するか見るの」
「ひど! 鬼! 君らに人の心は無いのか!!」
「ああ、勘違いしないでね! あくまでHPが回復するって事は喜んで食べているからで……。うん、確かに言葉にするとひどい行為に聞こえると思う。でも、本当に喜んで食べてるから。何の問題もないわよ!」
「そうなの……か?」
「そうなの」
「……」
「年齢制限がついてないゲームなんだから、過激な要素はないわよ」
「それもそうか」
「誤解が解けたようでなにより」
「大丈夫。例えお前がドSだったとしても兄ちゃんはお前を見捨てないからな。たぶん」
「全然分かってない! しかも多分って。多分って!!」
「香をからかうのはいったんこれくらいにしておいてっと。俺は風呂に行ってくるわ~。皿洗い頼んでいいか?」
「むう。からかっておいて、何事もなかったように逃げる……。ちくしょう。まあいいわよ。片付けはしておくわ」
「サンキュー」
…
……
………
「あがったぞー」
「はーい。食器洗いは終わったわ」
「ありがとう」
「あ、フラウちゃんから連絡来たわ。机の上にスマホ置いてるから、読んでおいて~。パスワードはルート7、下10桁だから。……あ、勝手に写真とか見ないでね!!」
「へいへい。流石にそんなことしないって。信用は得難く失いやすい物だ。毎日を共に過ごすお前から信用を失ったら日常生活が送りづらくなる。そんなリスクを背負ってまで妹の秘密を知りたいとは思わないね」
「本音は?」
「お前がどんな趣味を持ってようが興味ない」
「それはそれで傷つく。まあいいや。お風呂行ってくるね~」
◆
香の言った通り、食卓の上に香のスマホが鎮座されている。拾い上げて電源ボタンを押す。ロック画面はきれいな幾何学模様だ。なるほどなるほど、これはジュリア集合かな?っていかんいかん。パスワードを入力する。えっと、「2645751311」っと。うん、開いた。ホーム画面は滝の画像。風景画か。これは家族で温泉旅行に行った時の写真だな。懐かしい。
メッセージアプリを立ち上げて、「姫川花」を選択し、送られてきた内容を読む。
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〔Flower〕
集計終わり。それぞれの特徴を書くからお兄さんに伝えておいて。 19:30
〔Flower〕
『塩多め』:満腹までに21個。合計回復量は60%。
『塩普通』:満腹までに26個。合計回復量は70%。
『塩少な目』:満腹までに33個。合計回復量は75%。
『塩多め(ヒールウィード入り)』:満腹までに18個。合計回復量は60%。
『塩普通(ヒールウィード入り)』:満腹までに20個。合計回復量は65%。
『塩少な目(ヒールウィード入り)』:満腹までに24個。合計回復量は70%。 19:30
〔Flower〕
まとめると、回復手段としては『塩少な目』が一番良い。けど、単体当たりの回復量で言うとヒールウィード入りの方が良し。 19:32
〔Flower〕
猫キャットを召喚獣として持つフレンドの一人にこのデータを送って話を聞いてみたけど、絶対に欲しいって。私もそう思うし。その上でだけど、『塩少な目』30個セットで200~300ゴ-ルドで売るのが妥当ではないかと思っている。もちろん、需要と供給のバランスで売値は変わるだろうけど。そのへん含めてお兄さんに伝えておいてね。 19:33
〔香〕
分かったわ。お兄ちゃんに伝えておくね。 19:35
既読
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ふむ。なるほど。250ゴールドで売るとして、どれくらいの儲けになるだろうか……? ちょっと考えてみないと。
そういえば、香のスマホを触る時、スマホのロック画面/ホーム画面が「俺の知らない内に作っていた彼氏とのツーショット」とかだったらどうしようかと内心ドキドキしてた。そうじゃなくて結構安心した。このことは俺が墓場まで持っていく秘密の一つとさせて頂こう。
こんなに互いを信用している兄妹がいるはずないって?
…
……
………
小説の中なら、仲の良い兄妹が居たっていいのである!




