友人たち
読んでいただきありがとうございます!!
今後ともよろしくお願いします。
誤字脱字あれば、教えて頂けると幸いです。
錬金ギルドの建物を出たまさにその時、フレンドコールがかかってきた。香からだろう。なにせ現在、フレンドIDを交換しているのは香だけだからね。
「もしもし?」
「もしもし、お兄ちゃん、今いける?」
「ああ、ちょうど錬金の手ほどきを受けた所だ。お前はどうだ?」
「ついさっきログインしたところよ。髪型を色々弄っててさー」
「なるほど。お前は召喚術師だよな? 早めに召喚術ギルドに行って、手ほどきを受けとくべきだと思うが、どうする? 先に合流するか?」
「ああー。私も先に召喚術ギルド本部に行こうと思って建物の前まで来たのだけど、もうすでにすっごい混雑しててさ……。とてもじゃないけど入れなさそうなの。だから、先に合流しましょう。どこで待ち合わせる? 人が少ない所が良いんだけど」
「うーん……。それじゃあ、錬金ギルド本部に来てくれるか? ほとんど人が居ないぞ」
「分かったわ。すぐに向かうわね」
「オッケー、待ってるよ」
召喚術ギルド本部からここまで普通に歩いて5分くらいだ。人ごみの中、ここまでくるとなれば10分は掛かるだろう。建物の前のベンチに腰掛け、香が来るのをのんびりと待つ。
◆
「おや、貴殿はもしかして三条誠殿では?」
香を待っていると、不意に声をかけられた。というか、貴殿ってなんだよ。
「ああ、そうだが……お前は紅陽登だよな?」
「な!! 貴様、何故我が真名を知っているのだ?! まあ良い。我が名はクリムゾン=サンライズだ!! 以後よろしく頼む」
こいつの名前は紅陽登、大学の友人だ。
俺と同じ大学という事はそれなりに頭はいいはずなのだが……。彼のセリフからも分かる通り、彼の精神年齢は中学二年生レベルであり、重度の中二病を患っている。というか「クリムゾン=サンライズ」ってなんだよ。まんまじゃねーか。乾いた笑いが出るよ。
「オーケー、クリムゾン。俺のプレイヤー名はそのまま『セイ』にしてあるからよろしく」
「貴殿は自分のあだ名をそのままプレイヤー名にしたのか……もうちょっとひねれよ」
「お前、それブーメランだぞ」
「何を言う。熟考に熟考を重ねた結果クリムゾン=サンライズになったんだぞ!!」
「へいへい。せっかくだし、フレンドID交換しようぜ」
「いいだろう。これが我に振り当てられた認識番号だ」
「えっと……これでいいかな」
「お、来た来た。『セイからフレンド申請が届いています。了承しますか(Yes)/(No)。』無論、Yesだな」
「ほい、ありがとさん。お前は剣士なのか。お前なら絶対剣士を選ぶだろうって思ってたけどな」
「まあな。我は剣を振るい、邪を切り裂く者。貴殿は錬金術師か?何故に不遇職を選んだんだ?あ、失礼。他人の信念を無下にするのは良くないな。頑張ってくれ」
「ああ。というかそんなにも不遇職なのか、錬金術師ってのは? 色々作ったりできて楽しそうじゃん」
「ああ、掲示板では『この役職は何のためにあるんだ?』とか『なんでゲーム内でも頭を使わないといけないんだよ!』とか『この役職するくらいならこのゲームを辞めるわ~』とか言われてるぜ」
「そこまでかよ! うーん、それなりに楽しそうなジョブだと思うんだけどなあ」
◆
そんなことを話していると、また別の人物がやってきた。
「あら、もしかして誠と紅?」
「うん?もしかして七瀬か?」
「ええ、誠と同じ高校、同じ大学の七瀬葵よ。誠もこのゲームやってたんだ」
彼女の名前は七瀬葵。彼女が言ったように、俺の高校時代からのクラスメイトかつライバルだ。というか……
「七瀬こそAWTやってたんだ!! お前って真面目なイメージだったからゲームとかしないと思ってたぜ」
そう、高校時代の彼女は真面目一徹な委員長タイプの人間だったのだ。授業中にスマホを触っている不真面目男子を一喝したり、合唱コンクールの前には歌詞をちゃんと覚えているかのペーパーテストを行ったりするような人物だ。大学受験が終わって以降多少はピリピリした雰囲気を放たなくなったとは言え、彼女がゲームをする姿なんて想像できない。
「いや、私だって高校時代から多少はスマホゲームをしていたわよ」
「はい?! 嘘だろ? まじ?」
「そんなに驚かなくたっていいじゃない……。別に校則で『家に帰った後ゲームをするような人間であってはならない』なんて定められてなかったでしょう?」
「そうだけど……高校の時、授業中にゲームしている奴らにめっちゃキレてなかった?」
「授業中にゲームをすることは校則違反だから」
「そ、そうか。まあそうかもな」
そんな七瀬と俺の会話に割り込むように紅、いやクリムゾンが言う。
「七瀬って高校ではそんな奴だったのか。真面目だなあとは思っていたけど、高校時代からそうだったのか。というか、七瀬の善悪の判断基準は校則なのかよ。世の理という籠の外を認めるのも時には必要な事だぜ」
「ほんと紅って中二病よね……。それはともかく、ルールがあるおかげで私達は自由を確保しているんでしょう。ルールは私たちを縛るものでは決してないわ。だってルールの範疇なら何をしてもいいって事だもの。ルールがあるから私たちは不条理に弾圧されることを恐れずに生活できるんだもの。そのルールを守らずしてどうするっていうのよ」
「ふっ、ルールとは破る物なのだよ」
「中二病とか関係なく、今の言葉すっごくダサいわよ」
「ぐは!!」
七瀬の最もな発言によってクリムゾンがダメージを食らっている。それにしても、七瀬の言葉には強い説得力があるなあ。俺も彼女のように理論立てた説明を出来るような人物になりたいぜ!!
その後も七瀬とクリムゾンの応酬は続いた。アウトローをかっこいいと考えるクリムゾンとそれを馬鹿げていると言う七瀬との間の議論は徐々にヒートアップしていく。横で見ている俺からしてみれば明らかに七瀬の主張の方が理にかなっているのだが、クリムゾンはなかなか諦めない。
ちなみに、七瀬のプレイヤー名は「マルベーシ」だ。彼女の名前である葵を意味する英単語"Malvaceae"から付けたようだ。フレンド登録をしておいた。
 




