一方そのころ~フラウ編1~
いつも読んでいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!
今回・次回はフラウ視点での話です。
「いっけーー!タマ!」
「シャー!!」(猫キャットの攻撃手段『ひっかく』)
私は今、AWT(正式名称は忘れちゃった)というVRゲームを楽しんでいる。五感全てでゲームの世界を楽しめるこのゲームの没入感を味わってしまったら、他のゲームが全て霞んで見えてしまうだろう。
「いけ! ラビちゃん!」
そんなことを思いながら私の隣で戦う友人を眺める。リオカこと三条香。私の高校時代の級友ね。彼女の特技は口喧嘩の際に難しい語彙でまくしたてる事だ。成績も優秀だし生徒会長ポジションに似合うと私は勝手に思っている。それもこれも全て優秀……というか変わった……兄を持った影響だそう。「お兄ちゃんは素で難しい言葉を使うし、両親は『誠を見習ってしっかり勉強しなさい』って言ってくるし……大変なのよ~」って前に言っていた。
そういえば、この子はゲームを作ってお小遣い稼ぎをしているんだっけ? さっき「他のゲームが全て霞んで見える」なんて思ってごめんなさい。
さて、私はこのゲームで召喚術師というものになった。これは倒したことのあるモンスターを自分の味方にすることが出来るというジョブだ。このジョブの素晴らしい所、それは可愛いモンスターと触れ合う事が出来るという事。私の召喚獣であるタマはそれはそれはいい毛並だ。モフモフ、モフモフ。ああ、なんて素晴らしいのだろう。
「倒せたわよーー! ヒール!! それじゃあ、次の獲物を探しに行こう!」
「ええ!」
私もタマの回復を行い、次の戦闘に備えるのだった。
◆
「それにしても、結構疲れるわねえ」
後ろを歩くリオカがぼやく。
「確かにね。西側は平地のフィールドだったけど、ここは起伏が激しいものね……」
そう、我々は「西エリア」と呼ばれる初心者向けのエリアでレベルアップという名の修行を終え、今は「東エリア」で探索を行っている。起伏が激しい分、歩くだけで体力を消耗するし戦闘中もバランスを崩しやすい。気を付けて戦わねば。
おや、この先に変な物体が……。
「げ、リクウニ!」
「ふわわああ!! びっくりした! 急に止まらないでよ!」
「いや、リオカが下向いて歩いているからそうなったんでしょうに……」
「ごめんなさ~い。リクウニかあ……回避かな?」
「そうね」
リクウニ。その名の通りウニ型のモンスターだ。地球で言うところのガンガゼに近く、細くて鋭い棘を持つことが特徴だ。
ガンガゼに似ていると言ったが異なる点は3つある。一つ目、陸上に住んでいる。二つ目、針を飛ばして遠距離攻撃を仕掛けてくる。三つ目、直径1m~2mと大きい。
リクウニはPD(物理防御)が高いので、魔法攻撃で攻めるのが一般的な倒し方。もちろん、私達(と私たちのペット)は物理攻撃しかできない。だから、リクウニは厄介な事この上ない敵だ。
さて、見つかる前にさっさと退散しようと思い、私達はくるっと180度回転する。そんな私たちを目がけて何かが突進してきた。
「きゃ!」
クロウだ。カラスのモンスター。速いスピードで私たちを翻弄するこれまた厄介な敵。そうはいっても倒せない敵ではない。西エリアで倒したことがあるからね。
「戦闘用意!」
「オーケー!」
リオカと私は高速移動するクロウをにらみつける。奴がこちらに突進してきたタイミングを見計らって攻撃を仕掛けなければいけない。
カア!と鳴きながら奴はラビちゃん目がけて降下してきた。奴の鋭いくちばしでラビちゃんを突こうと考えているのだ。だが甘い!ラビちゃんだって西エリアでしっかりとレベルアップしているのだ。クロウの攻撃をスッとかわし、お返しとばかりに角でクロウを刺す。
「ガア!!」
怒ったクロウは今度は私目がけて突進してきた。よ~し、やってやるぞ! ……グハ!! 思いっきり攻撃を受けてしまった。召喚術師は高い防御力を持っているとは言え、攻撃を受けることは喜ばしい事ではない。HPが1/6ほど減ってしまった。
「カア! カア!」
攻撃が当たり、今度は満足げな表情を見せるクロウ。すごい腹が立つ。カラス相手に腹が立っている私自身にも憤りを感じるが、焦りは禁物だ。
ほら、また私に攻撃を仕掛けてきた。今度こそ! 小刀を振り下ろす。当たった!! けど私もダメージを食らってしまった。相打ちね。
「ガア!ガア!ガア!ガア!!」
再び怒ったクロウは今度はタマ目がけて攻撃を仕掛ける。やっちゃえ、タマ! 普段はしまってある鋭い爪をむき出しにし、タマはクロウをひっかく。やった! クリティカル!
クリティカルヒットを受け、態勢を崩したクロウ目がけてリオカが小刀を振り下ろす。クロウのHPバーが赤色になる。あと少し!
HPが少なくなると、一部のモンスターは暴走状態に入る。攻撃力と速さが上昇する分、防御力が落ちるのだ。クロウもそのタイプの敵。気を付けなければ。
無茶苦茶に飛び回り、私達を攻撃するクロウ。その攻撃を避けつつ攻撃する私達。
しばらく攻防が続き、私たちの勝利となった。ふええ、疲れた……。
「ヒール、ヒール、ヒールっと。ああ、MPがなくなっちゃった」
「私もMPが底をついたわ……。魚ももう食べてくれないし……」
召喚獣のHPを増やす手段は『召喚獣回復』というスキル。私達のMPがある限り召喚獣たちのHPが尽きる心配はない。
さらに、私達は新しいHP回復の手段を知った。それが好物を与える事。タマには焼魚・ラビには人参を与えることで若干回復するのだ。もちろん、この回復手段にも制限がある。一定以上食べると、それ以上食べてくれなくなるのだ。満腹になるのであろうか。
ともかく、死に戻りは避けたいので各種HP回復薬を飲み、全回復する。準備よしっと。
「それじゃあ、引き返そうか?」
「そうね」
そんな会話をしていた私たちは背後から迫る黒い物体に気が付かなかった。
「うぎゃ!」「うみゃ!」
突然、背中に衝撃が走り、私達は倒れてしまう。見ると、そこにはリクウニの姿が……。
立ち上がって逃げようとするが、奴は間髪入れず鋭い棘を飛ばしてくる。ああ、終わった……。
全回復しておいた私達のHPがどんどん減っていく様をただ眺める他なかった……。




