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研究の頓挫・取り敢えず熟練度上げ

いつも読んでいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします!

 ゲームリリースから、4日目の朝だ。


 プレイヤーも(そしておそらく運営側も)まだまだ模索段階である。


 プレイヤーの話をすると、レベル上げに没頭していた組がようやく序盤エリアでのレベル上げが終了し活動範囲を広げることになった段階だ。逆に言うと、普通にプレイしていた人々はまだ序盤エリアにとどまってレベル上げをしている。

 運営側も今頃大きな問題に直面しているだろう。というのも、錬金術師がこんなにも流行らないとは思っていなかっただろうから。(俺一人のためのジョブみたいになってるしなあ)

 その他も色々な「想定外」が起きている事だろう。


 これは俺も幾度となく痛感したよ。俺も一応は「ゲームプログラマー」なんだから。想定外の多さと辛さは身に染みて感じる。



 さーて、そんなことは今は関係なくてだな。俺がすべきことが分からないんだよ、本当に。

 酒造りは現状頓挫。ローズからは「やっぱり、特殊なスキルが必要なんだと思う」って言われているしな。


 熟練度アップを目指してHP回復薬を延々と作るのもなんか違う気がする。せっかくのゲームをアルバイトのように過ごすのはちょっと悲しい。


 だが、そうはいっても他にすること無いしねえ……。というのも、研究するにも資金が必要なわけで。


 うーん、ほんま困った。どないしよう?……関西人っぽく言ってみたが、これって正しい関西弁なのだろうか?漫才で使われる関西弁を聞いて真似てみたが、ネイティブでない俺には良く分からないや。


……

………


「という現状なんだ。そういう訳で、必死に錬金をする必要も無いんだ、俺。だから魚欲しいなら俺が捕まえてくるけど、どう?」


「うん、昨日の結果伝えてなかったわね。フラウちゃんと確認したところ、こんな感じになったわ」


1)『モンスター図鑑』みたいなサブスキルがあると聞いたことがあるか。モンスターの好物を知ることが出来たりするスキルのことだ。

→今のところ聞いたことは無い。掲示板でもそんな話題は無かった。


2)モンスターの好物でないと全く回復しないのかそれともごくごく微々たる量は回復するのか。例えば、"ラビちゃん"に猫じゃらしを与えても回復しなかったと聞いたが、0.1くらいは回復しているかもしれないと感じた。

→試してみると、微々たる量ではあったが回復しているようだ。そうはいっても実用的とは言えないレベル。素直にMPの自然回復を待った方が楽である。


3)焼き魚と生魚で回復量に差があるのか。調理しても回復効果が残る/上昇するのであれば、色々料理してみたい。

→焼いた魚の方が回復量が大きかった。また、タマも焼魚の方が喜んでいるように見えた。焼魚であれば、十分回復手段として役立ちそうなので、今後お金を払ってでも焼魚は欲しい。


4)ギルドで買う事が出来る魚型モンスターの肉でも回復するのか。

→好物ではないようで、微々たる量しか回復しなかった。ラビちゃんに猫じゃらしを食べさせるくらいの回復量なので、無料であっても欲しいとは思わない。


「ふむふむ。なるほど。回復量は調理によって上昇する可能性があるって訳ね。で、猫にはあの魚が一番と」


「Yes, Yes.いかにも」


「了解。それなら俺が捕まえてくるよ。あ、あと人参の件だけど」


「あ、そうだった、そうだった。今日朝からもらいに行くわね」


「りょーかい。召喚術師ギルド本部前で待ち合わせようか」


「お願い~」


 こうして四日目の午前中は魚を獲ることになった。5時間ぶっ通しで魚を集めていたもんだから、500匹近く集めることが出来た。

 自分で言うのもなんだが、俺の忍耐力すごくない?



 午後になった。魚を焼くためにも錬金室を利用させてもらおう。


「こんにちはローズさーん。今日も錬金室使うね~!」


「あ、セイ。良い所に来た! お願い、今日も回復薬の増産手伝って!」


「え、ええ。いいけど、どうして?」


「在庫がまじでやばいことなってるらしいの。錬金ギルドが買い取った回復薬などは各戦闘職ギルドに配られて、それを向こうで売っているわけだけど」


「ふむふむ」


「今って、沢山のプレイヤーが必死でレベル上げを行う時期で、回復薬の需要がすごく増しているわけ」


「そうだろうな」


「運営としては、錬金術師になったプレイヤーがその需要をカバーする分の供給をすることを踏んでいたみたいだけど……」


「現状、錬金術師になった旅人は俺だけだと」


「そうなの」


「それで、供給が追い付いていないと」


「全く持ってその通りなの」


「もしかして、回復薬の回復量が上がったのって……」


「……あなたの想像通り、需要量を減らす意図があったのかもしれないわ」


「いやいやいやいや。だったら運営が回復薬をどっさり生み出せばいいのでは? それで万事解決だろう? なんでそんな……回りくどいことを?」


「あなたねえ、もうちょっと頭を使いなさいな。そんなことをしたら、錬金術師の住人の仕事を奪うことになるじゃない? だから下手にそんな対応は出来ないのよ」


「ああ……なるほど、なるほど」


 良く考えれば、確かにそうだ。彼女の言葉にさらに付け加えると、「回復薬が足りなくても運営がそれを補填する」と分かれば錬金術師の住人はきっと「錬金術師の仕事はいつでも運営が奪えるのだ」ということを意識し、「錬金術師の先は暗い」と考え始めるだろう。

 そうなると、NPC達がせっかく築いた社会構造が破綻しかねない。


「運営も色々大変なんだな」


「そうね。言わば一国の統治者になったようなものだもの。そりゃあ、大変な事この上ないわよ」


 俺がボソッと言ったつぶやきにローズが反応した。



 結局、俺はローズに頼まれた通り、回復薬の大量生産を手伝うことにした。ただし、合間に自分の研究をしても良いと言われている。単純作業をしているときにふと面白い案を思いつくかもしれない。そう期待しよう。

 でもなあ。無数にある組み合わせから正しいレシピを見つけるのは大変だ。どこかにヒントがあるんだと思う。もしかしたらそれは強い敵を倒してはじめて手に入るものかもしれないわけで。そうなると、「戦闘職のみなさん、頑張って!」と祈るしか俺にはできない。……そういう意味でも、回復薬製作はいいかもしれないね。



 一応、研究についても話しておこう。

 回復薬の製作に飽きるごとに、適当な配置(もちろん、今までに試したことが無い配置)を放り込んで錬金している。数打ちゃ当たる戦法って訳だ。


 こんな事をしているのには理由がある。回復薬(大)を生み出した経緯は、「塩」という住人にとっての日用品を錬金の材料にするという旅人ならではの発想でレシピを発見したのだった。

 しかしながら、俺があのレシピを公開した現在、住人の錬金術師にとっても「日用品を錬金の材料に」という発想はごく自然な物となってしまった。結果として次々と新しいレシピが住人によって発見されてしまった。


 常に時代の最先端であり続けなければならない以上、「誰も思いつかないような組み合わせ」を試したい。そこで、ランダムにアイテムを選ぶという暴挙に出たという訳だ。


 それで成果が出ているのかって?ははは。はははははは。はあ。ゴミしかできてませんよ……。



 四日目の午後はそんな感じで終わった。



 作業の合間に焼いた魚をフラウに渡してから俺と香はログアウトした。ちなみに、「魚をただでもらうのは気が引ける」とフラウが言ったので、「またいつか俺の護衛を頼むよ。護衛料の前払いって事で。」と言っておいた。妹の友人から金をとるなんて流石にできないよ……。






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[一言] 壁]_・)タンポポコーヒーはぁ? 洗って、乾燥させて、刻んで炒めるの~(//∇//)
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