取り敢えず色々試してみよう
いつも読んでいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします!
錬金術を使い、AWTの世界で未だ発見されていないというアルコールを生み出す計画において、一番最初に俺がしたのは使えそうな材料を列挙することだ。
ブルーベリー:ワイン用ブドウの代替。ブルーベリー中の糖分が酵母の餌となる。
砂糖:ブルーベリーだけでは不十分な糖分を補う。
水:ブルーベリーだけでは不十分な水分を補う。
魚の切り身:なんとなく菌が居そう。
肉:モンスター肉。ギルドで購入。なんとなく菌が居そう。
「なんとなく菌が居そう」というのはあくまで「現実世界なら菌が住んでいそう」という俺の感覚だ。この世界では魚の切り身やモンスター肉は腐らないのだから、菌も全く住み着いていないので、まあ気休め程度の感覚だ。
まずは「レシピ対照的な配置である」という前提で色々試してみよう。ただ、ブルーベリーの在庫が少ないのが少々不安だなあ。また香とブルーベリー摘みに付き合ってもらう必要がありそうだね。
◆
一時間後、ブルーベリーの在庫がなくなった。それまでに見つかったレシピは1つだけだった。
暗視薬:これを飲むと10分間、暗闇の異常状態を無効化する。
□ブ□
ブ水ブ
□ブ□
ブ:ブルーベリー
目的の物じゃあなかったとはいえ、興味深い物が完成した。この薬があるという事は、暗闇という異常状態もあるんだね。これを飲んだ上で暗い場所を見ると……あれ、効果がない? 実際の暗闇が良く見えるようになるのではなく、あくまで暗闇という異常状態を無効化するだけのようだ。
というか、ブルーベリーで目が良くなるとはよく言うけれども、まさかこんな薬が出来るとは思わなかったよ……。
そういえば、クールタイムが設定されていないな。なんかアップデートあったらしいし、それでかな?
という事はHP回復薬のクールタイムも変わったのだろうか? でもなあ……。実は俺も(興味本位で)HP回復薬を飲んでみたのだが、薬っぽい妙な味がするんだよね。だからグビグビ飲みたいとは思えないんだよなあ……。もし俺が戦闘職なら、回復量の増加の方という形でアップデートしてて欲しいな。まあ、どうせ俺には関係ないし、わざわざ調べなくてもいいか。
◆
暗視薬をオリジナルレシピとして公開した時、新着のオリジナルレシピを見てみたのだが、他の錬金術師(たぶんNPC)が色々な面白いレシピを公開していた。拝見させてもらう。
毒ダメ無効薬:これを飲むと5分間毒ダメージを受けなくなる。
□シ□
シ水シ
□シ□
シ:シソ
解毒薬:これを飲むと毒が消える。クールタイムは3分。
□シ□
シ回シ
□シ□
回:HP回復薬
シ:シソ
なるほど、シソが解毒薬かあ。シソと言えば殺菌作用や防腐作用がある植物だ。この世界では殺菌も防腐も必要ないから、その代わりに「解毒」という形でその効能を表しているようだね。なかなか運営も面白いことをするなあ。
おや、クールタイムが設定されている薬もあるんだね。それにしても、解毒薬って必要なのだろうか? 完全に毒ダメ無効薬の下位互換じゃあないか。この点は運営の意図が良く分からないなあ。
俺が暗視薬を公開して暫く経つと、こんなレシピを作り上げた人がいた。
暗闇回復薬:これを飲むと暗闇の異常状態が消える。クールタイムは3分。
ブヒブ
ヒ水ヒ
ブヒブ
ブ:ブルーベリー
へえ、ブルーベリー&回復薬ではなく、ブルーベリー&ヒールウィードを材料にしたレシピなんだ。こういうタイプもあるという事を心の片隅に残しておかないと。あれ、そういえばこれも暗視薬の下位互換……だよな。どういう事だろう?
こんな風に、他人の発見を知ることで新たな観点を得ることが出来るのが研究の面白い点だね。俺の発見が誰かのインスピレーションを刺激していたらいいのにな。そんな風に思った。
◆
その後、魚と砂糖/肉と砂糖などなどブルーベリーを使わない組み合わせを色々試してみた。ここで「腐った魚」「腐った肉」のような"特殊アイテム"が完成してそれが発酵の元になるというシナリオになればいいなあ~というのが俺の希望だったのだが、なかなかそうもいかず、結局時間とお金を浪費するに終わってしまった。
幸い、HP回復薬(大)のレシピを見つけたおかげで、錬金スペースの利用費は賄っていけそうだが、このままでは研究費が枯渇しかねない。何としてでも突破口を見つけ出したいものだ。
取りあえず、昼飯時になったし、ログアウトするか。錬金室の利用料金を払い、そのままログアウトした。
◆
「あ、そだ、お兄ちゃん!」
昼飯を食べていると、香が急に何かを思い出したかのように、俺に話しかけてきた。
「?」
「フラウちゃんからね、早急に魚の追加をお願いしますって! すごいよ、魚。まさかの効果があったの!」
「魚の追加の件は了解。へえ、すごい効果があったとは? 猫キャットと仲良くなれる他にもいいことがあるの?」
「ええ! ほんと驚きの効果よ! フラウちゃんが『掲示板に書いたら大騒ぎになるだろうから暫く隠しておこうかしら』って言うくらいすごい事実なのよ!」
「それは……すごそうだけど、どういうことなんだ?」
「アップデートが入ってHP回復薬系のポーションの回復量が一律3倍になったでしょう? でもね、その変更って私達召喚術師にはあまり喜ばしい事でもなかったの」
「へえ、3倍になったのか。ということは、HP微回復薬(大)は15の3倍で45の回復になったわけか。そして、HP回復薬(大)は150の3倍で450の回復ってわけか。450の回復って、俺からしたら良く分からない世界だよ」
「??……ああ! お兄ちゃんはレベルが0のままだから最大HPが50なのね」
「そうなんだよ。それはともかく、なぜそれがあまり喜ばしい事ではないんだ? 戦闘職なんだったら、ありがたいことこの上ないのでは?」
「私自身が戦う場面だったら、もちろんありがたいの。でも、基本的に召喚術師は自分の召喚獣に戦ってもらうでしょう?」
「そうだな」
「つまり、ダメージを食らうのは基本的に召喚獣の方なの。仮に私たち自身が攻撃されても、それほどダメージを受けないし」
「そういえば、召喚術師は防御力に偏ったステータスだったよな? なるほどなるほど。短時間に大ダメージを食らう機会があまり無いのか」
「そういう事。もちろん、召喚獣のHPがなくなった時は私たちが戦うことになり、その時にはじめて『回復が追い付かない~!!』ってなるわね。でも、私たち召喚術師の目的は『召喚獣のレベルを上げる事』であり、私たち自身のレベルアップを重視したものではないわ。ということは……」
「召喚獣のHPがなくなった時点で、それ以上の戦闘を続ける意味があまりないって事か」
「正解よ」
「でも、回復量が増加したってことは召喚獣の回復が間に合いやすいという事だろう? 回復薬を飲むのがお前自身か召喚獣かの違いでは?」
「そうでもないのよ。召喚獣の回復は回復薬では行えないの。代わりに必要なのは私たちのMPなの。召喚主のMPを使うことによってのみ召喚獣の回復が可能だったの。召喚術師のスキル『召喚獣回復』って物ね」
「へえ! そうなんだ! ということは召喚術師にとって重要なのはMPであってHPではないという事か。なるほど、なるほど。うん? のみ回復が可能だった?」
「そう。『だった』の。実はね、フラウちゃんのMPが尽きて、タマちゃんの回復が出来なくなった時に気休めがてらお兄ちゃんからもらった魚をあげたの。そしたら……」
「回復したと」
「ええ。正直、微々たる回復量だったけどね。それでも、回復は回復。もう、私達もびっくりしたわよ、ほんと」
なかなかに面白そうなことになってきたではないか。




