酒は料理の産物?錬金の産物?
いつも読んでいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします!
ドルフ曰く、この世界では食べ物が腐ることはないらしい。そしてキノコを採取するケースも無いとのことだ。キノコが採取できない理由だが、もしかするとリアルに帰った時に「このキノコ、ゲーム内で食ったことがある! だから食べることが出来るはずだ!」と勘違いしないようにする為かもしれないし、まだ見つかっていないサブスキルが必要なだけかもしれない。現時点では何も言えないね。
ドルフは「力になれんくてすまん」と言っていたが、断じて彼の情報が役立たなかった訳では無い。「食べ物が腐ることは無い」という事実は俺にとっては実に有力な情報だ。
食べ物が腐ることは無いという事はつまり、足で踏みつぶしたブドウを室温で放置しても発酵することは無いという事だ。
もし「この世界でも食べ物は腐るぞ」と聞いていたら、ブルーベリーを足で踏みつぶしてビンに詰め、砂糖を加えて室温で放置していたのだが……それはしなくて済みそうだね。なお、足で踏むというのはかつてのヨーロッパで行われていたワインの製法だ。昔は足で踏みつぶしたブドウを発酵させることでワインを作っていたのだと聞いたことがあるので、その再現をすれば酒が出来るのではなんてことを考えていたのだがなあ。もちろん、現代作られているワインは機械がつぶした物であり、発酵に使う菌も安全性・清潔性が担保されたものだからご安心を。
以上の考察から、「料理的」な手法では発酵食品を作るのは不可能という訳だ。
そして、この世界では料理と似て非なる概念として錬金術がある。ヒールウィードを磨り潰して水に加えてもただの青汁になるのに、錬金術を使うとHP回復薬になる。ただの料理では出来ないものを錬金術は作れるし、その逆もまたしかりである。
だから、発酵食品も錬金術師で作り上げることが出来るだろうと俺は予想する。一応、ローズの意見も聞いてみようかな。
◆
「ちわっすーー。ローズさん、元気?」
「元気というか、元気じゃないというか……。旅人の中で錬金術師になった人が少ない分、仕事がほとんどなくって……。ただただここに座ってのんびりしているわけだから、体調という面では元気だけど……」
「精神的には疲れているわけかあ。人間、働きすぎるのも疲れるけど、仕事が無さ過ぎるのも苦痛だって言うものな……」
「そうよーー。という訳で、何かやることない?私に聞きたいこととか無い?退屈で退屈でしょうがないの!」
「まだこのゲーム始まって3日だぞ? 気持ちは分かるとはいえ、飽きるの早すぎじゃね? それはともかく、ちょうど聞きたいことがあってやってきたんだ」
「おお! 良いわね良いわね!! なになに?」
「酵母を作りたいんだ。錬金術で」
「コウボ?」
「ワインとかパンとか作るのに使う菌の事だよ」
「ああ、その酵母ね。なるほどなるほど。確かに、私も久しぶりに一杯飲みたいわね……。でも、またどうして錬金術なの? 普通、酒蔵とかじゃないの、酒を造るとしたら?」
「いいや。俺はそう言う手段では発酵食品は作れないと考えている。この世界では食べ物が腐ることが無いって聞いた。という事は、いくら上質な酒蔵があろうとも、何かをすりつぶしたり混ぜたりするだけでは決して酒はできないと考えている」
「それで、錬金術の力に頼ろうって訳ね。面白いわね。私達住人で料理人をやっている人たちが『酒造るぞ!』って意気込んでいた時期もあったのだけど、結局成果は出なかったと聞いているわ。それを錬金術で成し遂げようとするとは……なかなか斬新ね! 私も協力したいのだけのだけど……そうなると利益の分配とかがややこしくなるからねえ……」
「そうだな。そっちはそっちで独自で研究してみては? ローズも錬金術師なんだろう?」
「そうね……暇だしやってみようかしら。でも、私が先にレシピを見つけちゃったらあなたが悔しいんじゃあない?錬金術って発想はあなたが最初なのに……」
「そんな小さなこと気にしないって。俺としては、酒が一早く完成し、色々料理の幅が広がることを一番望んでいるのだから」
「なるほどね。でもそうは言うけど、レシピで手に入るお金ってあなたの想像以上に大きいわよ~。後から『俺にも分けろ!』って言いたくなると思うわよ~。それで思い出した! HP回復薬(大)で上がった利益の一部がギルドからあなたに支払われたはずだけど、うまく機能してた?」
「ああ。1000ゴールド位もらえたよ」
「それは良かったわ。今後、みんながもっとゴールドを持つようになって、ちょっと高くてもHP回復薬(大)の方を購入するようになったら、あなたも大儲けよ! そういえば、あなたが『塩を材料にした錬金』をしたことで、他の錬金術師たちがこぞって身近にあるものを使ったレシピを探しているわ。抜かされないようにあなたも頑張ってね! もっとも、旅人さんの中に錬金術師になった人がほとんど居なかったおかげで、熾烈な競争が行われているわけではないけどね」
「そうなのか、俺も頑張らないとな!まあ、とりあえず俺は酒造りに取り組んでみるよ」
「頑張ってねえ~。完成したら、一緒に飲みましょうね」
「ああ、ローズみたいな美人が飲むにふさわしい宝石のようなワインを目指して頑張るよ」
「あら、口が達者な事」
自分で言っておいてなんだが、俺のセリフ、クサすぎだろう……。ええい、恥は捨ててとっとと作業を始めるぞ。




