魚
「かくかくしかじかという訳で、魚の切り身があるから、渡したいのだけどーー」
「そうなんですね!!それは嬉しいです!ありがとうございます」
「香とは頻繁に会っているんだよな?だったら、香経由で渡そうと思うのだが」
「はい、一緒にパーティー組んでますからね」
「りょーかい。それじゃあ、またいつか」
「ではではーーです。」
よし。魚は受け取ってもらえるようだね。っとそろそろログアウトの時間だな。このように、タイムスケジュールに則って生活する事で、ゲームを効率的に楽しむことが出来るのだ。
◆
リアルに戻ってきました。昼食の支度をして、ご飯を食べて、軽く運動。1時間の間にするべきことはたくさんある。それじゃあ、まずはご飯の支度だな。栄養バランスの取れたメニューにしなくてはね。
「あ、お兄ちゃん! ログアウトしたのね」
「あれ、香? 今日は早いな」
「花ちゃんの都合でね。午後からちょっと長めにログインするつもり」
「あそ。生活リズムを乱すなよ」
「もちのろんよ! あ、昼食、準備しておいたけど、これで大丈夫かな?」
「うーん、ちょっと塩分が多いメニューだな……。まあいいか。夕食をあっさりしたものにしようか」
「はーい」
昼食後は二人で軽く運動をする。激しい運動をするわけではないぞ、食後だし。ウォーキングマシンの上をのんびり歩く程度の運動だ。
その間に、ログイン後、一度会って魚を渡したいという旨を伝えた。もちろん了承してくれた。
「私のラビちゃんには何かないの?」
「うーん、猫じゃらし食ってたし、猫じゃらしあげようか?」
「いや、ウサギと言えばキャロットでしょ!!キャロットとか見つかってないの?」
「すまない、持ってないな」
「そっかー。残念。また見つかったら教えてね」
「はいよーー」
…
……
………
うーん、時間がちょっと余った。さっきの魚の種類について調べてみるか。
ふむ、さっきの魚はおそらく「カワムツ」をモチーフにしていそうだな。ゲーム内で見たカラフルな色合いがカワムツの婚姻色とそっくりだ。
なになに……唐揚げにしたらうまい?ふーん。一応食用なのか。確かにしっかりと火を通したら臭みも消えるかもしれないな。試してみるか。
……フラウにあげるって約束しちゃったしなあ。午後から追加で捕まえようかな……。
◆
ログイン!しました! さあ、午後からも元気にやってくぞーー!!
と自分に言い聞かせる。ちょっと眠気が覚めたかな? それにしても、ご飯直後に眠気に支配されるのってなんでなんだろうね? 昨晩は十分睡眠を取ったはずなのに。
魚の切り身を香に預けた俺はそのまま川に向かい、魚を捕まえるべく、水路に水瓶を沈めた。
20個の水瓶を沈めて2~3匹しか手に入らないんだ。確率としてはかなり低い。大量に必要という訳ではないし別に良いが、「1000匹必要!!」ってなったら流石にしんどいだろうなあ。水瓶じゃなくてびんどうを使ったらもっといっぱい魚が獲れたりして。まあ、この世界にびんどうが売ってるとは思わないけどな。
※びんどう:魚を捕獲するための仕掛け。魚が獲れ過ぎるという理由で使用が禁止されている地域もある。
ふう、やっとの事で50匹分の切り身を入手した(ものすごく疲れた)。よし、帰ろう、錬金ギルドへ。
◆
帰り道、道端に串焼きを売っている屋台を見つけた。……なぜだろう、異世界と言えば串焼きみたいなイメージがあるなあ。気のせいだろうか?いや、気のせいではないから、ゲーム製作陣もここに串焼き屋を設置したのだろう。
せっかくだし、一本買ってくか。ついでに調理器具をどこで調達できるか聞いてみようか。
「へいらっしゃい、旅人さん。異世界物の定番『串焼き』だぞーー! ははは!!」
あ、やっぱり、意識してるんだね。そーいや、このゲームのタイトルも「Another World Traveler~異世界への旅行者~」だものね。納得。
「確かに、こういう世界観に串焼きはぴったりだよな。二本ちょーだい」
「りょうーかい! 一本100ゴールドだよ」
「えっと、それじゃあ、200ゴールド送金!!」
「おっけ、ばっちりだ。はいよ」
「ありがとう。うーん、美味いなあ。何本でも食べられそうだ!」
「ははは。実際、君たちが暮らす世界とは違ってここではいくら食べても大丈夫だからね」
「言われてみれば……。あ、ところで、こういう料理に使う物ってどこかで売っているのか?俺も料理には興味があるんだ」
「ほう。めずらしいな。旅人の中で料理に興味があるやつはめずらしいぞ。得意なのか、向こうの世界では?」
「ああ、まあな。家族が料理が苦手で、いつも俺が料理してるもので」
「なるほどな。で、お前さんの質問に一言で答えるなら、料理に関する物が何でも揃ってる店があるんだ。北の方にその店があるぜ」
「なるほど、分かった。情報ありがとう」
「はいよ~」
よし、北に行ってみるか。
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