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成功と失敗、どっちが成長のカギ?

 病気に感染した木の枝に属性の付与を行うとどうなるだろうか、と疑問を覚えた俺は、早速ひまわりさんのいる工房へと向かった。


「という訳で、この木の枝とこの魔石で付与してもらいたいんだけど、どう?」


「魔石って結構高価ですよね? 無駄になるかもしれないのに、いいんですか?」


「問題なし! お金はあるからね」


 ゲーム内で研究するってのはそう言うもんだ。お金を渋って研究を進めなかったら、いつまで経っても前に進まない。


「分かりました。ただ、出来ないかもしれませんよ? 武器じゃないと付与魔法は使えないので」


「木の枝は立派な武器、そう昔から決まってるから大丈夫……だと思う」


 古き良きゲームで見られた、「勇者の最初の装備はヒノキの枝」ってやつだ。


「じゃあ、早速……。あ、付与対象みたいですね。そっか、木の枝も武器扱いなのか……」


 ぶつぶつと呟きながら、ひまわりさんは付与を発動する。が、しかし。


 パキン!!


「あ」

「え?」


 魔石が割れて粉々になった。これって確か付与が失敗した時のエフェクトだったかな?


「え、なんで……?」


「? えっと、これって失敗ですよね? その可能性は予想の範囲内だったので、別の魔石も持ってきてます。こっちでお願いします」


「え、ええ。ありがとう……ございます。それ!」


 パキン!!


「あれま、また失敗か」

「え、ええ~!」


 ひまわりさんは、二連続の失敗にかなり動揺していた。そんなに驚く事なのだろうか?


「いやはや、これは凄い発見ですよ! どうやって手に入れるんですか、この木の棒!」


 目を輝かせ、ずいと俺に迫るひまわりさん。


「近い近い。そんなに驚くことなのか?」


「はい! これは付与の世界に革命をもたらしますよ!」


「そんなに?! どういうことです?」



「えー、取り乱してしまってすみません。改めて話していきますね」


「よろしくお願いします」


「まずはじめに、スキルにはレベルがありますよね。ベースレベルと違って、スキルのレベル」


「熟練度的な指標ですよね」


 ベースレベル、つまりプレイヤー自身のレベルとは別で、各スキルに与えられるレベルと言う物が存在する。「スキルレベル」や「熟練度」と言った方が分かりやすいかもしれない。


「それですそれです。で、それを成長させるには、基本的にスキルが成功する必要があります。失敗しても、経験値はあまり入りません」


「錬金術もその仕様が適応されてるな」


「ですよね。しかし、付与に関しては、いえ、他のスキルもそうかもしれないのですが、ある一定以上は『失敗した方が経験値が入る』という現象が起こります」


「え?」



 ひまわりさんの説明によると、ある所までスキルレベルが上がると、失敗と成功の時に貰える経験値の大小が入れ替わるらしい。

 これは付与に限らず、他のスキルでも見られる現象らしいが……俺が知らなかったという事は錬金術に関してはそのシステムの適応外なのだと思う。


「スキルレベルが上昇すると、成功率が上昇します。すると、ほぼ100%成功するようになりますよね」


 ひまわりさんの言うとおりだ。錬金術に関しても、失敗の割合がどんどん減っていく。


「そうなった時、今度は失敗時に経験値が貰えるようになるんです。おそらく、学びたての頃は、成功経験が成長のカギでしょうけど、ある程度上達してからは失敗経験の方が成長のカギになるって事だと思います」


「そんなシステムがあったなんて……。という事は、粗悪な系の素材は、付与スキルの成長にもってこいって事なのか。それは凄いな!」


「ですです! 一応、どうしても失敗したければ、レアドロップをふんだんに使った強力な武器に付与すればいいのですが……。そうそう手に入る物ではないので」



 そういう訳で、「粗悪な」系の素材を幾つか預けておいた。知り合いの鍛冶職人にも共有するそうだ。

 俺の求める結果では無かった物の、新しい発見が出来て良かった。





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