古代語対応表と後回しになっていた件
俺は古代語解読スキルを使って、本の文章を読み漁り、古代語の文章とそれに対する日本語の対応表を作った。そして、リオカとフラウのブログで公開し、意見を集めている所だ。
『家 横棒 山 棒人間 棒人間 縦棒 衣服』
→山に住む人々の暮らし
『∀みたいな文字 横棒 家が二つ 縦棒 太陽 山 ×印 棒人間 Sみたいな文字 岩が三つ 川 剣 折れた剣 Sみたいな文字 ×印 家』
→町の南にある山にはケルべ人が住んでいます。
『時計 石 Sみたいな文字 本 山と川 牛 Sみたいな文字 ピッケル?』
→鉄鉱石を取っていました。
『∀みたいな文字 太陽と月 ■■■ ×印 時計 棒人間 棒人間 器 折れた剣 棒人間 ×印 煙』
→ある日、■■■によって人々は食べられ、人々は滅んでしまいました。
『太陽と月 ×印 矢印 棒人間 棒人間 ×印 家 横棒 山 棒人間 棒人間 時計 煙』
→そして、人々は山に住んでいた人々の事を忘れてしまったのでした。
………
……
…
「で、結局何かわかりそうなのか?」
「うーん、色々と意見は出てる。けど、なかなか解読は難しいみたい」
「そうなのか?」
こういうのって、暗号解読のプロ的な人が一瞬で解読してくれるものだと思ってた。ちなみに、俺自身は途中であきらめたけど。
「かなり難解みたいよ。今一番有力な説が『これは漢文に近いのでは』っていう考えなんだけど、それが正しいとしたら解読が難航するのも頷けるのよね」
「と言うと?」
「例えば、漢文で『もし○○なら』って意味を使うのには、若いの『若』って字を使うじゃない?」
「だな。実際、今でも『もし』って打って変換したら『若し』って出るもんな」
「でも、『若』って漢字はそのまま『若い』って意味で使われている。そんな感じで、一つの文字が全く異なる意味で使われてるみたいなのよ」
「うわあ。それは厄介だなあ」
「まだそれだけならマシなんだけど、さらに面倒なことがあってさ。例えばこれを見て」
香がスマホを開き、表を見せてくれる。
「『日』と言う意味の記号一覧?」
「うん。『日』って言う意味の記号は『太陽と月』『太陽』『二重の円』と推測されてるのだけど、それは本の種類によって違うみたいでさ。要は、方言的な物があるみたい」
「なるほど」
議論を詳しく見てみる。はー、なるほどなあ。
例えば『山に住む人々の暮らし』に出てきた『∀みたいな文字 太陽と月』は『ある日』に対応してると考えられていて、「∀みたいな文字=ある」、「太陽と月=日」と考えられているみたいだ。
けれど、『釣り入門』という別の本では『太陽の絵文字』が『日』を現しているみたいだ。
「解読できるのか?」
「分かんない。お兄ちゃん、AIを使ってサクッと解析してみてよ」
「そんな簡単に実装できるなら、今頃もっとすごい精度の自動翻訳が作られてるぞ?」
少しずつ、自動翻訳の精度は上がってきているが、慣用句やジョークと言った口語表現は上手く訳せないことが多い。それ抜きにしても、現存する自動翻訳は大量のデータセットを集めて初めて成り立っている。手作業で集めれるサイズのデータでは、解析なんてうまくいかないだろう。
◆
数日が経過した。
最近、なんか古代語関連の事ばっかりしてる気がする。こう言っては何だが、飽きてきたので、粗悪な枝・粗悪な木材関連の実験を再開しようと思う。
さて、改めて「粗悪な枝・粗悪な木材」の性質を思い出してみよう。これらは木材を採取している時に稀に手に入る物だ。虫こぶが付いている分、壊れやすいという設定のようで、使い道がない。
しかし、医学を志す友人から聞いた話では「虫こぶの原因となる細菌の中には、植物の品種改良に役立つ物がいる」そうなのだ。アグロバクテリアと言うそうだ。
その話を聞いて、俺はアグロバクテリウムを使って、品種改良が出来ないか試していたのだった。バクテリア、品種改良したい植物、その植物に組み込みたい因子を混ぜて錬金を発動していたのだが、全く上手くいかない。
その後、気分転換に訪れたアスレチックエリアでミームブ岩を手に入れて、そっちを試したんだよな。
「そういや最近ひまわりさんと話してないな。リオカは時々、武器に何か付与をしてもらいに行ってるみたいだけど」
付与、付与かあ。
待てよ、粗悪な枝とか粗悪な木材に付与って出来ないかな? ここは魔法が存在する世界。バクテリアが魔石を取り込んで進化したりしないだろうか?
ちょっと行ってみるか。