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燃えるゴーレム「火焔」

 俺は今、リオカとフラウと共にアスレチックエリアを攻略中である。前回とは違って、認識阻害の塗料を使っているのだが、すると……。


「楽だな!」

「楽ね!」

「かなり、楽になりますね。認識阻害装備が無いと、警戒しながら進まないといけないですが、今回はそんな心配しなくていいですし」


 こうしてモンスターから攻撃されずにスイスイ進むことができる。「ブログ案件だ~」と二人は喜んでいた。


「あそこにミームブロックの採掘地を設置したのはいやらしいな。少なくとも一度はこのアスレチックを超えないといけない訳で」


「むしろ、非戦闘員しか気づけないって所にいやらしさを感じますね。農業系のスキルを持った人をここまでキャリーしないと、絶対に気付けないですし」


 確かに。自分自身の事だから失念しそうになっていたが、普通こんなところに『農耕・実践』を持った人がやってくることは無いだろう。この先に良質な土壌や珍しい植物があるならまだしも、この先にあるのはボス戦だけらしいしなあ。


「うんうん。お兄ちゃんを連れてきて正解だったよ。流石、私ね」


「え? もしかしてリオカちゃん、それを見越して?」


「違うわよ。違うからこそ、私って凄いと思わない?」


「なるほど。狙っていた訳じゃなく何かを発見するっていうのもある種の才能と言える……かしら?」


 と悠長に会話しながらアスレチックを超えていく。俺も二回目という事もあって結構スイスイと進むことができている。結局最後までモンスターからの攻撃を受けることなく、ゴール地点にたどり着くことが出来た。



 しばらくの休憩をはさんだ後、リオカとフラウがボス戦に挑むことになった。俺は認識阻害装備を着て退避しつつ、二人の戦闘シーンを第三者視点で撮影する事になった。後で行動パターンなどを解析するらしい。未だに誰も倒せていないボス。彼女らのブログに寄せられるコメントではその倒し方についての議論が白熱しているらしい。

 ちなみに、ログアウト後になんとなく開いたアルカディアの公式サイトでも、様々な議論がなされていた。みんなが注目している話題という事だな。


「これが、ボス戦前の扉か……。なんというか、仰々しいな」


 水龍前の扉も仰々しかったが、ここの扉の方がより豪華に感じられる。まず、扉に施された装飾。非常に精巧なレリーフが施されており、見る者を惹きつける。描かれているのは鉱山で働く人々の姿である。……いや違う。鉱山で生きて(・・・)いるゴーレムの姿が描かれている。なるほどなるほど。これはボス戦のをクリアした後に解放されるエリアを表しているのかなあ? このゲームにはダンジョン要素は無かったけれども、次のエリアは地下鉱山……だったら面白そうだな! また、扉の脇にはマグマの滝が天高くから降り注いでいる。


「カッコイイよね! そのレリーフについては『ボスの弱点が描かれている』とか『ボス戦後に解放されるエリアだ』とか言われてるの」


 やはりすでに議論されているようだ。なるほど、ボスの弱点って可能性か。俺が思いつかなかった発想である。


「弱点ねえ……。そうなのか?」


 改めてレリーフを眺めるが……。うーん、分からないな。


「今の所、後者の考え方が支持されているかな。弱点ってのは希望って感じかな~」

「藁にもすがる思いで『レリーフはきっと……! きっと……!』みたいな感じですね。というのも、このボス、攻撃力はそこそこなんですが、防御力が尋常じゃないんですよ。だから、『きっと、何か弱点があるはずだ』って考えていまして……」


「なるほどなあ」


「じゃあ、早速行きましょ! フラウとお兄ちゃんも、準備はオッケー?」


「「オッケー!」」


 いざ、ボスの元へ行こうではないか! 俺は戦闘しないけどな!



「燃えるゴーレムだな」


「そうね」「ですね」


「名前は……『火焔』か。なんというかRPGの中ボスっぽい名前だな」


「あはは、確かに。『スライム』とか『ホーンラビット』みたいな安直な名前じゃない。でも、しっかり考えた結果つけられた名前って感じでもない」

「まさに中ボスの名前……ですね」



 なんて話していると、自身の名前をバカにされたのが癪に障ったのか、火焔が突進してきた。戦闘開始である。(モンスターにそんな知能は無い。ただ、侵入者が来たから排除しにかかっただけである)


 俺は撮影の為に一歩下がる。対して二人+かわいい召喚獣はゴーレムに挑む。……俺も銃とか取り出して攻撃に参加したほうがいいかな? いや、下手にヘイトを買っても良くないだろうし、そもそもゴーレムには銃がほとんど効かないって言ってたから、俺が参戦するのは百害あって一利なしか。


「そうだ、お兄ちゃんは撮影しつつ、この場所を観察してみてくれない?!」


「何かギミックがあるかもしれないので、よろしくお願いします!」


「分かった!」


 俺にも仕事が出来たみたいだな。ちょっと調べてみますかね。



 認識阻害のおかげでボスから見向きもされない俺は、のんびりじっくり観察できる。そもそもこの場所は洞窟のような場所であり、ごつごつした岩が四方を囲んでいる。しかし、ボスにばかり目が行っていて部屋の内装なんて見ていなかったが、改めて見ると所々に何かが彫られているのが分かった。

 近づいて見てみると、そこには抽象化された絵が彫られていることが分かった。ここにはドラゴンっぽい絵。こっちには川のような絵。ここにあるのは棒人間だな。何か意味があるのだろうか? 後で動画を見返したいな。


 そうこうする内に、リオカとフラウのMPが底を尽きた。すると、召喚獣を回復できなくない訳で、今度は召喚獣のHPが底を尽きる。最後には二人のHPも底を尽いてしまった。


「二人も善戦しているように見えたけど、ゴーレムのHPは全く減っていないんだな……」


 比較的長時間戦っていたので、傍から見たら善戦しているように見える。しかし、改めてボスのHPバーを見ると、1%も削れていなかった。本当に防御力が高いんだなあ……


「うん?」


 そんな風に呑気にゴーレムの方を見ていると、ゴーレムがこっちを向いた。


「あ、そっか。二人がいなくなったから……」


 認識阻害の効果で非アクティブなモンスターには基本的には襲われない。しかし、アクティブな、侵入者を倒そうとするゴーレムには(後回しにされるが)いつかは狙われる。


「うわあ……近くで見たら大きいんだなあ……」


 3メートルほどもあるゴーレム。それが俺目がけて腕を振り下ろす。




 マジで怖かった……。暫くはあのゴーレムとは会いたくない!

 死に戻った俺は、そう思った。







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