二日目の始まり
いつも読んでいただきありがとうございます!!
今後ともよろしくお願いします。
「香ーー! 朝だぞ~。朝食出来てるぞーー」
「むにゃむにゃ。あと5分……」
「だ・め・だ! そうやって生活リズムを乱すと、ゲームすらも十分楽しめなくなるぞ。さあ、起きた起きた!」
「ふにゃあ……。あれ? もう朝? 今何時?」
「5:45だ。6:00にログインするんだろう?」
「え! あと15分じゃあない! なんでもっと早くに起こしてくれなかったの?」
「何度も起こしたぞ。でもお前が『出て行って~』とか『うるさい静かにして……』とか言うから起こせなかったんだよ」
「そ、そうなのね」
「ほら、朝飯だ。お前の好きなクッキーとコーヒーのセットだ」
「おおーー! いただきます!」
…
……
………
「それじゃあ、ログインするか」
「はーい。それじゃあねー」
そういう訳で、香とは別れ俺たちはゲームの世界へ飛び込んだ。
◆
「今日は平日なだけあって人が少ないなあ……」
今日、リアルでは平日だ。だから、夏休みの概念がある俺たち学生などはログインしているが、プレイヤーはかなり減っている。
そうなるとだ、薬草採取に行くことが難しくなってしまうなあ。非戦闘職の俺にとってスライム一匹が化け物だ。どこかのパーティーに寄生するのは流石に悪いしなあ……
※寄生といっても、ドロップアイテムは直接インベントリに収納されるし、経験値は戦ったパーティーにしか分配されない。だから、寄生行為が迷惑という訳ではないが、印象は悪いだろう。
しかし、俺には究極の手段がある。これはできればしたくなかったのだが……やむを得まい。俺の必殺技を使う時が来たようだな。フレンドコールをぽちっと。
「もしもし? 香? 今いける?」
「ええ、もちろん。今から西の草原でレベル上げをしようと思ってるところよ。どうしたの?」
「ものすごく申し訳ないが、俺の護衛をして頂けないでしょうか?」
「突然敬語で話すの辞めて! うーん、ちょっと待って、パーティーの子に事情を話すから」
「パーティー? え? ええ?」
「いいよ。それじゃあ、私たちは西の門に向かっている所だから、お兄ちゃんもダッシュできてねーー! それじゃあ!」
「あ、ああ。それじゃあ……」
あいつ、ソロじゃないのか。まあ、学校の友人とパーティーを組んでいてもおかしくないか。
そんなわけで、妹に助けてもらうのが一番いい手段なのだ。うーん、兄としてそれはどうなのか……。まあ、しかたないよね!
◆
「あ、お兄ちゃーん。こっちこっち!」
香は兎(角が生えているのでホーンラビットかな?)を抱きしめている。あいつ、動物好きなのにアレルギーだったから、ペットを飼う事が出来てなかったんだよな。こういう形で動物と触れ合えたのは良かったと思う。
香の隣には香と同い年くらいの女性が立っており、その足元にはすごく大きな猫が寝そべっている。彼女が香のパーティーメンバーなのだろうか。
「どうも、セイです。妹がお世話になってます」
取りあえず、無難に自己紹介する。
「はじめまして、私は姫川 花と言います。プレイヤー名はフラウです。よろしくお願いします。香のお兄さんなんですよね。うーん、香に写真見せてもらった時から思ってましたが、やっぱり似ていますね」
「そうかな?」「そう?」
「ええ。流石は兄弟ですね。あ、香とは高校時代の友人です」
ふむ、フラウは香のリアルの友人みたいだな。そういや香が「クラスメイトの姫川さんって子、すごい子なの!」って言ってた気がしなくもない。いずれにせよ、本名を名乗ってくれたんだし、改めて俺も自己紹介せねば。
「なるほど、妹が世話になっているな。改めて俺の名前は三条誠でプレイヤー名はセイだ。よろしく! フラウは……召喚術師か?」
「ええ。それにしても、セイさんは錬金術師とはマニアックなジョブを選びましたね……」
「まあな」
「それじゃあ、お兄ちゃんも加わった事だし、Let's Go!!」
…
……
………
「へえ、その子がお前の召喚獣か」
改めて、リオカの前を歩く兎を見ながら話す。
「そうよ。かわいいでしょ。真っ白な兎さんなの! 名前はラビリンスよ」
「ラビリンスか……何故に迷宮? そういえば、目は黒いんだな。普通、白色の兎は赤色の目だよな?」
「そうね。網膜を通る血管が見えて赤色になると言われているわ。けど、ゲームだし、その辺は適当なんじゃない?」
「まあな、赤色の目だと『充血してる?』って思ってしまうしね」
「さすが三条兄妹……雑学で満ち満ちてる……」
「フラウの召喚獣はその猫か」
「はい。一応、猫キャットという名前のモンスターです」
「へえー。そうだ、これ使えるかな?」
そう言って取り出したのはエノコログサ、いわゆる雑草だな。俗称『ねこじゃらし』の名をもつ草なのだから、猫型モンスターをじゃらす事も出来るんじゃあないだろうか?
「へえ! 猫じゃらしですか。それは、どこに生えているんです?」
「そのへんに生えてるが、『植物図鑑』っていうスキルを持っていないと採取できないんだ」
「そうなんですね。早速使わせて頂きます。ほらほら、タマ~。猫じゃらしだよ~」
「にゃーん!!」
「あはは、喜んでる喜んでる!」
「また欲しくなったらいつでも言ってくれ。大量に持ち合わせているから」
「はい、ありがとうございます! ほらほら~タマちゃん~。あははは」
何事もGive and Takeだ。護衛してもらうだけでは悪いからな。ちょっとでも役に立とうではないか。今後、フレンドコールをかけないといけない時が来るかもしれないし、フレンド登録しておいた。
それにしても、あの猫の名前「タマ」って言うのか? なんというか、安直だなあ……と思ってしまった事は秘密だ。
「お兄ちゃん、あたしにも頂戴!」
「うん? ウサギって猫じゃらしにじゃれつくのかな? まあいいぞ。ほれ」
「ほらほら、ラビリンスちゃーん。あれ、食べてる……?」
「ははは、食べるのか……」
誤字報告、すごく助かります。
自分では気が付かなかったミスが見つかるたびに、自分の拙さ……というより不注意さを思い知らされます。