表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

134/147

集まらない試料

 次の日。ログインした俺はすぐに鍛冶ギルドへ足を運ぶ。ドワーフっぽい見た目の人やケモミミ美少女を横目に受付まで行く。


 「こんにちは。昨日、粗悪な枝に関する話をしたものですが。」


 「あ、はい。お話は聞いております。担当の者を呼びますので少々お待ちください。」

……

………

 「お待たせしました。」


 「いえいえ。それで、集まりましたか?」


 「はい、結構な数が集まりましたよ。インベントリに入れたまま放置していた方が沢山いまして。すでに37本集まりました。」


 「ほう!意外と幸先がいいですね。話をしてからまだ一日なのに、結構な数が集まったんですね。」


 「ええ。といっても、明日以降はあまり集まるとは思えないですが。」


 「えーと?あ、なるほど。『元々インベントリに入っていた物を買い取った』のであって、『昨日のうちに37本ドロップした』わけではないですものね。」


 「そういうことです。そういえば、『粗悪な木材』という物も見つかっているようですが、それも集めましょうか?」


 「あ、はい。お願いします!」


 「かしこまりました。」


 しまったな、粗悪な枝が欲しいと言ってしまったから、「粗悪な木材」を集めてくれなかったのか。完全に自分のミスである。ちょっと後悔。

 ともかく、37本の枝を買い取って、俺は自宅に戻ることにした。



 「で、どうしよう?」

 レアドロップが37本も手に入った事は素直に嬉しいが、実験するにあたって37本という数は少々心もとない。なにせ考え得る多くの可能性の中から正解のレシピを見つけないといけないからである。

 あとは運だけ。どんなレシピにするのが良いのだろうか……?


 ここで、遺伝子組み換えの手順を三つに分けて考えたい。

(1)「アグロバクテリウム」を取り出す

(2)それを植物や動物と混ぜ合わせ「遺伝子入りアグロバクテリウム」を生成

(3)最後に目的の植物に導入する。

 実際はもっと複雑だが、簡略化したらこの三ステップだろう。


 この三ステップを錬金術で実現する為の案として三つの物を挙げてみた。


【A案】(1)を実現するには「粗悪な枝」と水を組み合わせたようなレシピが良いと思われる。

<例>「アグロバクテリウム溶液」を作る

□粗□

粗水粗

□粗□など


【B案】(1)と(2)を同時に実現するようなレシピがあるのだとすれば、「粗悪な枝」と「導入したい遺伝子を持った生き物」を組み合わせたようなレシピが良いと思われる。ちなみにリアルでは「導入したい遺伝子を持った生き物」は植物じゃなくてもいいようだ。例えば、極地に住む魚の「耐氷結タンパク質」をコードする遺伝子を植物に組み込むことで、「寒い地方でも育つ植物」を作ることが出来たりするらしい。

<例>「魚の遺伝子入りアグロバクテリウム」を作る

□粗□

粗魚粗

□粗□など


【C案】(1)と(2)と(3)を同時に実現するようなレシピがあるのだとすれば、「粗悪な枝」と「導入したい遺伝子を持った生き物」と「組み込む植物」を組み合わせたようなレシピが良いと思われる。

<例>「魚の遺伝子入り(イチゴ)」を作る

魚粗魚

粗苺粗

魚粗魚など


 どれが正解なのだろう……?普段なら「全部試すぞヒャッホー!」ってノリで実験するんだが、試料が少ない以上、慎重に行いたい。


 取りあえず【A案】から試してみようか。

□□□

水粗水

□□□

→ゴミ


□水□

□粗□

□水□

→ゴミ


□□水

□粗□

水□□

→ゴミ


水□□

□粗□

□□水

→ゴミ


□水□

水粗水

□水□

→ゴミ


水□水

□粗□

水□水

→ゴミ


水水水

水粗水

水水水

→ゴミ


 ここまでで、7本の枝を失った。


□□□

粗水粗

□□□

→ゴミ


□粗□

□水□

□粗□

→ゴミ


□□粗

□水□

粗□□

→ゴミ


粗□□

□水□

□□粗

→ゴミ


□粗□

粗水粗

□粗□

→ゴミ


粗□粗

□水□

粗□粗

→ゴミ


粗粗粗

粗水粗

粗粗粗

→ゴミ


 ここまでで、累計31本の枝を失った。残り6本だ。


 「対称のレシピじゃないのか、それとも『水』以外の液体なのか……。そもそも、【A案】では駄目なのか……。うーむ、分からん!」

 そういえば、この世界に「菌」や「細菌」の存在が明かされたのは地下水路の先での話だ。「粗悪な○○」をバクテリア由来を思っていないのかもしれない。

 良いところでもあり悪い所でもあるのだが、ゲームの世界で起こる現象は結局の所、運営のさじ加減で決まる訳で。もしAWTのスタッフが「アグロバクテリア(で合ってたっけ?)」について知らなかったら、この世界でGM(Genetically Modified)植物を作れるはずがない。


 もう少し粘るつもりではあるが、如何せん試料が全く足りない。

 という訳で、実験は明日に持ち越すとして、今日はのんびり温泉地をめぐるとしますか。





投稿が開いてしまって申し訳ございません。

今後とも生暖かい目で見守って頂けると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ