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一方そのころ ~クリムゾン=サンライズ編~

閑話です。主人公の友達である紅陽登(クリムゾン=サンライズ)のお話です。


 我が名はクリムゾン=サンライズ。AWTで最強になるべく、武者修行に励む者だ。


 ……さて、お気づきの方も多いと思うが、俺は所謂(いわゆる)「中二病」だ。ちょっと前までは大学生で中二病なのはMinor(マイナー)な部類にclassify(分類)されていた。しかし、俺はこの現実には、パラドックス(逆説)が隠れていると感じている。逆説、すなわち「正しそうな前提・推論から一見違った結論が導けること」である。

 皆はSFやラノベを読むことがあるだろうか? 少なくとも、書店にはSFコーナーやラノベコーナーが設置されている事から読者層は厚いという事が分かる。これらの本を読む時、読者は自分を主人公に投影している。実際、主人公が裏切られたら悔しいと感じるし、主人公が敵を倒したら達成感を覚える。物語を読むとは、本質的にそういう行為だ。

 すなわち、ラノベの読者層は自らが主人公のように活躍する様を想像しているのだ。これは中二病と言っても過言ではないのではなかろうか。近年、チート系主人公が流行なのも自らが強くありたいということの願望ではなかろうか!

 この世の中の多数の人物が「中二病」であり、大学生で中二病なのはなんらおかしなことではないと思うのである。


 ところで、俺は「ちょっと前までは(・・・・・・・・)大学生で中二病なのはMinor(マイナー)な部類にclassify(分類)されていた」と述べた。近年、大きな出来事があったのだ。それが(Full)(Dive)(Virtual)(Reality)ゲーム・またその技術を使ったMMOの登場だ。

 このようなゲームでは所謂「なりきり」のようなプレイヤーが登場する。「騎士になり切ってプレイ」や「魔王キャラになり切ってプレイ」などのプレイスタイルをする人々である。これは我々中二病と言われていた人々が思う存分活躍できる場という事ではなかろうか!


 我々は今日も中二病全開でこのゲームを楽しむ! 本当は中二病だけどそれを隠している諸君。中二病というのは恥ずべきことではないのだ! さあ、皆も我々「アルカディア(理想郷)」と共にこのゲームを楽しもうではないか!




 パチパチパチパチ!

「うお~! いいね! 俺も中二病全開でプレイしたいな!」

「俺も俺も。言われてみれば中二病って何ら恥ずかしいことではないよな!」



「勧誘、ご苦労だった。それにしても、言葉を操るのがうまくなったな」


「ありがとうございます、サファイヤ兄貴!」


「兄貴はよせ。俺たちは同士であり、仲間だ。互いに協力し、この世界の覇者になるんだろう?」


「ああ!!」


 我が話しているのはサファイヤ=フォトン兄貴だ。彼と知り合ったのはあるMMORPGゲームでレイドボスイベント中に話した時だった。当時、自分が「中二病」であることにコンプレックスを抱いていた我は、堂々と中二くさい発言をする彼に驚いた。そして、「どうやれば、そのように堂々と振舞えるか」と尋ねたのだ。彼は、中二病というのは恥ずべきことではないと我に説いた。その時以来、我は彼に付き従う事を選んだのだ。

 偶然にも、リアルの家が近かった事もあり、彼とはリアルでも頻繁に会ってディベート(議論)を楽しんでいるのだ。


「それでだ、クリムゾンよ。この世界の覇者になるのに必要となる三つの力があると思うのだ。分かるか?」


「ふむ。まずは戦力だな。この世界の理が戦いを望んでいる以上、その住民たる我々は戦力を得る必要があるのは」


「正解だ。後の二つは?」


「……すみません、何っすか?」


「二つ目は情報力だ。ボスモンスターの突破方法・アイテムの種類と効果・少しでも良い装備。これらの情報を掴むことが我々をより一層の高みへと導いてくれるだろう」


「なるほど!! 確かにそうですね」


「三つめは行動力だ。躊躇とは則ち遅れだ。遅れとは則ち負けだ。我々は世界一となるべく、行動し続けなければならない」


「なるほど」


「この中で、我が最も大切だと思っているのが情報力だ。この世界に流れる情報を我々が掌握する必要があるのだ」


「なるほど。しかし、(うつつ)の世のサイバー空間にはいわゆるwikiなどに攻略情報が記載されるではないですか。どう対処するんでしょう?」


「それはだな……我々で『クランブログ』を作るのだ!」


「ブログ……ですか?」


「ああ。アルカディア公式ブログに、wikiには載らないような攻略情報をいち早く記載する。皆がそこをみるようになれば、wikiはただの雑談場と化すであろう」


「なるほど。そうなると、我々は常に時代の最先端に生きねばいけないですね」


「いかにも。その為にも、強く優秀な戦士たちを我々のクランに勧誘しているのだ。『この世界を楽しめるのはアルカディアの加護があるからだ』と人々に思わせる事が我々の目標だ!」


「応!」



 こうして、我々の血を流さぬ世界征服は始まった。「アルカディアの加護」かあ。なかなかかっこいいこと言うなあ。そして、やっぱりサファイヤ兄貴の考えは俺の一歩先を行くものだ。




 我々の活躍を綴った本作『アルカディアの加護が降り注ぐまで』をこれからもよろしくお願いします!





※『アルカディアの加護が降り注ぐまで』は時折「一方そのころ」という形で登場するかもしれません。気長にお待ちください。



いつも読んでいただきありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします。

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