フレアシティー
ちなみに、フレアとは「太陽フレア=太陽の紅炎」です。
「ほう、ここが……」
「噂の……」
「「フレアシティー!」」
俺とリオカが今立っているのはフレアシティーと呼ばれる町。AWT第三の町である。ゲートシティーの東にいるボスである「火竜」を倒したことで行くことが出来るようになった町である。
ゲートシティーは「中世ヨーロッパ」というイメージ。アクアシティはその名の通り「町中に水路が張り巡らされているヨーロッパ風の町」であった。では、フレアシティーはというと……。
「温泉街だな。」
「温泉街ね。家族旅行で行った温泉を思い出すわね。」
「懐かしいなーー!」
という訳で、見た目も機能も「温泉街」であった。といっても、ゲーム内では服を脱ぐことは出来ない。露出度が低い水着を着用する必要があり、その代わり混浴である。まあ、お風呂くらい熱いプールと言っても差し支えないだろう。また、街中には温水が流れる川もあり、ギルドが経営する足湯として利用されている。もはや温泉街以外の何物でもない。
「早速、足湯を利用してみるか!」
「そうね!行きましょう!」
…
……
………
「あら、意外とすいてるのね。」
「多くの人は先にモンスターと戦いに行ったのでは?」
「なるほど。それじゃあ、私達はのんびり使わしてもらいましょうか。」
「いらっしゃいませ。どのコースをご利用されますか?」
「「……コース?」」
「こちらのパンフレットをご覧ください。このようなコースがご利用可能となっております。」
さくっとコース:100ゴールド/10分
ゆったりコース:400ゴールド/60分
のんびりコース:1000ゴールド/1日の間いつでも。途中退出も可。
「また、足湯にもいくつか種類があります。」
1)ノーマル:普通の足湯:通常料金×1.0
2)ジャグジー:下から噴き出す泡が足を癒す!:通常料金×1.5
3)サンダー:ビリビリとした刺激が足を癒す!:通常料金×2.0
4)ドクターフィッシュ:ドクターフィッシュが泳ぐ足湯:通常料金×2.0
「何故お湯の中をドクターフィッシュが泳いでいるのかはこの際無視するとして、旅人の俺達にもドクターフィッシュは効果があるのか?」
ドクターフィッシュは確か角質を食べてくれるとかそういう効能だよな?
「角質とかそう言ったものがないこの世界においては旅人も住人も関係なく効果は無いですね。」
「いやいや、だったら何故?」
「ツンツンという刺激がマッサージになるのと、あとは気分です。」
「……はい?」
「気分です。」
「……はい。」
「それで、どちらのコースになさいますか?」
「どうする、リオカ?」
「どれでも……。あ、でも個人的にはサンダーってのが気になるわ!」
「おーけー。時間の余裕は?」
「そこそこあるわよ。」
「それじゃあ、ゆったりコースのサンダーでいい?」
「オッケー。」
「かしこまりました。では、ステータス画面を見せて頂けますか……。はい、オッケーです。」
「何をしたんだ?」
「アップデートで利用可能になった新機能です。この世界に居る全員に固有のバーコードが割り振られましたので、こうして入り口と出口でチェックすれば誰が何時間利用していたのか分かるようになります。」
「革新的なような遅れているような……。」
◆
「ほえーー!これはいいわね!」
「だなあ!リアルでも欲しいくらいだ!」
電気風呂、いや電気足湯か、を堪能しているのだが、これがまた予想以上に気持ちいい。まず、第一印象としては「なんかピリピリしてるな」という物。マイルドな静電気と言った感じだ。暫くすると、筋肉がほぐれてきて、疲れが癒えていくのを実感できた。プラシーボ効果だろうか?それとも本当に効果があるのかな?そもそも、リアルの電気風呂もこうなのか、それともゲームだからこその効能なのかも分からない。ともかく、気持ちいいことは確かだ。
「男女が分かれていないからか、カップルがちらほら見受けられるわね。」
「だな。おのれリア充め……。」
「「爆発しろ!」」
ここは剣と魔法の世界。リア充を狙って攻撃する魔法とか誰か作ってないのかなあ?ある訳ないか。
◆
足湯を堪能した後は、いよいよセーフティーエリア外を見学である。
そこで、町の端の門から出たのだが、そこはマグマの川が流れる灼熱地獄だった。AWTでは、痛みや暑さ(寒さ)をある程度カットしてくれるのだが、それでも暑さを感じるのだ。このような地形をリアルで体験したら物凄い暑さなのだろう。
あれ、でも足湯はしっかり熱かったよな?どうなっているんだろう?セーフティーエリア内と外で設定を変えているのだろうか?ちょっと気になる。
「あれ?リオカ、リオカ。」
「どうかした?」
「HPが半分になっているのだが……?」
「え?!うわ!私も1/4削れてる!なんで!」
「異常状態『乾燥』。これか……。」
ステータスを確認すると、どこかで聞いたことがある名前の異常状態に罹っていた。
「火傷じゃなくて『乾燥』なのね。ひどくなったら『脱水』になったり?」
「かもな……。どうしよう。戻る?」
「戻る!」
お読み頂きありがとうございます。
今後とも本作を楽しんで頂ければ幸いです。