熟練度アップを目指して
いつも読んでいただきありがとうございます。
HP微回復薬はヒールウィードを1本しか使わない分、得られるスキル経験値は1だ。一方、HP回復薬はヒールウィードを4本使う分、得られるスキル経験値は2だ。
また、成功確率はどちらも等しく0.5のようだ。
俺はどちらを作るべきだろう?
消費するヒールウィードの本数に対する得られるスキル経験値の割合を重視するなら絶対にHP微回復薬を作る方が良い。計算上、経験値を100得るのに使うヒールウィードは200本:400本になるのだから。
一方で、要する時間に対する得られるスキル経験値の割合を重視するならHP回復薬を作る方が良い。計算上、経験値を100得るのに行う合成回数は200回:100回になるのだから。
一刻も早くスキル経験値を上げたい俺からすればHP回復薬を作るべきかもしれない。
だが、ヒールウィードを入手するにはかなりの時間を有する。一度西の草原まで行く必要があるからだ。それを考慮すると、HP微回復薬のほうが適しているかもしれない。
うーん、どうしよう……。HP微回復薬の方がいいかな?やっぱりヒールウィードを手に入れるのにかなり時間がかかってしまう。HP微回復薬を作り続けることにしよう。
◆
数時間、延々と同じ作業を繰り返すのは苦痛だ……。やっぱり錬金回数が少なくて済むHP回復薬を作るべきだったかな……?
いや、駄目だ。今は耐える時期だ。何としても熟練度を上げておきたい。さあ、頑張ろう。合成、合成、合成……。
「なるほど、熟練度1→2に上げるのに経験値11必要なのか」
「うん? 熟練度2→3に上げるのには経験値29必要なのか……」
…
……
………
「はあ、熟練度5→6に上げるのには経験値112も必要なのかよ……」
◆
そう、スキルの熟練度はなかなか上がってくれない。しかもそんなに成功確率が上がっている訳でもなさそうだ。うーんこのまま続けるのは酷だなあ。しかもヒールウィードが底をつきそうだ……。よし、今日はこのあたりで切り上げるとするか。
「という訳で、ただいま戻りました~」
「すごい長い間集中していたわね……。えっと、3時間だから3000ゴールド頂戴ね」
「はーい。そういえば、出来たHP回復薬って買い取ってもらえる?」
「はい、確かに3000ゴールド受け取ったわ。買取はできるわよ。でも自分の分は残しておいた方がいいと思うよ。敵に襲われた時に命拾いになると思うし」
「ああ、その心配はないっす。デスペナ受けていない状態でも、スライム相手にワンパンされるんで、HP回復薬なんて飲む暇がないんだ」
「え、スライム相手にワンパン? 最下級の防具でもワンパンは防げると思うのだけど……」
「防具買ってないんで! だって結構高いじゃあないか」
「そ、そう? でもそんなんでよくヒールウィードを採りに行けたわね」
「リポップした敵はすぐに他のプレーヤーが倒してくれるからね」
「な、なるほどね……。今しかできない戦法ね、それは」
「そうだな。今後は知り合いのパーティーに護衛してもらうとかなんとか考えるよ。まあ、念のためHP回復薬とHP微回復薬をそれぞれ5本ずつくらい取っておいて、それ以外を売るとするか」
「はーい。それどれ……。うわあ、これはまた沢山の……。HP微回復薬200本ね。一本50ゴールドだから10000ゴールドよ」
「了解。お、それなりに儲かったな、この3時間で。水瓶代も取り戻せたって感じだな」
「そうね。というか、これだけの時間ずっと錬金に集中していられるのがすごいと思うわよ。その対価としては当然受け取るべきお金ね」
「それもそうか。そうはいっても、ある意味時給2000円のバイトをしたようなものだろう? そう考えたら儲かりもんだな」
「ははは……ゲームを仕事みたいに考えるのはあなただけよ……」
「うん? なんか言ったか?」
「なんでも。それじゃあ、引き続き頑張ってね」
「おう」
◆
さて、また西の草原まで来た。うーん、少しづつプレーヤーが減っているような気がするぞ。このままでは、薬草採取が出来なくなるな。今日明日は薬草採取に励むとしよう。
「これは……ブタクサか。必要ないな」
「これは、シソじゃあないか。取っておこう」
と、始めの内は真面目に鑑定してから収集していたのだが、鑑定の時間がもったいないと思い。
「あ、鑑定可能みたいだな。鑑定する前に収穫!!」
というように、ヒールウィードも雑草もまとめて回収することにした。
作業は効率化され、午後の間にかなりのヒールウィードを手に入れることが出来たのだった。その分、手持ちの雑草もたくさん増えたけどね!
◆
ゲームへのログインは最長でも一日14時間となっている。これは、睡眠や食事を忘れてゲームに熱中しないようにだ。朝の6時からゲームを始め、お昼に1時間の休憩をはさんだ俺は夜の9時にはログアウトしなくてはならない。
ちなみに、ゲームの世界において昼夜の概念はない。もしも「夜しか出現しない敵」のようなものを作ってしまうと「夜更かし」する必要が出てきてしまう。ユーザーの健康のためにも、昼夜の概念を無くしたそうだ。
9時になる少し前にはログアウトし、せっせと夕食を整える。といっても作り置きしておいた夕飯を並べるわけだが。丁度、香もログアウトしてきたので二人で夕食を食べる。
「どうだった?」
「俺はずっと薬草採取だよ。雑草も大量に集めてしまったがな。お前は?」
「私はうさちゃんと一緒に狩りよ。召喚獣もレベルアップするからすごく楽しいよ。自分の子供が良い成績取って喜ぶ親の気持ちってこういう事なのか~って分かった気がする」
「そ、そうか」
「そういえば、統計情報見た?」
「なにそれ?」
「公式が発表している統計情報を載せてくれているの。4時間に一回更新らしいわ。それで、ログアウト直前に統計情報を見たんだけど、面白い項目があってね」
「ほう」
「一つ目が『最多死に戻り数:119回』もう一つが『最多アイテム所有数:8958個』ってやつ。これ両方お兄ちゃんじゃあない?」
「まじか、もっと死に戻ったと思ったが、200回超えてなかったんだなあ。アイテムは……俺かな? ヒールウィードが800本だったから、その9倍で7200本くらいのアイテムを所持していると思う」
「うーん、じゃあ微妙ね。でも、間違いなくお兄ちゃんだと思うんだけどなあ……」
「ちなみに、それで一位になっていいことあるの?」
「ないわよ」
「それなら別に気にしなくていいだろう」
「まあね」
誤字脱字あれば教えて頂けると助かります。
今後とも本作をよろしくお願いします。