銃の威力とミスリルの特性
「まずは発火するか確かめるよ。」
「うまくいけばいいのですが……。」
地面に「道化師の火」と「火の魔石」を置き、合言葉を唱える。
「Burn」
合言葉を唱えた瞬間、火の魔石が赤く光って発火。道化師の火に引火して大きな火を上げた。
「成功!上手くいきそうだな。」
「わあ!粉塵爆発の実験みたいーー!上手くいきそうで何より。あとは、武器の方が壊れなければいいのですが……。」
「それは耐久値的な問題で?」
「はい。一応、衝撃を受ける部分はミスリルで作っているので、すぐには壊れないと思いますが。」
「ミスリル?」
イメージ的には高価な金属だよな?「魔力を流しやすい金属」とか「硬すぎてドワーフじゃないと操れない」とかそんなイメージがあるかな。
「ミスリルは、固さに特化した金属なんです。耐久値が減る事はほとんどなく、さらに耐久値が0になるくらい大きな衝撃を受けても一度だけ耐久値0.1で耐えてくれる『粘強』という特殊効果が付与されます。」
「へえーー!そりゃ凄い。けど、結構高いんじゃあ?」
「鉄の50倍はします。」
「50倍……。それは……。」
「その分、一度買えば修理する必要がない訳ですから。」
「なるほどな。それじゃあ、早速。」
「あ、ここにあるロックを外して、そこから火薬を入れて。そうですそうです。それから弾丸を入れて。」
「なるほど。で、ふたを閉じてロックすればよしと。」
「はい。ばっちりです。それじゃあ敵を探しましょうか。」
「そうだな……。む。あそこの草陰。何かいない?」
「えっと。あらスライム。」
「早速使ってみるか。」
「うーん、まあそうですね。あ、でもその鎧は外したほうがいいかもですね。」
「うん?ああ……だよなあ。」
俺が来ていた鎧はこれだ。
代償の鎧:癖あり防具。没。
<耐久値>
100.0
<効果>
PA(物理攻撃力):×0.0
MA(魔法攻撃力):×0.1
PD(物理防御力):×2.7
MD(魔法防御力):×2.3
M(異常状態耐性):×1.2
<特殊効果>
なし
物理攻撃力が皆無になっている俺が弾丸を使っても敵にダメージが入るか怪しい。やむを得ない……か。
スライムはヒマワリさんに倒してもらい、その間に俺は鎧を脱ぎ、初期装備=半袖&長ズボンに戻る。さて。
「それじゃあ、探そうか。待たせてすまない。」
「え、初期装備。何も持ってないんですか?」
「買ってないなあ。」
「買ったらいいじゃないですか!ゴールドも手に入ってるんでしょう?!」
「俺、『服とかどうでもいいわーー』ってタイプでして。」
「ああ、リアルでもいますねえ。友達が『うちのカレさあ。顔はそこそこで性格は優しく、しかも将来有望なのに、髪型と服装が壊滅的にダサいのよね~』って愚痴ってましたわ~。男の人の中には、ファッションに無頓着な人って結構いるんですかね?ってそういう問題じゃなくて!装備は買いましょう!絶対に!」
「だってさ。そう言うのって買ってしまったら使わなきゃって思ってしまわない?俺は今みたいに、戦闘とは無関係な人生を歩みたいんだよ……。」
「言わんとしている事は分かりますけど……。いや、やっぱり分からないわ。」
「うん、俺も自分で何が言いたいのか分からなくなってきた。ともかく、これで攻撃力のデバフは無くなったわけだ。じゃあ、早速……。お、あそこにスライムが。」
「やっちゃいましょう!」
「狙いを定めて……Burn!!」
パキューン!パキン!
うん?パキン?変な音がなった気がしたが、気のせいだろうか?
「ポヨンポヨン!ポヨ?ポヨヨヨッ!!」
銃弾がスライムを貫き、スライムはポリゴンと化した。
「ふ!雑魚が!」
「スライムは雑魚だと思いますが……。」
「うぐ!現実を押し付けないでくれ……!」
「え……というか、武器が……。」
「へ?」
見ると、ミスリルの武器が虹色に輝いていた。な、なんだ?まさか、俺の魔力に反応して……?!やべ、クリムゾンみたいな思考になってしまった。
何が起こっているのか分からない俺とは対照的にひまわりさんは納得した表情をしている。
「な、なるほど……こうなってしまいますか……。マジかあ……。」
「えっと、何が起こってるんです?あ、鑑定すりゃ分かるか。鑑定!」
シールドガン、パーツ1:完成版。パーツ1
<耐久値>
0.1
<効果>
なし
<特殊効果>
粘強(発動中)
「な!耐久値が0.1?粘強が発動中?これって……。」
「そうです。耐久値が0になった時、一度だけ耐久値0.1で耐えるというやつです。」
「じゃあ、今虹色になっているのは?」
「それが『耐えている』状態です。先ほどは説明してませんでしたが、ミスリルの特殊効果『粘強』は、耐久値が0になると耐久値が0.1で復活した上で10秒間破壊不能になります。その間に別の武器に切り替えましょうという訳です。」
「なるほど。つまりこれは……?」
「一度壊れたという事ですね。もうすぐ……ほら。」
「え?消えた!」
「10秒間の破壊不能時間が終わると自動的にインベントリに入ります。これも『粘強』の効果の一つです。」
「へえ……。アフターサービスまでしっかりしてるんだな、『粘強』って。」
「ミスリルは高価な分、基本的には破壊不可能という事ですね。」
「なーるほどな。この耐久値が減った部品の修復は簡単なのか?」
「鍛冶室へ行けば簡単ですよ。」
「了解。じゃあ、任せた。」
「はい、任されました。それにしても、すごい威力ですよ、これ。」
「だな。」
「失礼ながら、セイさんはあまりピンと来ていないのでは?」
「……はい。実はそうです。」
「基本的に、ミスリル製品はこんなに簡単に壊れません。それこそ、ウォータードラゴンの攻撃を喰らっても壊れることは無いです。それが壊れたんですよ!一回の発砲で!つまり、この銃弾を至近距離で喰らうと……。」
「ドラゴンの攻撃よりも大きな物理攻撃になると?」
「はい……。」
「理解した。理解はしたのだが、理解できないぞ。そんな威力なら俺はなぜ後ろ向きに吹っ飛ばされなかったんだ?」
「確かに……。エネルギー保存の法則に反してますね。まあ、そこはゲームですし。『フレンドリーファイヤ(自傷も含む)』は起きないのでしょう。」
「ああ。そうか。自分の武器で自分が傷つくことは無いのか。納得。ちなみに、エネルギー保存の法則ではなく、運動量保存の法則だよ。」
「……またやってしまった!」
「ドンマイ!」
いつも読んでいただきありがとうございます。
後程活動報告に書こうと思っているのですが、Twitterアカウントを作成しました。良かったら見てください。よろしくお願いします。