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以心伝心?渡りに船?

 ひまわりさんもログインしているようなので、早速話をしようと錬金室から出た俺。錬金室の料金を払ったついでに、火の魔石を購入する。


 光の魔石にライトと唱えたら光るように、火の魔石に「Burn(バーン)」と唱えるとマッチ程の火が出る。発熱石から火を出すには錬金や家事スキルが必要だが、火の魔石はそのような制限がない。その代わり、火の大きさは小さく、調理には使えない。


 何故この事を知っているのか。実は光の魔石を購入した後、「火の魔石はどうなんだろう?」と思ってローズさんに聞いてみたのだ。曰く、火の魔石も照明として使えるけど、効率は良くないとのことだった。

 詳しく言うと、光の魔石は魔力(?)を100%の効率で光に変換するのに対し、火の魔石は消費魔力の内、50%は熱に変換され、50%を光に変換されてしまうようだ。例えるなら光の魔石はLEDであり、火の魔石は白熱電球といった所だろうか。


 そして、調理に使う発熱石は火の魔石を特殊なレシピで加工してできるそう。火の魔石を発熱石にすると、長時間物を温める事が出来るそうだ。


 結局、火の魔石はライトとしてもコンロとしても使い辛く、使い道は魔法付与武器の作成以外になかったそうだ。



 そんな事を思い出しているうちに、鍛冶ギルドに到着した。受付の人に軽く会釈してからひまわりさんに会いに行く。


 「ちわーー!」


 「セイさん、こんにちは!丁度見せたかったものがあるんです!!」


 「お!シールドソードの完成形?」


 「はい!武器にも盾にもなる物を作っていたのですが、よく考えたらセイさんって剣を使えないじゃないですか。物理攻撃力が低いと思うので。」


 「ああ……そうだな。実を言うと、こんな防具を妹からプレゼントしてもらってね。」


 「うわ!すごいクセありの防具ですね!防御特攻の防具ですか、なるほど。それでですね。そんなこともあろうかと、こんな物を作ってみたんです!」


 「一見ただの盾に見えるが……?」

 目の前に出されたのは片手で持てるサイズの盾だった。それ以上でもそれ以下でもないように見える。


 「裏を見てみてください。」


 「裏。こ、これは……!」

 裏、すなわち持ち手が付いている側を見ると、何やら仕掛けが組み込まれていた。長い筒状の構造物が盾に走っている。その筒の片側を空けたり閉じたりできるようだ。

 これは、もしかしなくても……!


 「想像通りかと。その筒に火薬と弾丸をセットすれば銃として使用できます。爆薬が見つかっていないので動作確認はできていませんが、いつか爆薬が完成したら使ってみて下さい。ちなみに、一度インベントリに仕舞ったらバラバラになっちゃうので、組み立て方を覚えないと使えないのが玉に傷です。あ、その盾はプレゼントというか、借りていた分の返済というか。」


 「おう。ありがたくいただくよ!いやあ、以心伝心というか渡りに船というか!流石だね!」


 「えっと?」


 「これ!何だと思う?」


 「綿……ですか?鑑定しても?」


 「どうぞどうぞ。」


 「道化師の火……これってリアルで言うところの"マジシャンが火を出すときに使うやつ"ですよね!」


 「そうそう。」


 「物質名はニトロセルロースでしたっけ?燃焼性が高く、煤を出さない様子から無煙火薬とも呼ばれる!」


 「そういうこと!という訳で、早速使ってみたいのだが、良いかな?!」


 「是非!それじゃあ、私も準備しますね……。あ、弾丸も作ってありますので使ってください。」


 「あ、こりゃどうも。」


 ひまわりさんに先に言われてしまったが、「道化師の火」の正体は火薬の一種なのだ。そこで思いついたのが銃に使うという事。

 銃の構造をものすごくあっさり説明すると、底のある円柱があり、底に火薬をセットし、円柱内に弾丸をセットする。底に入れた火薬が燃焼すると、固体→気体という変化が生じ、結果として体積が急増する。その力を利用して弾丸を飛ばすという訳だ。(今現在使われるピストルなんかは火薬は弾丸側に入っているらしい。火薬と弾丸が別々になっているのは江戸時代に使われた火縄銃などの古い物である。)


 この過程で問題となるのは二点。まず、そこに入った火薬をどう引火させるのかという問題。二つ目は密閉空間内でどう燃焼反応を引き起こすのかという問題。

 一つ目の問題は、火の魔石で解決するはずだ。火薬と共に魔石も入れておき、「バーン」と唱えたら火薬が引火するはずである。

 二つ目の問題。密閉空間内=酸素がない空間で物を燃やす方法についてだ。普通、物は密閉空間内では燃えない。だけど、ニトロセルロースは密閉空間内でも燃焼する事が出来る優れものである。二つ目の問題もクリアである。



 「確か、ニトロセルロースって、医薬品にもなるんでしたっけ?」

 西の草原へ向かう道中、ヒマワリさんがそんな事を言い出した。


 「え?そうなの?」

 そんな話は聞いたことが無い。無論、自分の(雑学の)知識が完璧とは思わないが、そんな興味深い話、聞いたことが無いぞ?


 「はい!確か血管を広げる効果があるって聞いたことがあります!」


 「へーー……?いや待て、それってニトログリセリンの事では?」


 「……そうでしたっけ?」


 「ああ。同じく危険な物質で、かの有名なノーベルさんがダイナマイトを作った時にも使われた物質。危険なイメージが強い反面、狭心症の治療薬にもなる。確か体内で硝酸になってその硝酸がどうこうする……はず。」


 「……。雑学を自慢しようと思って話を振ったら、それが間違いで、しかも相手の方が詳しかった。恥ずかしい……。というか屈辱です……!」


 「いや、俺も自信ない!間違ってるかもしれないから、リアルに帰ってから調べといて!いやあ、でもその恥ずかしい気持ち、痛いほどよくわかる。俺もそこそこ雑学には詳しいから、ついつい披露しちゃうんだよね。で、相手の方が詳しくてショックする。あるあるだな。」


 「はい……。つい雑学を知ってしまうと披露したくなっちゃうんです。」


 「分かるわ~。痛い目に遭ったらその時だけは『暫くやめよう』と思うのに、何故かまた同じ過ちを犯してしまう……。」


 「まるで中毒。私達、雑学中毒なんですかね。」


 「言い得て妙だな。」



 そうこう話している内に、セーフティーエリアを抜け、草原に到着した。さて、うまくいくといいな!




いつも読んでいただきありがとうございます。

今後とも本作をよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分もこんな経験あってすごく刺さりました。 気を付けないと… とか言ってもまたやらかしてしまうのはなぜだろう…?
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