タンポポコーヒーを作ろう1
タンポポコーヒーの作り方は非常にシンプル。根を洗い、灰汁抜きし、天日干し。その後、フライパンで炒って、仕上げはコーヒー同様ドリップする。
「根を洗う必要が無いのはありがたいな。灰汁抜きはどうしよう?どこかで灰を売ってないか聞いてみるか。それから、問題は、天日干しだよなあ……。マイホームに放置でいいのかな?うーん、どうなるんだろう?」
そこが心配だ……というか何が起こるか分からないのだ。もしかすると、耐久値が0になって消えるかもしれない。もしかすると、耐久値が0になった瞬間、乾いた根というアイテムに変わるかもしれない。こればっかりは試してみないとしょうがない。
◆
何本かタンポポを採取した後、南へと歩いていく。毒を使ってマイホームへ死に戻った方が楽かもという考えが頭をよぎったが、それをするくらいなら水中で何かを探そうと決心する。水中で1分いるだけで家に帰ることが出来るってある意味すごい便利じゃない?
水中にもぐり、クロロを採取していたら、いつの間にか家に帰ってきていた。無事(?)帰ってこれてよかった。それでは、早速行動開始。
まずは、錬金ギルド。
「灰汁抜きの為の灰ってギルドで売ってたりしません?」
「灰で灰汁抜き?それは……出来るのかしらね?」
「え?逆に何故出来ないと?」
「すごくメタい発言になるけど、灰汁抜きって塩基性の水溶液につける事で、植物に含まれる毒素や不味い成分を取り除く事よね?そこまで忠実に再現されてるのかしら……?」
「……物凄いメタ発言でしたね。言わんとしている事は全面的に理解ですが。うーん、確かにそうだよなあ。いっそのこと、錬金してみるとか?」
「というと?」
「灰と水と灰汁抜きしたい植物を配置して錬金。どうかな?」
「うーん。悪くないんじゃない。試してみれば?あ、でも、どんな実験をするつもりなのか誰かに教えるのは良くないわよ。レシピ、盗まれちゃう危険性があるんだから。」
「あ……。ま、まあ。そん時はそん時ですよ。では、錬金室を使わせてもらうぞ!」
「はいはいーー。いってらーー。あら、そもそも、物を燃やしても灰なんて残らないわよね……?どうするのかしら?まあいっか。」
◆
さて、早速俺は灰を用意するべく、何故かインベントリに入っていたエノコログサを火に近づけた。
「……何故に燃えない。」
そう。何故か燃えなかった。エノコログサは火の中で炙っているにもかかわらず、全く持って引火しない。
「ゲームの世界って、時に残酷……。」
そんなことをついつい愚痴ってしまう俺であった。
「よし、フライパンに入れたらどうなる?」
フライパンを介してなら、物を加熱できる。これは立証済みである。ならば……。
「いや、よく考えたら、当たり前だよな。」
俺の目の前には、萎れたエノコログサがフライパンに乗っていた。フライパンの上で加熱は出来てもフライパンの上で物が燃えるという事は無い。
「いや、無いことないじゃないか!フランベがあるじゃないか!」
フランベ。アルコールをフライパンに注ぎ、それに引火させる技法である。プロの料理人とかが、やっている様子をテレビなどで見たことがあるのではなかろうか?かく言う俺も、家庭内での食事係としてフランベの練習をしたことがある。では早速。
「ええ……引火しない……。」
そう。なぜか、アルコールに火が移らなかった。おかしいだろ!!つい叫びたくなるが、納得のいく結果ではある。
例えば、アイテムに引火させることが出来るとする。これはつまり、木造建築にも引火させることが可能という意味になる。それって、危険だよな。
後から知ったが、セーフティーエリア外では一部のアイテムは引火するらしい。例えば、アルコールを使って火魔法の威力が増大するなどの事例が散見されるようだ。だが、どちらにしても、灰は残らないそうである。
「いや待てよ、確か、『松の枝』には『炎に入れると、高温になる』みたいな効果が書いてあったよな?あれって、燃えるという意味ではなかろうか?」
『松の枝』を火の中に入れてみた。確かに、枝を入れた瞬間炎の威力が増した気がする。なんか色も変わったし。
枝は、急速に耐久値を減らし、一分と経たないうちに、壊れてしまった。
「壊れた!でも灰が残ってない!なんで!」
失敗だった。なんでだよう……。
まさか灰を見つけるのに、ここまで苦労するとは。このことがローズさんにバレたらと思うと、ものすっごく恥ずかしい。だって、錬金室行ってきま~す!って言っておきながら「材料、見つかりませんでした~」って言うの、恥ずかしすぎないか。
「はあ、情報無いか、リオカにでも聞いてみるか。ってなんかそれも恥ずかしい。うーん、リオカが一発でシュレディン魔石を見つけたみたいに、俺にも何かすごいアイデアが降ってこないかなあ。はあ、そういやあの日、俺が試した配置は全部ゴミになったのに、リオカは一発で成功させたんだよなあ。もしかして俺、錬金術向いてない?!」
つい、そんなこと思ってしまったが、何を弱気になっている。ゴミを作ったという事は、『このレシピは存在しませんよ』という事を証明しているようなものだ。それは決して意味のない行為ではないのだ。
「そうだよな。ゴミも利用してやる!っていう意気込みで頑張らないとな!……うん、俺なんか良い事言わなかったか?」
いや、待て。違う。自惚れたんじゃあない。なにか、素晴らしい案が浮かんだ気がしたんだが……。
「ゴミも利用してやる……?あ。」
もしかして?
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