ゴミをプレゼント?
「セイさん、ずるいですよーーー!」
ひまわりさん、激おこ真っ最中である。むすっとした顔で頬をプクーと膨らませているその顔は、(怒っている彼女には悪いが)全然怖くない。むしろ可愛らしい。
あれだな。威嚇中のフグみたいな?つい、ほっぺをぷにぷにしたくなる。もちろん、そんなことしないし、そもそも出来ない。体に直接触れるには相手に許可を出してもらう必要があるのだ。
「『可愛らしく膨らんでるほっぺぷにぷにしたいのでタッチ許可ください』なんて口が裂けても言えないよな。」
「ふえ?!可愛い?そ、そうですか……。って、そんなお世辞で誤魔化されると思うなよーーー!」
あれ、口に出してしまったようだ。
さて、彼女が怒っている理由はシンプルだ。先ほどから行っていた釣り勝負だが、俺ばっかり釣れる。ひまわりさんは全く釣れない。
「どういうことですか!やっぱり餌の違い……?」
「使ってみます?」
「ち、ちくしょーー。すごく悔しい。すっごく悔しい。けれど、このまま0匹なのはもっと悔しいです。」
「はい、どうぞ。」
「どうも。よーし!逆転目指すぞーー!」
「……やっぱり釣れないじゃないですかーー!」
「はや!餌変えてからまだ10秒も経ってないぞ!」
「それでもです!セイさんは入れ食いじゃないですか!」
「そういう事もあるさ。あ、そろそろひまわりさんも釣れますよ。3、2、1、はい。」
俺は湖面を『鑑定』しているので、どこに魚がいるのか色でわかる。魚群がひまわりさんの釣り糸に向かっていく様子が見えたからカウントダウンしてみた。
「わ!ほんとに釣れた。すごい、なんで分かったんです……か。」
…
……
………
さて、ここまで言えばなぜひまわりさんが怒っているのか分かっただろう。彼女も『漁業の心得』を入手したのだ。『漁業の心得』の効果が分かると、俺がどうして次々に釣れていたのかも察しがついたようで、「ずるいーー」って言っているのだ。
「だって、『手加減はしませんよ!』って言ったら『ええ!』って言ったじゃないですか。」
「そうですけど。確かにそうですけどおーーー!セイさん、サイテー。」
「心外だな。持てる物全て出し切ってこその勝負だろう?」
「カッコ良く言ったつもりかもしれませんが、全然カッコ良くないですよ。ただいまセイさんの好感度、私の中でマイナスになりました。」
「まじかあ。……ちなみに、どうやったら好感度、元通りになる?」
「ん~。あ!そうだ。さっきまで木の伐採をしてませんでした?」
「うん?あ、ああ。」
「木材って持ってます?」
「低品質の物しか持ってないんだ。今持ってる最大で、品質3だ。」
「それで大丈夫です。私に譲ってくれません?『木工』の練習で使いたいんで。」
「えっと……?品質が低いから時間経過で消滅するぞ?たぶん。」
「ええ、知ってます。鍛冶ギルドの方に聞きました。『木工』の練習するなら、品質1~2程度の低品質の物を使えば、安上がりだって。」
「へえ。熟練度上げの為に使うって事か。それならいいよ。前に約束してたしね。それじゃあ、早速送るね。」
「はーい、ありがとうございます。わ!150本も!」
全部上げた。だっていらないんだもん。
「いいんですか?ちなみに、薪としても売ることも出来ますよ?」
「へえ。そうなんだ。じゃあ、その情報と引き換えにそれは無料でどうぞってことで。」
「あ、ありがとうございます。それじゃあ、好感度、元に戻してあげますね。」
「こうして俺は、ひまわりさんに貢ぐ生活が始まったのだった。<完>」
「<完>しないでください!貢がせたりしません!好感度の件も、変なこと言ってすみません!」
「ごめん、言ってみたかっただけ。今後も、木材入手したらひまわりさんに渡すよ。」
「ありがとうございます。面白い物が出来たらプレゼントしますね。」
「楽しみに待ってるよ。」
◆
「お兄ちゃん……大変なことになった……。」
「どうした?」
「まずは謝らないと。ほんっとごめん!」
「え?え?何が?は!まさか、ゲーム内で知り合ったプレイボーイに貢いでしまったとか?」
「いや、どうしてそんな発想になるのよ?そんなわけないでしょ?……え、まさかお兄ちゃん?誰かに貢いでたり?」
「木材を欲しいって言うからひまわりさんにあげた。」
「へえ。そういえば、斧買った時に約束してたっけ。ってそれは貢いだんじゃなくて、ゴミを譲っただけじゃあ。」
「一応、薪として売れるらしい。」
「一本何ゴールドくらいなんだろ?」
「あとで調べたら、10ゴールドだった。」
品質1~4の木材がこの値段。5以上になると、もう少し値段が上がる。
「10ゴールド×何本?」
「150本。レベル上げのために木材伐採周回してたんだ。」
「1500ゴールドか。売りに行く手間を加味すると……。」
「と?」
「セーフ。」
「ありがとうございます。なんか、競馬に行った夫を問いただす妻みたい。」
「それをいうなら、キャバクラいった夫を問いただす妻じゃない?」
「それは許されざる重大犯罪だろ?」
「……確かに。って、話をそらさないで!そう、私達ね。アクアシティからちょっと離れた所にある小さな湖に潜ってみたの。そしたら、変わったモンスターがいてね。」
「ふむ。」
「ウィークフィッシュって魚なんだけど。」
「弱い魚?まさか鰯?」
「うん。でね。そのモンスターの肉。猫キャットの大好物だったの。」
「ほう!」
「ブログにも情報をあげたわ。」
「そいつは良かったじゃん。……あ、キャットフード店が意味をなさなくなる?」
「ごめん!」
「いや、それは大丈夫。この数週間。色々な人と猫ちゃんを見る事が出来たからね。十分楽しかったよ。そっか。じゃあ、俺のキャットフード店の閉店についてもブログにあげといてくれ。」
「合点承知。その代わりと言っては何だけど、お兄ちゃんが探索に費やす時間も増えるでしょ?いつでも私を頼ってね。」
「おう。じゃあ、そん時は護衛頼むよ。」
改めて思う。香はいい妹だな。
いつも読んでいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします!
ちなみに、昨日投稿出来なかったのは、寝落ちしたからです……。ごめんなさい!