なんでだよ?!
『農耕・理論』というスキルを入手した。この「あなたはまだ実践はできないですよ」ということを訴えかけるような名前のスキルだが、その効果は決して悪い物では無かった。
これを使えば、木材などの植物由来の素材の品質を確認出来る。具体的には、俺が入手した松の枝の品質は最低だという事が分かった。なぜ最低品質の物しか得られないのか不明だが、『植物図鑑』か『農耕・理論』の熟練度が関係しているのだと思う。
また、詳しくログを確認して分かった事なのだが、『農耕・理論』の熟練度は使用することによっても上がるのだが、「武器を使って植物を攻撃する」事でも上がるようだ。むしろ、後者の方が高速に熟練度を上げることが出来るようだ。
「じゃあ、ヒールウィードを攻撃しても熟練度が上がる……?」
ナイフを使ってヒールウィードを攻撃してみた。0.1ほどしかなかったHPは一瞬で削られ手元にヒールウィードが残った。そして、スキル経験値は……確かにもらえた。でもほんのちょっとだけ。
……武器を使って植物に与えたダメージに比例したスキル経験値を得られるようだ。そのようにこの実験から推測できるな。ははは、斧を振り回さずとも熟練度を上げられるかと思ったのに。
◆
ところで、ヒールウィードを『鑑定』した結果は以下のようだった。
ヒールウィード:HP回復薬の材料として使える。
これを『農耕・理論』で見ると、このようになった。
ヒールウィードの葉:ヒールウィードの内、HP回復薬の材料として使える部分である。根は切れてしまい品質が4以下になっている。品質が5以上の物は植え替えが可能なので、品質が2であるこれは植え替え不可能である。耐久値が0になると枯れてなくなってしまう。
<耐久値>
99.9
<品質>
2
「根が切れてしまったから品質が2になっているのか?だったら……。」
掘り起こせばいいのでは!
ヒールウィードを見つけたので、「切る」のではなく「掘り起こそう」と斧で周囲の地面を叩いてみた。全く掘れませんでした。なんでだよ!
次に、手で慎重に引っ張ってみた。絶対に根元で千切れないようにそーっと。でもやっぱり葉っぱしか入手できなかった。なんでだよ?!
「く!俺はどう足掻いても根っこごと入手させてくれないのか……!」
「努力あるのみだよ、お兄ちゃん。」「そうですよ!強くなるには周回しかないんですよ!」
「は~い。……とりあえず、木をひたすら斧で叩く日が続きそうだな……。ところでさ。アクアシティの陸上にも木が生えてたよな?」
「えっと……うん。生えてるわね。」
「アクアシティの陸上ならモンスターもほとんどいないし、そこで熟練度上げをするよ。今後は新素材や新種の発見よりも、熟練度上げを優先するよ。」
「そう?」
「フラウに二日に一回も俺の護衛をお願いするのは申し訳ないしな。モフモフ同盟のブログに載せれるような発見も今日はできなかったし、こういう日が今後も続いたらフラウも『私、何のために護衛なんてしてるんだ?』ってなってくるだろうし。」
「いえ、そんな……。」
「フラウは優しいからそういうだろうけど、やっぱりなあ。まあ、アクアシティの湖の中に生えてる植物を調べたくなったらその時はまた護衛を頼むかも。」
「はい、その時は任せてください。」
「……ちょっと気になるんだけど、そのいい草だと私には迷惑かけても良いと思ってるという事?」
「まあ、ほら。俺たちは兄妹なんだし?助け合うのは当然じゃん!」
「親しき中にも礼儀ありだよ……お兄ちゃん……。まあ、いいけど。」
「「いや、いいんかい!優しいな!」」
◆
その後、俺は二人と別れ、いったん錬金ギルドへ。ローズに『農耕・理論』について聞いてみようと思ったからである。
おっと、受付に先客が居た。……先客だって?!あ、そういえば、前の武術大会以降、錬金術師に転職した人がそこそこ居たんだっけ?
「こんにちは、ローズさん。いつもお世話になってます。」
「こちらこそ、ポーション製作を手伝ってくれて本当に助かっているわ。ありがとね。」
「いえいえです。」
「ところで、アレス君は新レシピを探したりしてるの?特許制度同様、最初に見つけた人に権利収入が入る仕組みなのだけど、私説明したっけ?」
ほう、新人錬金術師の名前はアレスというのか。聞く限り、ポーション作りのアルバイトをしているようなのでアルカディア専属錬金術師という訳ではないのだろうな。
「そうなんですね!聞いてませんでした!」
「ありゃ、私また説明忘れてたのね。年かしら。」
「いえいえ!ローズさんはお若くてきれいですよ!」
「あらそう?ありがと。ともかく、新レシピが見つかったらぜひ公開してね。新しい知識がこの世界に広がるのを楽しみにしているわ。」
「はい!頑張ります!」
顔を赤くしながらローズと話すアレス君。え……アレス君、もしかして住人たるローズさんに恋しちゃってる?いや、まさかね。そんなわけなかろう。きっと彼は住人なんだ。住人の錬金術師がローズさんとしゃべってただけだ。
アレスが受付から離れる。当然、受付に向かう俺とはすれ違う形となるのだが、すれ違う時に彼の独り言が聞こえてしまった。
「いやあ、ローズさんやっぱきれいやなあ……。マジ、転職してよかったわ~。」
うーん、転職したって事はやっぱりアレスは旅人?は!これこそまさに「禁断の恋」!!電脳世界に生きる女性に恋してしまった男性の心の葛藤を描いた恋愛小説。
~~~以下、セイの妄想
ローズ「ダメ、私はあなた達とは違う。寿命に縛られず、永遠に生きる存在なの。あなた達とそっくりな心を持っているように見えるけど、確実に違う種族なのよ。好きになられても困るわ。」
アレス「だから何だって言うんですか!俺はあなたの事が、本気で好きなんだ!」
ローズ「はあ、ほんと困った子ねえ。駄目なものは駄目なの。」
アレス「だったら、だったらどうしてあなたは泣いているんです!!」
ローズ「?!?!」
アレス「今、俺の目の前には確実にあなたがいる。それだけで十分なんです!!」
ローズ「アレス……」
~~~
「うーん、悪くない。この機会にシリアス&感動モノの恋愛小説にチャレンジしてみようかな……。」
俺は、香とゲームを作る際、「プログラミング&シナリオ」を担当している。故に、こうした妄想をする癖がついているのだ。だけど、俺はシリアスな展開を書くのが苦手なのである。ホラーゲームを作った際も涙腺崩壊なストーリーは書けず、絵や効果音やゲーム内容で恐怖心をあおったに過ぎない。
「あら、セイ?来てたの?何が悪くないの?」
「ふえあ!なななな。なんでもないですよ!」
ヤベ、どこから声に出てた?どこからだ?!
「そ、そう?で、何の用?」
「あ、はい。スキルについて相談に乗って欲しくて……。」
俺の妄想聞かれていなかったみたい。よかった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
◆
「取り敢えず色々試してみよう」の回でセイ君が「暗視薬」を作っています。訂正前の効果が「暗所でも物が良く見える」だったのですが、『これだと光の魔石の出番がなくなってしまうのでは?』と指摘を頂きました。ご指摘ありがとうございます。
指摘を受け暗視薬の効果を「暗闇の異常状態の無効化」に変更しました。
今回のようにミスが色々とあるかもしれませんが、その時は指摘して頂けると幸いです。
今後とも本作をよろしくお願いします。




