斧Get
木材が入手可能になった。いや、住人の店の中で買うという方法で「入手」は出来るかもしれないな。その意味では、「木材を自分の手で入手することが出来るようになった」という方が正確かもしれない。
だが、手持ちのナイフでは全く切れなかったので、俺たちはひまわりさんに頼んで斧を作ってもらおうという事になった。
「幸い、ちょうど今、ログインしてたみたい。鍛冶ギルドに行けば、話を聞いてくれるってさ。」
「了解よ。」「良かったです。」
「やっぱり、こういう時に生産職のフレンドが居ると頼りになるな。よし、それじゃあ、早速行こうかな。」
…
……
………
「こんな感じでいいですかね?」
約束通り、鍛冶ギルドに入ると、ひまわりさんに会う事が出来た。そして、彼女の第一声がこれである。手渡された物を見ると、それはイメージ通りの斧であった。作り上げるの、早くない?俺が連絡してからものの数十分しか経ってないんだぞ?
「はえ?もうできたの?……そうそう、そうです。まさにこういう物が欲しかったんです。いくらでしょう?」
だから、驚きのあまり変な声を出してしまった俺を許してほしい。
「せいぜい35000ゴールドですかね。借りてた分でいいですよ。」
「いや、さすがにこれは俺がきちんと払う。その代わりと言っては何だが、この斧のメンテナンスはまけてくれると助かる。」
「了解よ。あ、それはまだ完成じゃないわ。今から刃先の手入れとか焼き戻しとかしないといけませんから。」
「ああ、分かった。それにしても、やっぱり結構な手間がかかるんだな。金、多めに出すよ。」
「いやいや。駄目ですよ、そんなの。」
「いやいや。ここで甘えたら、いつまでも甘えてしまいそうで。」
「いやいや。」
「いやいや。」
「じゃあ、お言葉に甘えて、お金は多めに受け取ります。代わりに私がいま開発中の武器が完成したら差し上げます。」
「おーけー、交渉成立。まあ言ってしまえば先行投資だね。で、どんなの作ってるんだ?」
「ふふふ。前に『カラクリ綿菓子君』を作った時から思ってたんですよ……。じゃん!」
「ほう。」
一見するとただの短剣である。しかし、その持ち手には独特の物が付いていた。
「持ち手に付いてるここの取っ手を引っ張りますと……。」
「うお!おもしろいなこれ。」
さっきまでは普通の短剣だったそれが、一瞬にして三又に分離。そういえば、他の剣と比べたら少し分厚いと思っていた。なるほど。こんな物が隠されていたのか。
「開発中の武器『シールドソード』です。三又になっている時でも攻撃できなくはないですが、これは相手の武器を挟み込むための仕掛けになります。」
「なかなか面白いじゃないか。そういえば、複数パーツを持った武器は作れないとされてたんだっけ?」
「はい。でも、カラクリ綿菓子君を作ったことで、『複数の装備品がくっついている』という体にすればこのような武器が出来るという事が分かりました。」
「『鑑定』していいです?」
「どーぞどーぞ。」
「それじゃあ、失礼しまーす。なるほど。5つのパーツに分かれてるのか。」
「はい。前にも言ったと思いますが、インベントリに仕舞うとばらばらになってしまいます。ですので、『簡単に組み立てる事ができ』『さりとて簡単には壊れない』『そして動きがなめらか』な物を作る必要がありました。ものすごく大変でした。」
「……でしょうね。前から思ってましたが、すごいですよね。空間把握能力とかそう言ったものが。」
「ありがとうございます。」
◆
フラウ・リオカ・そして俺はいったんログアウト。俺たちが午後にログインする時(つまりは一時間後だ)までにひまわりさんは斧を完成させてくれるらしい。
熟練度の上昇と共に、加工スピードが上がったらしいのだが、そうとは知らなかった俺からすれば本当にびっくりだ。
さて、午後になり、斧を受け取る。重い。すっごく重い。確かに一撃のダメージが大きそうである。
「木材が取れたら、私に売ってくれません?鍛冶の他に木工もしてみたいと思ってるんで。」
「へえ。木工なんてスキルがあるんですか?」
「はい。といっても鍛冶のサブスキルですね。出現条件は『鍛冶スキルの熟練度が一定以上』『自分の作った武器で木材の切断を行う』でした。」
「へえー。それじゃあ、家具とか作れます?」
「熟練度の関係上、私が作ると形が悪い粗悪品になってしまうわね……。それでも良ければ。」
「そうだなあ。まあ、多少形が整ってない方がDIY感あっていいかもな。じゃあ、その内頼むよ。」
「任せてください。」
◆
「ちゃっちゃとこの斧を試したいのだが、どこがいいだろう?やっぱり東エリア?」
「いや、何かあった時の為に西エリアにして置きません?伐採に時間がかかるようなら、その間にモンスターに襲われるかもしれませんし。」
「それもそっか。それじゃあフラウのアドバイスに従うか。じゃあ、護衛よろしくお願いします。」
「任せて~」「はい、お任せください。」
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