木材
トケイソウ、こっちではカラフルクロックだっけか?、を鑑定した後も、引き続き探索を続けようとしたところで……思わぬ発見が。
「あれ! 木が鑑定対象になってる」
「え、それってさっきまでは鑑定不可だった物が?」
「そうそう。これが白樺。これは松。そのままの名前だな」
白樺:木の表面が白っぽいのが特徴の木。
松:棘のように細長い葉っぱが特徴の木。この木の種子は羽が付いており、回転しながら落下する。
「すごいじゃない。やっぱり、今までに鑑定した植物の種類が関係していたのかな?」
「かもしれないな。いやあ、これはありがたい。切り倒すこととか出来るのかな?」
「出来るんじゃない? あれ、でもそれって他の人からはどう見えるんだろ?」
「予測ですけど、木にダメージを与えると一定確率で木材がドロップするんだと思います。だから、切り倒す必要はないですし、そもそも切り倒せないと思います」
「そうなの?」
「ほかゲームでそういうのを見たことがあるので」
「へえ。じゃあ、この景観が失われることは無いって事か」
「だと思います。モンスターと違って、『人気のない所でリポップ』という訳にはいきませんから」
「なるほどなるほど。じゃあ、早速木材を頂こうかな」
「どうするの? 薪にするとか? もしくは家具に? 錬金の材料?」
「家具かあ。それもいいね。せっかく、マイホーム買ったんだし家具もそろえなくちゃと思っていたんだ」
そう。実はマイホームは買った時のままの姿である。いや、相変わらず酒造の実験には利用しているから、かなり散らかっていて「買った時のまま」とは言えないが。
※発酵食品の販売はドルフや他の住人に任せたのだが、だからと言って俺が発酵の研究をしてはいけない理由などない。
話が逸れた。ともかく、俺のマイホームは人を招待できる状態ではないのだ。この機会に家具をそろえて、知り合いを集めてパーティーでも開きたいな。
「そういえば、そんなこと言ってたわね。綺麗になったら、私達を招待してね」
「ああ、もちろん。リオカは真っ先に招待するよ。でも、白樺と松は錬金で使うつもりだ」
「そうなの?」
「例えば……そうだな、白樺と聞いて何を思い浮かべる?」
「うーん? 全く想像できない。木材としての利用されてそうだな……って感じ? フラウは?」
「私もです。白樺に関して特別な印象は抱かないです」
「じゃあ、松は?」
「公園に植わってる?」
「色々なところで見かけますが、どのように人の役に立っているかと聞かれてもパッと思い付きません。あ、木の根元で松茸が取れる……けどこれは松自体の利用法ではないですよね」
「うん、まあそんな感じだよね。でも、白樺も松も面白い所で利用されてるんだ。まず白樺についてだけど、白樺はキシリトールの原料になる。人工甘味料だ」
「「へー。ガムに使われてるアレね」」
「まあ、この世界では甘い物をいくら食べても太る事はないんだし、人工甘味料があっても意味がないよね。さて、次に松だが、松からは『松やに』が取れるかもしれん」
「「あーー聞いたことはある」」
「弦楽器とかのすべり止めに使われることが多いが、他にも色々と用途はあるだろう。まあ、キシリトールや松やには錬金ではなく『調理』の領域になるかもだけど、試す価値はあると思ってる。それに……」
「とりあえず拾っとけ精神?」
「うん、そう。リオカみたいに、『適当に配置したらすごい発見をしてしまった……』って可能性もあるしね。さて、そうと決まれば早速木材の入手だ!」
ナイフを取り出し、振るう。比較的細い枝を切り落とせ……ない?
「なんだ、このHPバー?」
ナイフを当てた箇所から出てきたのは枝でも樹液でもなく、HPバーであった。
「リオカには見える?」
「見えないわ。察するに、切ったところにHPバーが出てきたのね?」
「Yes.」
「そのHPバーが0になったら、木材が入手できるんじゃない?」「私もそうだと思います」
「なるほどな。よし、じゃあやってみるか」
カーン
カーン
カーン
カーン
…
……
………
「ねえ、さっきから結構頑張ってるんだけど、一向にHPバーが減らないよ?」
「うーん、ナイフだからかしら? 斧みたいに、重たい武器でガツンとやらないと駄目なのかも」
「じゃあ……どうしよう? どこかで買うか……それとも、せっかくだしひまわりさんに頼もうか?」
「斧なんて武器、普通の店にはおいてないと思うわ。特殊な武器屋を探せばあるかもだけど、ひまわりさんに頼む方が確実だと思う」
「了解。じゃあ……いったんゲートシティーに戻ろうか?」
「そうね」「そうしましょう」
とうとう、100話に到達しました!
これも、皆さまも応援があったおかげです。改めまして、いつも読んでいただきありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。