ゲーム開始
※初めて読む方に
この作品なのですが、諸事情あって、一年程更新していませんでした。作者はその一年の間に、正しい文章の書き方などを勉強しました。
一年越しにこの作品を読み返し、続きを書こうかなと思案していた作者は「続きを書く前に、文章に変更を加えねば!」と思うようになりました。そこで、一話目から順番に変更を加えて行こうと考えております。(詳しくは135部へ!)
そう言う事情があって、改稿前の文章には多くのミスが含まれています(まあ、読めなくはないのですが)。ですので、「あれ、急に文章がおかしくなっているぞ?」という事が起こると思いますが、変更中ですので、ご理解くださいませ。
今、妹と俺は必死で家のリフォームを行っている。いや、リフォームというよりは片付けがメインかもしれないが。毎年、正月には大掃除をしているにも関わらず、改めて家の中を見ると要らない物がかなり見つかるものだ。
「香、このゲームカセットまだ使う?」
「それは……もういらないわ。オンラインオークションに出品ね。それと、お兄ちゃん。ここに積んである大量のマンガは残しておきたい?」
「うわ、懐かしい! 昔めっちゃはまってたなあ。うーん、もういらないかな。状態が良さげなら出品するけど、どう?」
「うーん、いい状態とは言えないかな……」
「じゃあ廃棄で」
「オッケー」
要らないものを捨てたら、多くのスペースが余るものだ。そうしてできたスペースに、すぐには使わないであろう物を詰め込んでいく。
しばらくすると、リビングには生活に必要な物だけが残った。これで、このリビングは「最適化された空間」となった。
さて、次に行うべきは一か月分の食料の買い占めである。これに関しては妹はノータッチ。俺が必要な物を見繕う。あれは俺が高校生の頃の話だ。修学旅行に行っている間、家族が食べていた食事を聞いて以降、俺の家族には「栄養バランス」という概念がないという事が分かったのだ。だって、冷凍食品と米だけって言うんだぜ。「野菜は?!」って聞いたら、「「野菜ジュースのんだからだいじょーぶ」」って言われたよ。大丈夫か、おい。
手軽に料理できる食材をぱぱっと買っていく。トマトはオリーブオイルと塩振って食べるだけでうまい→採用。キャベツは千切りにして置いて冷凍保存できる→採用。かぼちゃは固いから切るのが大変→不採用。
冷凍ご飯も用意しておく。田舎のばあちゃんから送られてきた米を、炊いては冷凍庫に放り込み炊いては冷凍庫に放り込み……と単調な作業を繰り返す。
一週間かけて、全ての準備が整った。今の日付は8/1で時刻は5:50分。
「あと10分ね」
「そうだな。トイレは済ませたか」
「もちろんよ。お兄ちゃんも準備はばっちり?」
「もちろんだよ。それじゃあ、行くか!!」
二人は、リビングのど真ん中に仰々しく設置されたFDVRマシーンの中に入ったのだった。
◆
俺の名前は三条 誠。今年で大学三年生となる。
近所に名門大学があったため、そこへ入学するように親から言われ、必死で勉強してきた。そして、無事に現役合格を果たしたのが3年前である。
実をいうと、少しがっかりした気持ちがあった。もちろん、名門大学に入学できたことはこの上なく嬉しかった。だが、夢の一人暮らしが出来ないのだ! 親の干渉を受けない俺だけの空間が欲しかった……。
そんな願いを神様が叶えてくれたのだろうか?両親が急に
「ごめーん、ママとパパ、急に海外に転勤になっちゃってねーー。暫く帰って来れないの。ちゃんと仕送りはするから自分たちだけで暮らしてーー。いい?」
と言ったのだ。
大変失礼ながら、俺の心の中はやったぜ! という気持ちでいっぱいだった。これで、自分のしたいことに集中できる。例えば趣味のゲーム製作・小説執筆などなどは人が居ると集中できないんだよね……。
「え、それじゃあ、お兄ちゃんと二人暮らし?」
「そうなるかな……。それか、香もイギリス来る?」
「いや、日本に残ります」
そう、俺には控えめに言っても可愛い妹がいる。三条 香。現在大学一年生。すなわち、当時は高校2年生かな?CGデザイナーの彼女は、俺の書いてるネット小説の挿絵を描いてもらったり、ゲームで使う絵を描いてもらったりしていた。
幸い、彼女とは血がつながっている実の兄弟だったので、あくまでビジネスパートナーとして接することが出来た。……まだ大学生の兄妹の関係性が「ビジネスパートナー」というのもどうかと思うが。
ちなみに、大学の友人には
「妹と二人暮らしだと!!まじか、何そのラノベ展開?!どんな子?……えっ、めっちゃ可愛いじゃん、もしかして血がつながってないとか?そっか、実の兄妹か……。現実を見ろよ、結婚は4親等の血族からしか出来ないんだぞ。」
とよく言われる。
その度に
「いやね、妹がいない人は分かんないと思うけど、妹は妹だからね。お前、ラノベの読みすぎだよ」
と言い。そうすると決まって
「そっか、じゃあ俺の事紹介してくれよ!!」
と返される。
ああ、その頼みを承諾したことは一度もないぞ。妹の恋愛事情に俺が茶々を入れるのは良くないと思うのだ。
現在、彼女も大学生になり、お互い暇な時間が増えたという事でゲーム製作に熱が入った。俺が脚本とシステムを作り、香がイラストを担当して、ノベルゲームやホラーゲームを次々に出していった。偶然、ホラーゲームが有名YouTuberに取り上げられて、ダウンロード数が急上昇。広告費がかなり転がり込んだ。
そのお祝いとして、俺たちはFDVRマシーンを購入したのだ。
なんと、この機械を使えば五感全てをバーチャル空間に入れることが出来るらしく、味覚や嗅覚さえも味わうことが出来るのだそうだ。
デフォルトでインストールされていたゲームをいくつかプレイしてみたが、確かにすごかった。異世界に迷い込んだのではないかと思ったものだ。
さて、そんなFDVRゲームの中で最も期待されているのが本日八月一日の六時に公開されるMMORPGゲームの"Another World Traveler(AWT)"(日本語タイトル「異世界への旅行者」)である。もちろん俺たちも購入を決断した。
さて、MMORPGの特性上、大量のデータを通信する必要がある。だから無線LANを使った通信よりも有線の方が良いだろうと俺たちは考えて、その環境を整えるべくリビングを大改造することにしたのだった。
◆
FDVRを起動すると、ホームという所に飛ばされる。ホームには時計と数個の絵画だけが設置されている。その内の一つ「AWT」と大きく書かれた半透明の絵画の前に立つ。
5:51
5:52
5:53
5:54
5:55
5:56
5:57
5:58
5:59
6:00!!
時刻が6:00になると同時に半透明だった絵画に変化が起きる。
「AWT」という無機質な文字がきれいな街の絵に変化して、絵全体が微妙に光り輝いている。
その絵画に向かって飛び込む。Loading......と書かれた光のトンネルを抜け、真っ白な空間に出た。
さあ。ゲームの始まりだ。
読んで頂きありがとうございます。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m