7 先輩
剣術の授業の初めの何回かは、上級生の授業の見学だった。
今日は4年生の練習試合を見学している。
まあ、見ても学ぶべきところは特にない。
家ではお父様やお兄様にしごかれていたのだ。
上級生とはいえ、他家の子息とはレベルが違う。
おそらく、アカデミアの中でもわたしとまともに戦えるのはゼノビアくらいではないだろうか。
横ではゼノビアが、今メアが考えていたのと同じようなことを全て口に出して言っている。
こいつ本当に貴族の子息か?
やはりゼノビアとは仲良くなれないな。
そんなことを思ってたメアの目に止まる者がいた。
明らかに動きが鋭い。
だいぶ手加減しているようだが、手合わせの相手を次々に瞬殺している。
ウィンチェスター以外であんな動きができる人がいるなんて…。
精霊王の加護なんて他家の騎士から見ればイカサマみたいなものだろう。
だからこそ、ウィンチェスター侯爵家の者は誰よりも強くあらねばならず、最前線で国防に当たる義務を背負っている。
その加護を持っていないというのに、あの先輩はなんと華麗な身のこなしだろうか。
すらっとして手足が長く、銀色の髪が絹糸のように煌めいている。
優しげなアメジストの瞳がとても魅力的だ。
お名前はなんというのだろうか。
「ウィルフリード・ノーフォーク様はやはりさすがだな!」
メアは弾かれたようにゼノビアを見た。
すぐにあの先輩のことだとわかった。
「どうしてあの方のお名前を知っているの?」
「騎士科の中で強そうな方の情報を把握しておくのは当然のことだろう!」
なぜいつもそんなに得意げなのか。
「ゼノビアは相変わらずだね…。ノーフォークって、ノーフォーク公爵の御子息ってこと?でも、公爵家は代々魔導師の名門でしょう。なぜ騎士科に…。」
ノーフォーク公爵家の者はみな魔力が高く、優秀な魔導師を多く輩出している。
王立騎士団とは犬猿の仲である王立魔導師団の師団長は、常にノーフォークの生まれだ。
「ウィルフリード様は魔力がほとんどないらしいぞ!それで騎士科に入り剣術を極める決意をして、死に物狂いで鍛錬したんだ!素晴らしい方だ!」
「…どうしてそんなことまで知っているの。あとそういうことはあまり大きな声で言うものじゃないよ。」
ゼノビアが意外と情報通で驚いた。
わたしが知らなすぎるのだろうか。
だが、魔法の名家に産まれながら、魔力がほとんどなく、代わりに体格や身体能力に恵まれたウィルフリード様の境遇は、わたしとよく似ている。
髪も同じ銀色だし、勝手に親近感を覚えてしまう。
ぜひお近づきになりたい。
どうにかしてお話することはできないだろうか。
お友達もできないし、楽しいこともないと諦め気味だったが、ウィルフリード様と親睦を深められれば、有意義な学園生活になる気がする。
普段お兄様に冷たくされているせいもあって、わたしは話したこともないウィルフリード様にすでに強い憧れを抱いていた。




