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37 精霊王

シュヴァリツィア王国の領土には森が多いが、昼間でも鬱蒼とした森ばかりだ。

しかし、スピルトの森は木漏れ日の降り注ぐ明るい森であった。


「…美しい森だな。」

「はい。」

「…運良くお会いできるとよいな。」

「はい。」

「…必ずいらっしゃるはずだ。現代もなお、ウィンチェスター家に加護をお与えになっているのだからな。」

「はい。」

「…ん?あれが祠なのではないか?あ、おい待てメア!一人で先に行くな!」


森の中心部付近で、白い石で作られた小さな祠を見つけた。


「なんだ?おお、ウィンチェスターの坊主じゃねえか!久しぶりだなあ!」

突然そこに、美しい少年が現れた。

日の光のような髪色に金色の瞳をした少年は、祠の上に座ってこちらを見ている。


祠にいるし、急に現れたし、きっとこの方が精霊王様だ!絶対そうだ!

「精霊王様!お願いです!ヨハンを助けてください!お願いします…!」


「メア、少し落ち着け。ご挨拶もせずに精霊王様に失礼だろう。」

「あ…、申し訳ありません…。」


「お会いできて光栄です、精霊王様。私はヴィクトル・ウィンチェスター。貴方とお会いするのはこれが初めてです。」

「はじめまして、精霊王様。わたしはメア・ウィンチェスターと申します。」


「ああ!また代替わりしたのか!人間は何回見ても違いがよくわかんねえな!」

すぐにお会いできてよかった。


「精霊王様、急に押し掛けて大変申し訳ないのですが、今日はお願いがあって参りました。」

「ああ、知ってるぞ!人間がここに来るときはいつもオレにお願いがある時だからな!最初のウィンチェスターの坊主も、子が病弱で丈夫にしてほしいと頼んできたからこのオレが聞き届けてやったんだ!」


最初の坊主?

もしや初代ウィンチェスター侯爵か。

その時に、子を丈夫にと頼んだから、今でも身体能力の高い子が生まれてるということだろうか。

初代様は世代を跨いだお願いをしたつもりではなかったのだろうけど。


「あ、そういえば、昨日だったか一昨日だったか、10年前だか100年前だか忘れちまったが、そんくらいの頃に、オレってば、初めて失敗しちまってよお。ウィンチェスターの子の魔力を貰う代わりに身体を丈夫にするって約束してたのに、ちょっと予定が狂って、あんまり丈夫にしてやれなかったし、魔力も貰い損ねちまって、困ってたんだよなあ。」


精霊王様が意外とお喋りで、次々に明らかになる真実に驚く。

ウィンチェスターの子に魔力がないのは、丈夫な身体との交換条件だったからで、わたしは手違いで魔力を持ったまま、身体能力も中途半端に生まれることになったということのようだ。


「魔力がないと、精霊王様がお困りになるのですか?」

「ああ、困る!オレにとって魔力ってのは、人間の言うところの飯みたいなもんだ!オレってば、いつも腹ペコだからよお、人間のお願いを聞いてやる代わりに魔力を分けてもらってんだ!」


なるほど。

魔力がほしくて人間のお願いを聞いてくださるのか。

それなら強い魔力を持つ人しかお会いできないのかな。


「では、貴方に願いを叶えられた人間は皆、魔力が全くない状態になるのですか?」

お兄様がわたしも気になっていたことを聞いてくれた。


「いや!お願いの程度にもよるが、大抵はすぐ回復するような量を分けてもらうだけだ!ウィンチェスターの坊主は、魔力が全部なくなってもいいから頼むと言ってきたから遠慮なく貰っている!でもその分、とびきり丈夫になるようにしてやってるぞ!」


そうして、ウィンチェスター家は最強の武闘派侯爵家になったというわけか…。


「それで、お前のお願いってのはなんだ?金持ちになりたいとか?それとも、美しい娘を囲いたいとかか?ま、そんなことはオレにもできないんだがな!」

人間が精霊王様に頼むことってそんなくだらないことばかりなのか。

しょーもない。


「いえ、わたしがお願いしたいのは、どんな魔力の不調もすぐに治るという、精霊王様の涙を分けていただきたいということなのです。」

「いいぞ!」

「良いのですか?」


「ああ、お前の魔力を分けてくれるならそんくらいお安い御用だ!それにしてもお前、やけにたくさんの魔力を持ってるなあ。まるで取り替え子にでもあったような…。ああそうか!お前があの時の赤ん坊か!いやあ悪かったなあ、しくじっちまってよお。」

「いえ、これはこれで役に立っていますので、どうかお気になさらず。」


「実は、お前が生まれるとき、余所の妖精にちょっかい出されてよお。連れていかれそうになったんで慌てて取り返したんだが、そのせいで加護を授けるのが間に合わなくなっちまったんだ。まあ気に入ってんならいいんだけどさ!」


そう言って精霊王様はケタケタと笑いながら、ポロポロと涙を溢れさせた。

落ちた涙は透明な石のように変化して地面に散らばった。

その後すぐに、メアから魔力が吸い取られ、精霊王様が上機嫌でもぐもぐし始める。


「何に使うか知らねえが、それも万能ってわけじゃねえからよお。あんま期待し過ぎんなよな!」


無事に精霊王の涙を受け取り、わたしとお兄様はスピルトの森を後にした。

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