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36 希望

「この毒は、大抵の人間にとってはちょっとした痺れ毒に過ぎませんが、魔力の強い者にとってはかなり危険な毒です。このままでは命に関わるでしょう。」

わたしは、ヨハンの眠るベッドの横で、毒の専門家だという初老の男性の話を聞いていた。


「そんな…。あ!そういえば、矢を射た男が持っていた小瓶を回収したのです。おそらく中身はヨハンが受けた毒と同じものでしょう。これを使って解毒薬が作れませんか?」

必死に言い募るわたしを見て、男性は心底申し訳なさそうな顔をした。


「先ほども申上げたような、軽い痺れを治す解毒薬はすぐにでもご用意できます。ですが、魔力の強い者の身体にこの毒が入ると、毒はその者の魔力を根こそぎ奪い続け、毒を受けた者は魔力を回復させることができずに眠り続ける。その作用は、魔力、生命力と複雑に絡み合っていて、解毒というような単純なものではなくなってしまうのです。」

「そんな毒があったなんて…。」


シュヴァリツィアの分隊が南に駆け付けるとしたら、わたし達が来ると読んでいたのか…?

わたしとヨハンが大きな魔力を持っているという情報が漏れていたというの…?

いや、国境を破った後のガイラシアとミラジオはどう見ても油断していたし、さすがにそこまで計算してるとは思えない。


青い顔で考え込んでいるわたしを男性は気の毒そうに見た。

「割りと一般的なこの毒に、こんな作用が発見されたのはつい最近のことなのです。もちろん、魔力の強い方が多くいらっしゃる王立魔導師団には情報共有してありますが、普通の魔導師は弓矢などが当たるような距離まで敵に接近しませんから、それほど警戒されておりませんでした。」


「では、たまたま手軽な痺れ毒を使っていただけの可能性が高いということですね。接近戦にも対応できる魔導師という点が仇に…。どうにかしてヨハンを治す方法はないのでしょうか。」


「あるにはありますが、実行は不可能です。」

「なぜ不可能だとわかるのですか?」

「精霊王とお会いして意思疎通する必要があります。精霊王の涙はいかなる魔力の不具合もたちどころに治すと言われています。」


「では、精霊王様にお願いして参ります。どちらにいらっしゃるのですか。」

「王都とハートフォード侯爵領の間にある、スピルトの森という所にいらっしゃると言われています。」

「そんな近場に?」

「ですが、そこには古い祠があるばかりで、精霊王とお会いしたという話は聞いたことがありません。本当に魔力の不調を治す涙があるのならば、私もぜひこのシュヴァリツィアのためにお役に立てたいと、常々思っているのですが。」


「精霊王の涙の効能が伝わっているということは、賜った方がいたという証でしょう。すぐにでも向かいます。貴重なお話をありがとうございました。」

「いえいえ。おそらくは無駄足になってしまうでしょうが…。御武運をお祈りしております。」


「では、わたしは早速スピルトの森に向かいます。」

「もしや、お一人で行かれるのですか?」

「わたしはひとりでも大丈夫です。それに小さな森なのでしょう?祠だって精霊王様だって、きっとすぐに見つけてみせます。」


「私が共に行こう。」

「お兄様!?どうして王都に?」

「先に帰ってメア様子を見てこい、と父様に言われて丁度今戻った。」


「さすがに早すぎませんか。わたしは転移魔法を使って来たのに、いくらなんでもこんな…。」

「中継地で馬を乗り換えながら、全力で休みなく走ればこのくらいの時間で移動できる。」

「この距離で乗り換えが必要だなんて、どれだけ馬に無理をさせたのですか…。」


「そんなことよりも、スピルトの森に急がねばならぬのだろう。さっさと行くぞ。」

「ですが、本当にお兄様が一緒に行ってくださるのですか?」

「そう言ったはずだが。兄の立場を奪われるわけにはいかないからな。」

「…?そうですか。ありがとうございます。では、早速向かいましょう。」


実際何が起こるか分からないし、お兄様が一緒に来てくださるなら文字通り百人力だ。

万が一、精霊王の怒りを買ったとしても、きっと生きて帰ることができるだろう。

正直ひとりでは心細かったしありがたい。

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