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30 護衛

「メア、今回の任務はなんだ?」

依頼主との待ち合わせ場所に向かう途中、いつものようにヨハンがわたしに尋ねる。


「今回は要人警護だよ。」

「えー、またかよ。はあ、どうせまた女だろ。」

「よくわかったね。今日はバース侯爵家の御令嬢だよ。」

「最近多いよね、女性の護衛依頼。」

「どいつもこいつも、危険があるわけでもねぇのにわざわざ呼び付けやがって。俺たちのことをアクセサリーかなんかと勘違いしてんじゃねぇだろうな。俺はこないだみたいにでけぇ熊倒したりするような任務がやりてぇのに。」


少し割高な報酬を支払うだけで、手軽に美男子を連れ回せるとあって、夫人や令嬢からの護衛依頼が増えている。

お茶会、ショッピング、小旅行などなど、ちょっとしたお出掛けのお供に黒銀騎士団を指名してくる。


「でも今回護衛するクリスティーナ嬢はかなりの美少女だって噂だよ。楽しみじゃない?」

「別に。興味ない。」


「へえ、ヨハンは顔は気にしないタイプなのか。ウィル様はどうですか?好きですか?美少女。」

「え、ま、まあ好き、かな。」

ウィル様はわたしの顔を見ながら少し顔を赤くして答えた。


「やっぱりそうですよね。クリスティーナ嬢もきっとウィル様のことを気に入ってくれると思います。影ながら応援しますよ。」

「いや、そういう意味じゃないし、応援しなくていいから。」

「あ、クリスティーナ嬢が来たようです。」


亜麻色の髪に大きなルビーの瞳、少し気の強そうな女の子がこちらにやってきた。

たしかに美少女だ。


「はじめまして、黒銀騎士団のメア・ウィンチェスターと申します。」

クリスティーナ嬢はわたしを見るなり頬を染めてほぅっと息を吐き、しばらくして少し慌てたように目を逸らした。


「クリスティーナ・バースよ。今日はあたしのお買い物に付き合っていただくわ。あたしが危ない目に遭わないようによろしくね、護衛さん達。」

「…こんな街中で3人もいらねぇだろ。」

「ヨハン、静かにして。」


それから、服屋、帽子屋、靴屋、喫茶店、化粧品店、宝飾店などなど、クリスティーナ嬢の気の済むまで買い物に付き合った。


転んで怪我をしては大変だからとかなんとか言って、移動中はずっとわたしの腕にしがみ付いている。


「クリスティーナ嬢、こうくっつかれては何かあっても咄嗟に動けませんから、離していただけませんか。」

「あら、その時は後ろの2人に任せればよろしいでしょ?」


そう言われて少し後ろを振り返る。

後ろから付いてくるヨハンとウィル様は、すでにたくさんの荷物を抱えていて、わたしよりもっと動き出しが鈍くなりそうだ。


「あのさ、もし護衛対象が男だったら、さすがにメアもあんな風に触らせたりしないよな…?」

「どうかな。今回みたいに面倒がって放置する、可能性もなくはないよね。」

「…今度から依頼主が女でも文句言うのはやめる。」

「…それがいいかもね。」


それからしばらく経ったある日、アカデミアの訓練場でいつものように鍛錬をしていたメア達のところに、一人の男が駆け込んで来た。


「メア!勝負だ!今日こそは俺が勝つ!」

そちらを見なくても分かる。

ゼノビアだ。


「また来た…。アイツしつこすぎだろ。」

「メアの従兄弟なんだっけ。ひと月に一回は必ず来るよね。」


「あー、はいはい。今日は何で勝負するの?」

「今日は流鏑馬だ!覚悟しろ、俺は強いぞ!」

剣術ばかりでは飽きてしまったので、ゼノビアとの勝負は毎回種目が変わることになっている。


「あ、せっかくだし、ヨハンとウィル様もやりますか?」

「なっ!俺とメアの神聖な勝負に他のやつを混ぜるつもりか!」

「ゼノビアだってウィルフリード様とも勝負してみたいでしょう?ヨハンも同じくらい強いし、どう?興味ない?」

「む、たしかに、一度勝負してみたいとは思っていた。よし、ならば全員勝負だ!」


これでわたしに勝負を挑む頻度が減ってくれるといいのだけど。


流鏑馬勝負の結果は、ヨハンが4位、ウィル様が3位。

僅差でわたしがゼノビアに勝った。

辛うじてまだ負けたことはないが、もうほとんど実力に差がないので、ゼノビアに負けるのも時間の問題かもしれない。


「ぐぬ…、次こそは絶対に勝つ!」

「はいはい、また来月ね。」

「…黒銀騎士団とかいうのに入れば、ここで毎日全員と勝負できるのか。」

「勝負じゃなくて訓練ね。」


「それに、メアにも前みたいに毎日会える。」

「ふふ、もしかしてゼノビア、わたしが転科して寂しかったの?」


「…悪いか。」

ゼノビアは少し顔を赤くして目を逸らした。


「そっか。」

わたしはにっこりと微笑み、空色の瞳を見つめた。


「でも、ゼノビアは魔力がないから黒銀騎士団には入れないよ。」

「なっ!なんだと!」

「じゃあ、訓練の邪魔だからさっさと帰ってねー。」


「…わかった。」

ゼノビアは珍しく落ち込んでいるようだ。

初めて見た。

まあ魔力がないのはゼノビアのせいじゃないし、相手がゼノビアだからってちょっと冷たくしすぎたかもしれない。


「あの、ゼノビア…。」

「来月は必ず俺が勝つからな!全員この俺が倒してみせる!」


どうやら心配いらなかったようだ。

ゼノビアはいつも元気だね…。

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