28 王立騎士団
「何の用だ、メア。」
簡易的な会議室のような場所で、お父様は先程のお兄様と全く同じ口調でわたしに問い掛けた。
「本日、黒銀騎士団の任務で北の森に行くということはすでにご報告していたと思います。そこで、ガイラシアの差し金と思われる者達が、国境の木を切り倒し、跡形もなく整地しているところを目撃いたしました。」
「ガイラシアが秘密裏に国境を押し上げていたということか。」
お父様はいつもに増して厳しい顔付きになった。
「こちらが気付いたことは、まだ悟られていないと思います。今後の対応はおとう…、団長達大人にお任せすべきと考え、至急ご報告に参りました。」
わたしが言うと、お父様がほんの少しだけ顔顰めた。
「…父で良い。お前はここの騎士団員ではないのだから、団長と呼ぶ必要はない。」
先程忠告してくれたお兄様が微妙に呆れた顔をしているのが見えた。
「状況はわかった。あとはこちらに任せなさい。…で、その二人がお前の騎士団の団員か?」
お父様とお兄様は、わたしの後ろにいるウィル様とヨハンに目を向けた。
「はい。ご紹介が遅れましたが、黒銀騎士団団員のウィルフリード・ノーフォーク様とヨハン・デイカーです。」
わたしが紹介すると、ウィル様とヨハンが順番にお父様、お兄様と挨拶を交わした。
ウィル様とヨハンは少し緊張している様子で、お父様とお兄様は二人を見る目がやたら厳しい。
「聞いた話だが、ウィルフリード殿はメアのことを実の妹のように可愛がっているとか。」
夏だというのに凍てつきそうな声色でお兄様が言った。
それを聞いたお父様の目もさらに鋭さを増した。
「ええ…、その、親しくさせていただいております…。」
お兄様とお父様の気迫に押されてウィル様はたじろいでいる。
「ウィル様はわたしが初等部の頃からとてもよくしてくださっていますし、ヨハンはわたしのたった一人のお友達です。ウィル様は元から素晴らしい腕前でしたが、ヨハンもものすごく剣術が上達したのですよ。」
わたしは団員をここぞとばかりに自慢した。
「…ほう。なら私とも一度手合わせ願いたいものだ。」
「ああ、それが良い。なんなら今から準備させよう。」
まずい。
わたしが調子に乗って生意気なことを言ったから、お兄様とお父様が殺気立っている。
本当に手合わせなんてしたら、半殺しにしそうな勢いだ。
「いえ!これ以上お仕事の邪魔をする訳にはいきませんから、今日のところはこれで失礼いたします!」
そしてもう二度とこの二人は連れて来ない。
わたし達は逃げるようにして王立騎士団本部を後にした。




