19 結成
やっぱり、騎士科の子も魔法科の子も、武術と魔法の片方だけしか学ばないなんてもったいない。
中等部に上がり魔法科に転科してから、特にそう思うようになった。
生まれながら武術と魔法の両方に才能を持つ子は少ないかもしれないが、教育次第でいくらでも伸ばせるだろう。
物理戦力と魔法戦力を頑なに区別しようとする考え方はシュヴァリツィアに根強く浸透している。
王立騎士団と王立魔導師団はお互いの能力を尊重せず、関係は悪化する一方だ。
お父様やお兄様を越える最強の騎士になりたいけど、魔法で身体強化して戦うのが前提のわたしは王立騎士団では疎まれるだろう。
腹を括るしかないな。
放課後、話したいことがあると伝えて、人気のない広場にヨハンを連れてきた。
「実は、わたしの魔力もヨハンと同じ、全属性だったんだ。」
「えっ、全属性!?まじかよ。俺以外で全属性のやつ初めて会った…。」
「それでね、ヨハンにお願いがあるのだけど…。」
わたしは以前から考えていたことをヨハンに話し始めた。
「わたし、武術も魔法も得意な私立魔導騎士団を作ろうと思っているんだ。どちらか一方だけよりも、両方兼ね備えた方が明らかに効率が良いと思わない?」
「え、ちょっと待て。メアは女の子なんだから騎士にはなれないだろ?だから諦めて転科してきたんじゃないのかよ。親だって反対するだろ。」
「ウィンチェスターの子はみんな騎士になるんだ。反対なんかしないよ。…それにしてもヨハン、わたしが女だってよく気が付いたね。みんな必ず男の子と間違えるのに。」
なぜみんなは、わたしことを男の子だと思うのだろうか。
やはり胸か。胸なのか。
中等部にもなって、依然まな板のような胸のせいなのか。
「…そりゃ隣の席だし気付くさ。騎士の格好なんかしてるから男に間違われるんだよ。みんなと同じように魔法科の服を着ればいいだろ。あ、でもメアが女の子だって分かったらアイツら…。」
「服装は変えられないよ。たとえ魔法科にいても、わたしは騎士だからね。そんなことよりさ、お願いっていうのは、わたしの作る魔導騎士団にヨハンも入ってもらいたいってことなんだ。ヨハンなら王立魔導師団に入っても素晴らしい活躍をするだろうけど…、どうかわたしに力を貸してはくれないだろうか?」
「いや、俺は…、運動苦手だし…。魔法の練習しかしてこなかったから、悪いけど剣術なんて無理だ。」
「大丈夫。魔力が強ければ、身体能力はなんとかなるってことはすでに実証済みなんだ。わたしがちゃんと教えるから、一緒に頑張ろう?ね?」
「え、メアと一緒に…?い、いや、でも…うーん。」
きっともう一押しだ。
「ヨハンじゃないとだめなんだ、頼むよ。」
「…え、う、わ、わかった。やれるだけやってみるよ。メアの頼みだ、仕方ない。」
ヨハンはわたしの押しに負けたようで頷いてくれた。
「ほんとう?よかった。ありがとうヨハン。」
ヨハンが引き受けてくれてよかった。
とびきりの笑顔でお礼を言う。
わたしの魔力量はとても多いらしいし、魔力での身体強化を伝授するにしても、魔力量に余裕がない人には難しいかもしれない。
その点ヨハンなら、問題ないだろうし、なんせ天才魔導師だから魔法に関しては即戦力だ。
魔導騎士団の結成メンバーとして、ヨハン以上の適任はいない。
「…友達の頼みだし。だいぶ不安だけど。」
…友達!
そうだ、ヨハンは友達だ!
念願の!
友達!
すごく嬉しい。
わたしにもやっと友達ができたのだ。
「ありがとう。ヨハンはわたしの初めての友達だ。一生大切にするよ。わたしがヨハンを幸せにする。鍛錬はかなり辛いと思うけど、一緒に頑張ろう。」
「えっ、い、一生…?それって、その…。」
その後しばらく、ヨハンはなんだかぼんやりしてあまりちゃんと話を聞いてくれなかった。




