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15 魔法科

わたしは家に帰ってすぐ、今までこっそり魔法の練習を続けていたこと、ユリシス先生によって強制的に魔法科に転科させられたことを両親とお兄様に報告した。


結論だけ言えば叱られることはなかった。

お父様は、そうか。と言ったきり黙ったままだったし、お兄様は、好きにすればいい。と言ったきり黙ったままだった。


お父様もお兄様も呆れているに違いない。

あまりにもわたしが情けないからきっと見放されたのだ。

だから叱られすらしなかったのだ。


お母様はいつも通りの笑顔で、転科に伴って必要なものはあるのかとか、帰る時間は変わらないのかとか、必要なことだけわたしに尋ねた。


成り行きとはいえ、転科してしまったからには成果を残して認めてもらうしかない。

武術の鍛錬も怠るわけにはいかない。

こんなことでへこたれてはいられない。

わたしはウィンチェスター侯爵令嬢。

このシュヴァリツィア王国を守る最強の騎士になる女なのだから。


中等部に上がる日、わたしは魔法科の校舎に向かった。

そして、何故かこんなところに来ていたゼノビアに呼び止められた。


「騎士科を辞めたそうだな、メア!魔法科に行ってもウィンチェスターの名に恥じぬ活躍を期待しているぞ!」


どんな面倒なことを言われるかと身構えたが、意外と普通に激励されて拍子抜けだ。


「だが、これからもひと月に一度の手合わせは続けてもらうぞ!」

「それを言うためだけにわざわざ魔法科の校舎まで来たのか…。」

「重要なことだろう!転科くらいで約束を反故にされては困る!」


元々、わたしにとっては面倒なだけの約束だったし、転科を機に有耶無耶にしようと考えていたのに。


ゼノビアと別れて、ユリシス先生のところに向かう。

「ユリシス先生、おはようございます。今日からよろしくお願いいたします。」


ユリシス先生は無表情でこちらに目を向けた。

「おはよう、メア・ウィンチェスター。まだ魔法科に転科させたことを不満に思っているかと考えていたが、思ったより素直だな。」

「すでに転科してしまったものは仕方がありませんから、魔法科で頑張ろうと思います。」


「そうか、良い心がけだ。」

転科の元凶のくせにしれっとしている。


ユリシス先生に続いて教室に入り、クラスメイトに紹介される。


魔法科のクラスの子たちは、ローブのような濃紺の制服を着ていた。

中等部にもなると、みんな着慣れてきてなかなか様になっている。


女の子がいる…!


教室に女の子がいることに感動した。

今度こそお友達をつくれるだろうか。

男の子も騎士科の脳筋達よりは仲良くなれそうだ。


だが、女の子達はみんな赤い顔で目を潤ませてこちらを見ている。

集団感染症で熱でもあるのだろうか。

女の子だけがかかる病気ならわたしも危ない。

気を付けなければ。


「メア・ウィンチェスター、ヨハン・デイカーの隣に席を用意してあるので座りなさい。」


わたしは示された席に座った。

隣の席のヨハン・デイカーという男の子は、癖のある黒髪に、傲慢そうな深緑の瞳を持ち、丸々と太っていた。


デイカー男爵家の子か。

確かデイカー男爵領は王国の東端だったはず。


彼はなんだかとても機嫌が悪そうだ。


「よろしく。」

一応ひと言声をかける。


するとこちらを向いた彼が、さっきの女の子達と同じように赤い顔になった。

あれ?女の子限定の感染症じゃなったのか。


「よ、よろしく。俺のことはヨハンでいいよ。」

「わかった、ヨハン。わたしもメアと呼んでくれて構わないよ。」

ヨハンは耳まで真っ赤になっている。


やはり風邪か何か流行っているようだし、わたしも体調管理には気を付けないと。

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