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幕あい Part A 俺は真実が知りたい

【478.5】


「この世界はどのようにして生まれ、今に至ると思う?」


 野太い声の大男が問いかけた。


 このみすぼらしい古家には、男の他にもう1人住人が居た。

 齢にして10に満たない程の少女だ。

 少女が答えた。


「広場で巫女様が言ってたわ。

 火神アイリス様が何もない地上に全てをお創りになったって」


「なるほど。火神教の創世記か」




 創世記とは、火神教に伝わる世界創造の伝説だ。


 創世記曰く、原初の世界には「動き」が無かった。

 地上を覆う岩山と砂漠、凪ぎの海。

 生命は生まれず、変化の兆しもない。




 そんな静寂の世界を、神は嫌った。


 世界を撹拌するため、神は世界全体を震わし轟かす大揺れを起こした。


 すると、海は荒れ、山は割れて溶岩を吹き、熱が気流を生んだ。

 「動き」は物質の分布に疎と密をもたらし、やがて生命を育み、遂には「人」が生まれた。

 しかし、鋭い爪を持たず、硬い鱗を持たず、人は最も弱かった。


 弱き人を哀れんだ神は、1人の若者に火を与えるとともに、役割を課した。


「弱き人よ、火の力をもって世界を拓き、動かし続けよ。

 世界に停滞が訪れし時、我は再び始まりの業火とともに世を震わすだろう。

 それは世界にとっての夜明けであり、お前達にとっての終焉である」




 火を手にした若者は、神を火神アイリスと呼んで畏れ敬い、やがて自分の国「エルゼ王国」を作り上げた――。




「でも、不思議ね。

 何で地面が揺れるだけで人が生まれるの?」


「そうだな。それは俺にも分からない。

 1つ言えるのは、創世記の伝説が本当かどうか、誰にも分からないってことだ。

 この国の外には、火神教の信者でない者も沢山いる。

 彼らは別の「世界の始まり」を信じているのかも知れん。

 俺は真実が知りたい」


「私も知りたい!

 大きくなったら世界中を旅して、私が世界の秘密を解き明かすの!」






【487.10】


 ここは、暗い地の底。


 かつて男と世界の成り立ちを語り合った少女は、今は若い女性と表現する方が似つかわしい程に成長した。

 面影を残すその横顔に、当時の無邪気な笑みは無い。

 女は暗がりの中、何かに向けて静かに問いかける。


「どうか教えてください。

 この世界は一体何なのか。

 何のために存在するのか。

 そして何故、こんなにも残酷なのか……」


 彼女の見つめる先には――。


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