間章 悪の権化
pm 14:30 ???
これは、蒼一も、誰も知る由のないとあるお話・・・
「どうやら間神 蒼一が東京に来たらしい。」
分厚い冬用のコートを着た男の一言から話は始まる。
「間神?あぁ、あの小僧か。小生は一度だけ戦場で見たことがあるが・・・、小生らの脅威にはなり得ないように見えたが?」
藁の笠に錫杖、僧侶のような男が座禅を組みながら応えた。
「貴殿は"千機斬り"の話を知らんのか?これだから旧型は困るのだ・・・。おいっ!第一機甲!七天機甲はいつ全員集まる?儂は早くこんなとこ出て、血湧き肉躍る戦いを楽しみたいんじゃが?」
見た目は幼女、だが体中に銃火器を身にまとい、言動からも幼さは微塵も感じない。そんな幼女の問いは暗闇の向こうで椅子に腰掛ける第一機甲に向けられていた。
「第三機甲、少し黙ってくれないか?私は今、視ているんだ。」
第一機甲からの異様な圧を感じ取り、幼女は押し黙る。彼の圧でその場はピリピリし始めたが、突然、彼は立ち上がり笑い出した。
「ふっふっ、ハッハッハッハッ!視えた!視えたぞ!私が、私達が勝つ未来が!神は私達が頂点であることを選んだ!ふっふっ、・・・・・・いや、すまない。少し取り乱してしまった。」
彼は暗闇から姿を現す。黒スーツを着た長身痩躯の男、骸骨の仮面からは紅い目を覗かせている。見た目の異様さもさることながら、彼からでるオーラも異様だった。悪が吹き出しているとでも言うのだろうか、邪悪が形を成している、それが彼だった。
さすがの第三機甲も少し後ずさる。場の緊張感は更に増した。
「そ、それで、いつ全員揃うんじゃ?儂は早く戦いたいのじゃが・・・、」
「分かっているよ。あと1時間18分後、全員集まるだろう。今視えたからね。」
第一機甲は三人が座る円卓の上座に腰掛け、足を組むと同時に円卓中央部に東京の地図を展開させる。
「明日、午後5時に東京支部へ総攻撃を仕掛ける。みんな、準備しておいてくれ。」
彼の言葉に三人は歓喜の声を上げる。
「遂に・・・遂に始まるんじゃな!人間共を地獄のそこに落とす日が!・・・くぅ~!血湧き肉躍るわ!」
「ハッハッハッ!ようやく人を斬れるのだな?小生はその間神とか言う奴と手合わせしてみたいものだ!」
「いや、間神は俺が殺る。若い芽は早めに潰さねば・・・。いいだろう?第一機甲?」
「あぁ、最初は第五機甲、君が行ってくれ。ほかの者は待機だ。」
「ちょっと待つのじゃ!何を言っておるか!」
第三機甲は勢いよく立ち上がり、第一機甲に怒鳴りつける。
「何故一人で行かせるんじゃ?全員で潰した方が確実じゃろ?理由を聞かせろ」
「私は視た。全員で行くとその後の計画が狂う。段取り通りにいかなくなってしまうんだ。だから第五機甲一人で行く未来も視てみた。そしたら結果は大成功。見事東京支部は壊滅した。私達が動くのは彼が東京支部を壊滅させた後だ。分かったね?」
「その予知は正しいんだな?」
コートの男が立ち上がりながら問う。第一機甲は自信に満ちた声色で応える。
「私の予知は"絶対"だ。心配ない。」
「分かった。では行こう。」
男は納得がいっていない第三機甲に目もくれず、部屋から出ていった。
「あ~あ、行ってしまったか。また七人全員は揃わんのか・・・。小生の記憶が正しければ全員揃ったのは一回だけだったな・・・」
「そんなことはどうでもいい!儂ははやく戦いたいんじゃぁぁぁぁぁ!」
とある廃ビルの一室に第三機甲の声が響く。
「大丈夫。神は我々を選んだ。私達の前に障害となるものは存在しない、いや、存在させない。この私がな。」
今まさに邪悪が動き出そうとしていた。