10月31日!
「レイスっ」
パンパンと手を叩きながら赤髪長髪の女性が呼びかける
するとふわりと至る所から半透明なデフォルメちっくな幽霊たちが現れる
「あー」「はいー」「んぁー」
「うん、いつもどーりね、今日は、ハロウィンです!」
「はろうぃー?」「はろー」「ういん」
「脅かしていい日です!」
「おー」「おー?」「おぁー」
「えぇ…」
お化けとしての義理はレイスたちにはないようだ
せっかくの機会だからとレイスたちを呼んだセーラ…街の中をレイスたちが飛び回るのにはもう少しかかりそうだ
◇
雷の街、黄色のツインテールを揺らしながら一人の少女が駆けていた
「こちら、この後ハロウィンパーティー用のお菓子セットです、驚かしに来た子供たちに少しずつあげてくださいねっ!」
飴玉やらが詰まったオレンジの箱を各家に渡してはまわっている
とある理由で甘味は雷の街でもだいぶ広まってはいるが、パーティーできるほどでは無い
しかしミスラは雷の街を盛り上げる、とハロウィンパーティーに随分とやる気なようだ
そのやる気に触発された人物も数人
青髪を揺らして手書きのレシピと睨めっこしているセレナもその一人だ
「む、難しい…文字だけじゃいざ作る時に困るわね…」
「とりあえず混ぜてください、大体は把握してるので、私が止めますよ」
「ティア、たすかるわ…」
「ティアさーん、この魔道具壊れてるんですけどー!」
「それはコウさんに言ってください」
「コウー!?」
「いや、マオっ!?魔石砕けるまで連続して使うなって言ったじゃん!」
「じゃあ直せー!」
ずりずりとエルフ耳の少年が引きづられていたり…
◇
「はいはーい、仮装する子供たちはこっちに来てくださーい」
街の子供たちに囲まれている子供…
しつれい、セーラの半身、黒髪の少女のバンシーが仮装のセットを次々と並びにきた子供たちに着せていく
「みゃー!耳は弱いから触らないでって言ってるって!」
「みんなの分ありますから並んでくださいましっ」
「ぁ…はぃ…」
狼耳の女の子にお姫様のような服を着た女の子、つばの広い魔女の帽子をかぶった女の子がバンシーの手伝いをしているようだ
四人の手で街の子供たちが次々と仮装姿になっていく
耳と鼻をつけた狼、布を被ったお化け、帽子をかぶった魔女っ子、氷のアクセサリをつけた雪女、ツギハギシールでフランケン、包帯グルグルのミイラ、羽をつけたコウモリや妖精などなど
その仮装は様々だ
◇
街の大人たちは領主の家に集まっていた
「では皆様お好きなドレスと仮面を手に取ってください」
明るい茶髪を後ろで括り、水色のドレスを身にまとったソエルが先導し、大人たちもパーティーに相応しい姿に変わっていく
◇
「ほら、こっちがおもちゃの斧、これがランタンが先に着いたやつだ、あっオレンジの箱は一人一個ずつ持ってけよ!」
冒険者たちが集まる所に一人来訪しているフェル、普段通りな街の冒険者達に少しでも「らしさ」を付け加えていく
雷の街はハロウィン一色となっていた
日も沈みかけて、いよいよと言ったところか
◇
普段は暗い通りも今日だけは不気味に笑う模様のランタンに火が灯っていた
今日は街全体が明るい
「…気合い入ってんな」
中央広場に実行委員と称された人物たちが集まる
「ふふん!あっちの記録を見てたらやるべきと思ったのよ」
ミスラの黄色のツインテールにでこぼこな衣装が目立っていた
膨らんだズボンはまるでカボチャのようだ
「はい、これ今日の為に作った世界魔法の魔道具です」
顔色悪そうにミスラに渡すコウ
「ほら、ゾンビの仮装の続きに戻るよ」
マオに引っ張られていく、随分と振り回されているようだ
「じゃあいいですかー!」
ミスラが元気に声を出す
中央広場に集まった仮装した大人子供たちも返事をする
「ハッピーハロウィーン!」
「「「ハッピーハロウィーン!」」」
ミスラを中心に魔法が展開され、広がっていく
街はおどろおどろしいのに、どこか楽しそうな、そんな雰囲気に変わっていく
「すごいっ!」
目をキラキラさせてミスラは今にも飛び出しそうだ
「じゃあ行くか」
子供たちは各々走り出しランタンのある家に向かう、大人たちは中央広場に流れる陽気な音楽に合わせて踊ったり、食事を楽しんでいる
実行委員たちは固まって歩き出す
光る魔道具を渡しながら、大きな団体となり、街を行進していく
「ほら、レイスたち、さっきの教えたとおりに、行ってらっしゃい」
「わぁー」「とりっくおあー」「とりっくー!」
「ハーピーも今日は大丈夫だから、好きにするといいよ、ほらこの箱持ってって」
「じゃ、じゃあちょっと行ってきます!」
「セーラ」
「ん?なに?バンシー」
「とりっくオアとりーと」
「…んぁー、トリックで」
「ふふっ後でイタズラしてあげる」
「この光る腕輪の何がいいんだか…」
「コウ…ゾンビ似合ってるわね、顔色といい…」
「マオ…それだと似合いたくなかったかな…はい、どうぞ…」
「ありがとー!ゾンビのにいちゃん!」
「はいよー」
「は、はずかしいのですわ…妖精要素が羽しかないうえに薄着すぎるのだわ…」
「メーシアー…トリックオアトリート!」
「はいどうぞ、メリッサさん、狼耳はいつも通りですわね…普段通りで羨ましいですわ…」
「…え、この飴どっから出したの?あ、ちなみに言わせてもらえばいつものドレスの方がえげつない時あるからね」
「それはもちろん…え?今なんて言いました!?」
「ドーロシー!まじょかわー、トリック?トリック?」
「ぅ…はぃ…おかひ…」
「ちぇートリートかー」
「メリッサさん!?メリッサさん!?」
「はいどうぞー、あっこら包帯引っ張っちゃダメだって…」
「セレナさん攻めましたね…」
「なによ、ティア…猫耳可愛いわよ?」
「…ありがとうございます、ミイラ女は街の少年たちには影響強すぎると思いまして」
「ミスラに包帯の束だけ渡されたのよ」
「相変わらずミスラさんに甘すぎ…え、中に何も着てないんですか?」
「…ん?もちろんよ?」
「はぁ…セレナさんって頭いいのに馬鹿ですよね…」
「えっ、ティアに褒められて悪い気はしないけどなんで馬鹿にされたの?」
「…あ、ほら、少年が走ってきましたよトリトラトリトラ…」
「ねぇ、フェル、ミスラはこれがしたかったの?」
「…そうなんじゃない?なんだったかな、従来のお菓子を配るお祭りと仮装祭り、舞踏会…とか言ったかな?そんなやつと、立食パーティー、あとパレード、混ぜに混ぜてやりたいこと全部やる、ミスラらしいよ、俺としてはソエルを氷の女王とやらに出来て大満足だ」
「ふふ、フェルも頭の斧が似合ってますよ」
「…なんで俺生きてるんだろうね」
「私の愛ゆえにですよ」
「愛かー…ちょっとどころじゃないくらいには痛いんだよなー」
「あら…やめちゃいます?」
「いや、やるけど、手離したら死ぬからね?これ」
「ふふっ、少しなら大丈夫ですよ、ミスラにも話しかけてあげてください、長く離れると死んじゃいますからね?」
「重いなー今日は一段と愛が重いなー…」
「おー、炎帝、フランケンか、似合ってんなー」
「せっかくの竜化だからな、ロックはスケルトンか…その服凄いな…」
「全身タイツ?って言うやつらしい、あっちの世界のも取り入れまくってミスラはすげーなー」
「あぁ、やる気が違う、いい顔だ」
キラキラとした目で行進の先頭を歩くミスラに問う
「これがハロウィンパーティー?」
「ふっ、思ったのと違った?私は思った以上になった、さいこーだね!」
にかっと笑うミスラ
とてもとても、いい笑顔だ
ハッピーハロウィンっ